ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団演奏会①
マリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団の来日公演を聴く。
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番
Vn:サラ・チャン
マーラー 交響曲第5番
(11.17 ミューザ川崎)
ここ数年、この時期になるとヤンソンスは、バイエルンとコンセルトヘボウという、ふたつの名器を交互に引き連れてやってくる。
この多忙な指揮者を毎年日本に数週間拘束するのだから、日本の音楽マーケットはやはりスゴイ!
今、東京には、ルイージとドレスデン、ゲルギエフとキーロフもいる。
世界のどこにこんな都市があるだろうか!
毎年秋には、こんなことが起こる。ウィーンやベルリンが来ない分、まだましなくらいなのだ。
そんな御利益を全部味わいつくそうとすると、大散財にみまわれる。
ヤンソンスはお気に入りだし、毎年聴いているから外せないので、他の諸国はあきらめて、ドイツだけに絞り、ベルリン、ドレスデン、バイエルンを楽しむことにした次第。本blogをご覧になっておられる皆さんは、よくあんなにコンサートに行って、余程のお金持ちなのね!な~んて思っておられるかもしれないが、行きたいコンサートやオペラは、かなり早くから絞りこんで、発売時に即手当てするから、計算が成り立つ。
行かないときはいかないし、衝動的に行く場合は安値席じゃないと行かないようにしている。こんな次第。
さて、満席のホールに赤のドレスで登場のサラ・チャン。黒髪に黒い瞳は、隣国人として非常に親近感がわき、その快活で明るいステージマナーも好ましい。
彼女のヴァイオリンも、まさにその見た目の通りで、躍動的で積極性に満ちていた。
しっとりした情感の代わりにすがすがしい明るさと情熱を感じた次第。
ヤンソンスを信頼し、自信に満ちた彼女、終演後、サイン会をやっていたので、近くで、とくと拝見。にこやかで、美しいお姿に、オジサンはちょいとふらっとしました。
次週もよろしく、サラちゃん。
メインのマーラー。
この5番の交響曲はこれまで何回聴いてきただろう。
私がクラシック音楽を聴き始めた頃は、マーラーなんて実演じゃまずやらない。
レコードも、ワルター、クレンペラー、バーンスタイン、ショルテイぐらいで、不人気音楽の代表だったのに。
実演では、マゼール、アバド、ベルティーニ、ショルティ、小沢などなど、最近では尾高/札響が良かった。いずれもライブならではの興奮を味わってきた。
今宵のヤンソンスは、すべてが綿密な練習を経て完璧このうえない演奏だった。
そのうえで、ヤンソンスならではの感興と覇気に満ちたイキイキとした躍動感がみなぎっていたマーラーであった。
何度も記すが、ヤンソンスのいいところは、楽員も聴衆のいっしょくたに盛上げて音楽に夢中にさせてしまうところで、このマーラーの起伏に富んだ音楽などは、まさにそうした気質がバッチリと当てはまるものだ。
テンポは揺れ動きが多少あるが、細部に至るまで目が行き届き、これ以上ないくらいに磨き抜かれ、洗練された響きがミューザのホールに鳴り渡る。
こんなに気が入ってあとあと大丈夫なのかな?と思わせるくらいの1・2楽章。
各楽器が呆れるくらいの名人芸を披露しつつ、気持ちのいい3楽章。
心持ち早めに進められたアダ-ジェットは、ストレートな表現ながら、実に美しく、弦とハープが織りなす透明感に涙が浮かんだ。
そして曲は最後のロンドに突入し、考え抜かれた完璧なフィナーレ~でも、聴いているとすべてが必然で、かつ新鮮なのだが~を迎える。
最後のコーダは、テンポを落とし、じっくりとした終結を迎えるかと思ったら、猛然とダッシュして唖然とするくらいすさまじいクライマックスを築いて終結となった。
もの凄いブラボーが起き、会場は騒然となった。
こんなマーラーのあとにアンコールなぞなし。
やまない拍手に、マリスは一人登場し、歓声に応える。
しかし、バイエルンはなんとすごいオーケストラなんだろうか。
ドレスデンと同時期に聴いてみて、その違いも歴然で、その機能性とアンサンブルの鉄壁さは、完全にバイエルンの方が上だ。その上、南ドイツ特有の暖かな音色があるものだから、味わい深さにおいてアメリカやイギリスの同じように優れたオケとはかなり異なる。
