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2007年11月22日 (木)

ナタリー・デセイ オペラ・アリア・コンサート

Opera_city1_2  ナタリー・デセイのオペラ・リサイタルを聴く。
このところ、ドイツものばかりだし、久々の伊仏のラテン系なので、新鮮な思いで今日を迎えた。
会場は初台のオペラシティだから、歌ものが聴けるからといって間違って新国立劇場に行ってはいけませぬ。オペラシティのビルの吹き抜けには、赤が基調の大きなツリーが飾られていて、時折オペラの旋律とともに光りのパターンが変わる凝った仕掛けになっていて、イルミネーション好きの私の心をくすぐる。
しばし鑑賞ののち、ホールへ着くまでもなかなかの美しさ。
コンサートに向けてのワクワク感が高まる仕組みになっているじゃない。入口では、チケット求むのカードをかがげる人数人。


  ヴェルディ 「シチリア島の夕べの祈り」序曲
             同  シチリアーナ「友よありがとう」
         「ラ・トラヴィアータ」前奏曲
             同  「ああ、そは彼の人か~花から花へ」

  ロッシーニ 「セミラーミデ」序曲
  ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア」~「あたりは沈黙に閉ざされて」
     同    「ロベルト・デヴェリュー」序曲
     同    「ランメルモールのルチア」~狂乱の場

       アンコール
  マスネ    「マノン」~ガヴォット
  プッチーニ  「ラ・ボエーム」~ムゼッタのワルツ

       S:ナタリー・デセイ

   エヴェリーノ・ピド指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
       ヴェロフォン:サーシャ・レッケルト
                  (11.21@オペラシティ コンサートホール)


プログラムを見て序曲が疎ましくなる。早くナタリー出ておいでの気分で聴く「シチリアの晩鐘」。
つややかで迫力あるヴェルディになんだかんだで、夢中に。
ついでいよいよ登場のナタリーは、鮮やかな赤のドレスが眩しい。

「シチリア」のアリアで3拍子の弾むリズムに乗って歌うナタリーのグローリアスな声に完全にイチコロ。
Natalie 続く「トラヴィアータ」は前奏曲から一緒に出て来て腰掛けて、その前奏曲に耳を傾けている。

彼女の演劇人としてすごいところは、この前奏曲からして音楽に入りこんでしまっているところ。
ヴィオレッタは彼女の新境地を示す役柄だが、新しい恋心と娼婦としての自暴の気持ち。こんな揺れ動く感情にオヤジたるワタクシがこんなに心動かされ、一喜一憂していいのだろうか
ちょっと風邪ぎみなのだろうか、低域が少しかすれる場面があったが、歌のディティールは完璧の上を行く鉄壁さで、加えて唖然とするくらいのテクニック。
彼女の、さながら楽器のような歌声は、どこまでも人間的なぬくもりを感じさせて、メカニカルにならない。コンサートなのに、その目と手の動き、そして指先に至るまでが、音楽を感じ演じている。
まったくもってのプロのなせる技でありつつ、かつ嫌味のこれっぽちもない迫真性。

なんでロッシーニの序曲がここに紛れ込まなくてはならなかったのか?よくわからないが、なかなかの桂演に、よしとしよう。

ヴェルディ、ロッシーニときて、ドニゼッティとくると、音楽の劇性よりは、抒情性と歌謡性が勝っていることがよくわかる。狂乱の前のいわば、しらふのルチアは、恋に燃える純真な乙女だ。そんなルチアに与えられた超越技巧のアリアを、ナタリーは難なく歌う。
その技巧は聴く側に快感とともに、異常なまでの集中力をもたらす。
彼女の一挙手・一投足に目が釘付けとなり、会場はもはや酔ったような空気に満たされている。ああ、なんてスゴイんだろう。なんて素晴らしいんだろう。
後半は、赤のドレスから、ご一緒したromaniさんと予測した白が裏切られ、ペパーミントグリーンのドレスだった。美しいです。

God Save The Queenが、まんま引用された「ロベルト・デヴェリュー」序曲はなかなか迫力の曲。なるほど、ルチアとともに、英国が舞台の音楽で後半を飾るわけね。

