尾高忠明指揮 札幌交響楽団 演奏会
札響が今年も東京にやってきた。毎年、冬の便りとともに、11月の定期プログラムを持って来る。
今回は、サントリーホールじゃないのが残念だけど、尾高忠明さんらしい、実に考え抜かれた渋いプログラム。晩秋に心静やかに聴くにはうってつけの内容だ。
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
武満 徹 ファンタズマ/カントス
ドビュッシー クラリネットと管弦楽のためのラプソディ
Cl:ポール・メイエ
武満 徹 遠い呼び声の彼方へ!
Vn:堀米ゆず子
ドビュッシー 交響詩 「海」
尾高忠明 指揮 札幌交響楽団
(11.13 東京芸術劇場)
前日からの悪天候の北陸出張からの帰りだけに、眠くなりはしないかと心配だったが、静謐な音の世界に身を委ね、陶然とするうちにすべてが終わってしまった感がある。
いきなり、牧神で夢心地の心境に。
音楽会の1曲目というのは、なかなか乗り切れないものだが、そのムードと音楽の持つまどろみ的な緩やかさがまさにマッチしてしまった。札響のクールな響きがアクセントに感じられた。
ついで、P・ペイエの登場による武満のファンタズマ/カントスは20分の大曲。
解説によると、ファンタズマは幻想、カントスは歌。作者はこのふたつを同義語として扱い、日本の回遊式庭園から示唆を得たと残しているという。
なるほどに、始まりと終わりが接合したような循環するような静的な音楽で、クラリネットソロがときにむせぶように、ときに楚々と歌うように大活躍する。
大編成のオーケストラながら、時間が止まったかのように静かな世界を築いている。
この曲のあとに、ドビュッシーを聴くと、武満音楽との同質性とともに、フランス的なエスプリの世界を強く感じさせる。ペイエのクラリネットは、この曲でも冴えに冴え、大きな会場の隅々にその美音を響かせてくれた。
アンコールに演奏された、「センド・イン・ザ・クラウン」はまさにセンス溢れる瀟洒な音楽だった。
休憩後の「遠い呼び声の彼方へ」は、堀米ゆず子のお得意の曲。
さきのクラリネットの曲よりは、はるかに聴きやすい。これを聴いて、マーラー、ウェーベルン、ベルク、そしてドビュッシーの響きを感じ取ることが出来る。
私的には、もっとも安心の領域。堀米さんは、貫禄も付き、相変わらず才気がほとばしるかのような素晴らしい音楽性。
最後には、武満の川から海への音楽から、ドビュッシーの海へ。
尾高さんは、豊かなニュアンスをつけながら繊細で美しい海を聴かせてくれる。
札響の自主性溢れるサウンドが思い切り鳴り響き、壮麗なエンディングで、この素適なコンサートの幕を閉じた。
ドビュッシーと武満徹で組まれた、ひとつの作品を聴くかのようなまとまりあるプログラムだった。
来シーズンの定期プログラムが配られた。
私に、定期会員になれと言わんばかりの超魅力あるラインナップ。
マーラー4番(5月尾高)、ブリテン「ピーターグライムズ」演奏会形式(9月尾高)、RVWタリス・楽園への道・エルガー3番(11月尾高)、オランダ人・サンサーンス3番(1月飯守)、ブル4(2月尾高)、ブラームスV協・田園(3月シュナイト)
どうですか!!
コンサートホール「キタラ」のある中島公園。
この公園をそぞろ歩いて美しいホールに到達する素晴らしいアプローチ。
でも冬は雪に覆われちゃう。
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コメント
yokochanさん、私の方からもおじゃまさせていただきます。
札響は岩城さんが大切に育ててきたものを尾高さんがきちんと受け継いで、札響サウンドに更に磨きをかけているように感じました。東京公演、もっとちょくちょくやってもらいたいですねー
投稿: pockn | 2007年11月15日 (木) 13時15分
pocknさん、札響は岩城さんでしたね。そして武満演奏は岩城さん仕込みですね。
年1回では確かに寂しいです。旅費が捻出できれば定期会員になりたいくらいですよ。
投稿: yokochan | 2007年11月15日 (木) 21時52分