ドレスデンは、音色において比べるものがないくらい上質だが、その機能においてはバイエルンに数歩遅れる。
どちらも、ドイツの名オーケストラに間違いないが、現時点で、完成度にこだわればバイエルンで、ドレスデンは劇場空間から生まれた味わいの点で上位に立つと思う。
コンサートは、お隣や周辺のお客さんによって、恵まれ具合が異なってくる。
本日のお隣さん、終始身を乗り出し、首は振るし、指揮っぽい動きはするし、お隣の女性(奥様)にキュー出ししたり、手話っぽい会話をしたりで、落ち着かないことこのうえなし。
さらに、きょうのミューザでは、3楽章が華々しく終わったら、ブラボーするヤロウがいた。
これには、場内大いにシラケたし、演奏者もあれれ?って顔してた。
おまけに、その方ではなかろうが、3階席の方が一人、足音も賑やかに、3楽章終了後、バタバタガタガタと出口に向かうありさま。あの異様な雰囲気は、ちょっと言葉にできないが、コンサートのリスクはこんなところにもある。同じお金を払いながら、環境が選べないのである。
ミューザのお隣、ラゾーナ川崎のイルミネーション。
今年は、グリーンを基調にしていて、美しい。
この次はサントリーホールに場所を移しての公演。
次週も忙しいな。
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コメント
お疲れ様でした。明けて18日はお先にナタリーで失礼します。
折角のヤンソンス、新潟の地(インバル&FRSO、飯森&東響と最近2回新潟で演奏されています)でも起きなかった第3楽章でのブラボーはいなかったぜ!
興ざめだわなぁ・・・。あのホールに集まる聴衆は何か変だわ。フランチャイズの東響の定期演奏会でもしら~としているし。お悔やみ申し上げます・・・。
投稿: IANIS | 2007年11月18日 (日) 01時29分
いいなあ!バイエルン行かれたんですね。
自分もチェックしたのですが、時既に遅しでした。
バイエルンはキリルコンドラシンとの演奏などが好きでした。
もう亡くなってしまいましたが、この人も来日してN響とか振ってたんですよね。おそるべしジャパンマネーです。
「食いしん坊」の方も拝見しました。
いやー、こちらもスゴいですね!。
松阪をいろいろ開拓してくださってるようで嬉しいです。不二屋が出てきた時はひっくり返りそうになりました(笑)
こんどいらっしゃるときは是非高級店のすき焼きも堪能してみてください。
投稿: dota | 2007年11月18日 (日) 05時53分
関西に来てからというもの、コンサートでのマナーが気になることが多いのですが、そちらでもそうですか。日本人の公共心は年々悪化しているように思うのですが・・・。
22日は猥談メンバーでヤンソンス攻撃、こちらはブラ壱です。
投稿: リベラ33 | 2007年11月18日 (日) 06時07分
IANISさん、今頃は東京への車中でしょうか?
秋晴れに一日に、ナタリーは最高でしょうな!
昨晩の拍手のショックは、実はさほどではありません。
以外と上手に決まったブラボーだったもんで・・・・。
ライブにはこうした危険がつきものであります。
最大のショックは、やはり、リンデンのトリスタンですね(怒)
投稿: yokochan | 2007年11月18日 (日) 11時40分
dotaさま、こんにちは。
バイエルンはホント、高性能でありながら暖かな音色のオケです。コンドラシンが長生きしてれば、このオケといいコンビになっていたでしょうね。廃盤のフランクなんて名盤でした。
N響とのライブはエアチェックしてありました。チャイコ1番、ブラ4など以外やスマートな名演でした。
弊食いしん坊版もご覧いただき恐縮です。
カテゴリー整理中ですので、へんな処にまぎれてますが、食いしん坊にとって、松阪は大好きな街であります。
投稿: yokochan | 2007年11月18日 (日) 11時46分
リベラさん、毎度こんにちは。
演目や曜日によってですが、やはり平日のサントリーや、定期公演であれば、聴衆はこなれてます。
同じ神奈川でも、みなとみらいの聴衆のレヴェルは高いですね。
まあ、こんなこと書くと語弊が生じますのでこのへんで・・・。
大阪では、珍しくフェッシバルホールじゃないですか!
きっと盛り上がるでしょうね。
私は19日に、同じプロで聴いてきます。
投稿: yokochan | 2007年11月18日 (日) 11時51分
初めまして、"通りすがり"の者です。
神奈川フィル関係記事を中心に、以前から貴ブログを拝見させていただいておりましたが、この度始めて書き込ませていただきます。
昨晩のバイエルン放送響の演奏会、私も聴いてきました。演奏はさすがでした。
特に後半のマーラーは、すばらしかったです。
ところで、聴衆のマナー…。気になりますね…。
昨晩の場合、私も、マラ5の第3楽章終了後の「ブラボッ」と退出は如何なモノかと思った次第です(特に後者)。
しかし、昨日は珍しくミューザにしては、客層は良い方だったと存じます。残念なことですが、やはりマナーとチケットの値段は比例するものなのでしょうか?
最近、マナーは通ってくる聴衆の生活レベルと比例しているように感じます(まぁ金だけ持ってる成金は、ダメなんですが)。
高級住宅街にあるホールで演奏を聴くと、コンサートになじみの薄い方が多くても、マナーは良いことが多いです。オペラシティやみなとみらいも客層が良いですから。
ホールの客層を見るには、クロークの利用者の数とも比例すると思います。荷物を沢山持って席に着くのは、やはりまわりの方に迷惑を掛けることになりますし、音を発生させる確率も上げるわけですから、必要のない荷物はクロークに預けるべきだと思うのです。
以前から、私はミューザのアンケートに「演奏中の咳払いやビニール袋の音を控えるよう」にと「マナーをもっと啓蒙してゆくべき」と記していますが、今のところあまり効果がないようです。音楽を聴くのだけでなく、それを通じてマナー・文化の向上がおこなわれなければ、税金をはたいてホールを造った意味がないと思うのですが…。
初めての書込で、長いコメント大変失礼いたしました。
投稿: 通りすがり | 2007年11月18日 (日) 22時34分
「通りすがり」さま、コメントありがとうございます。
昨晩の素晴らしいコンサートで同じ空気を感じていらしたんですね。
<珍しくミューザにしては、客層は良い方だった>なるほど、以前から薄々感じていたことでした・・・。
ホールにいらっしゃる方々は、みなさん音楽が好きな方のはずです。そうした同朋ながら、マナーの良し悪しは別問題ですよね。場内放送の無粋さを鬱陶しく思うこともありますが、まだまだ的確な注意は必要であります。
そう、ご指摘のとおり、地方ホールが典型ですが、器は立派でも、聴衆の最低限のマナーが守られていないケースも多々あります。いいホールが、いいオケや演奏家を育てるように、いい聴衆も育てるものと思います。
どうもありがとうございました。
投稿: yokochan | 2007年11月19日 (月) 00時04分
拙いコメントにご回答頂き、ありがとうございます。
>昨晩の素晴らしいコンサートで同じ空気を感じていらしたんですね。
本当にすばらしいコンサートでした。個人的には、今年のベスト3にランキングされる名演だったと思います。
また、ヤンソンスは音楽だけでなく、人物もすばらしい指揮者ですね。コンサート終了後、出待ちの観客がかなりの数いたのですが、それを見たヤンソンスが急遽サイン会を実施していました。
お疲れでしょうに、予定にないサイン会を行ってくれるあたり、人間的にもすばらしい人だと感じた次第です(私が食事を終えて、上に上がった所でサイン会をしてました。)。
>いい聴衆も育てるもの
まさに、その通りだと思います。
私は、現在ミューザがホームグランドのようになってます。しかし、以前から聴衆のマナーがもう少し何とかならないものか、と思っていた次第です。ミューザも早くそのようなホールになってほしいと思います。
重ねてのコメント失礼いたしました。
投稿: 通りすがり | 2007年11月19日 (月) 21時03分
「通りすがり」さま、コメントありがとうございます。
ヤンソンスの疲れを知らぬサービス精神は、まさにプロであり、その人柄の表れでもありますね。
私も過去2度、サインを頂戴しました。
本日も、聴いてまいりました。
素晴らしいツァラとブラ1でした。
でもよりによって、サントリーでも嫌な出来事がありました・・・。よろしければ、その記事もご覧下さい。
投稿: yokochan | 2007年11月20日 (火) 01時12分