そして、クライマックスの「狂乱の場」。
CDでグルベローヴァの狂乱の場ばかりを集めたCDを聴いて、そのもの凄さに驚嘆しつつ、ものすご過ぎて疲れてしまった覚えがあるが、もしナタリーだったら結構飽きずに聴けちゃうかも。彼女の声は表現の幅が極めて広く、繊細さなソットヴォーチェから強靭な高域のコロラトゥーラまでにいくつもの段階がある。
彼女の歌をおそらく知り尽くしたピドの見事な指揮もあって、極めてオペラテックなオケが寄り添うようにして伴奏するものだから、ナタリーの歌がどんなにピアニシモに心を砕いても会場の隅々にその声が響き渡っていたと思う。
その繊細さに、見事に調和していたのが、グラスハーモニカ(ヴェロフォン)で、その澄み切ってクリスタルな音色は、彼女の歌うルチアにピッタリだ。
狂乱するナタリーのルチアは、目が完全に役者のそれになっている。
宙を舞い、焦点が定まらない。でもその歌は舌を巻くくらいに、ピシリピシリと決まっていく。
ずっとそのまま歌っていて欲しいと、切に思うばかりだったが、彼女の最高に素晴らしい高音を残して、この大アリアは終わってしまった。

素晴らしく気持ちのこもった拍手に応えてアンコールを2曲歌ってくれた。
しかも、歌う場所を移して。マスネでは、耳にも嬉しいフランス語の美しさと、拍手したくなる聴衆に「まだヨ!」の合図を出しながらのユーモア溢れる仕草に、会場は沸いた。
そして、クリスマスのイルミネーションを見ながらやってきた我々に嬉しいムゼッタのワルツには、思わずニンマリしてしまった。
思えば、アンコールも含め、道を踏み外しかけた女性ばかりを歌い演じたんだ。
男心をくすぐるぜ。

歌も姿も最高にチャーミングなナタリー。
会場の四方に挨拶を送るサービス精神も満点。考え抜かれ、きっと鍛錬を積んだはずなのに、どこまでもナチュラルかつ完璧な歌を聴かせてくれたナタリーがさらに大好きになった。

願わくは、日本で実際の舞台に立って欲しい。
ルチアとヴィオレッタ、そしてシュトラウスで。

Opera_city2 最後に私ごとですが、本日は○○回目の誕生日。
このところのコンサート続きで、自分へのご褒美だらけで、家族に顔向けが出来ないが、こんな我がまま父さんを見守ってくれて、あんがと。
ご褒美には、ちゃんとお仕事して応えなくっちゃね。
そして、本日お世話にになりましたromaniさん、本当にありがとうございました。
最高の一杯でした!

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コメント

テレビ放送あるかしら?
こちらも行きたかったです・・けど、上野のほうにふらふらと行ってしまいました。

TB、その記事のほうにしますのでよろしくお願いします。

投稿: edc | 2007年11月22日 (木) 09時13分

誕生日おめでとうございます。

実は私ももうすぐ誕生日です。べつに何の期待もないですが、平均寿命からすると折り返し地点です。
あまりおめでたくない感じもしますが(笑)。

投稿: ピースうさぎ | 2007年11月22日 (木) 13時43分

euridiceさん、こんにちは。
当日はテレビ入ってなかったです。
3日間の最終日でしたが、ほかの日に入っていればよいですが。彼女の歌は、やはりビジュアルが伴なうと全然違います。
ふらふらと上野~いいですね。東京は毎晩どこかですごい演奏会がありますからね。
TBありがとうございました。ブーがすごかったようですね。

投稿: yokochan | 2007年11月22日 (木) 16時56分

ピースうさぎさん、ありがとうございます。
誕生日を意識しなくなっていく久しいです・・・・。
へたすりゃ忘れてしまってます(笑)
目下のところ、音楽を楽しみことだけが、生きがいみたいになりつつあります。

投稿: yokochan | 2007年11月22日 (木) 17時05分

yokochanさま こんばんは

○○回目のお誕生日、おめでとうございます。

ナタリー・デセイのコンサート、良かったみたいですね。
それに、数々のオペラ公演、本当に羨ましい限りです。
こちらはレポで楽しませてもらっています。

ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2007年11月22日 (木) 20時28分

ナタリーの魅力全開だったようですね。
ドレスが赤とペパーミントグリーン・・・。僕の時は白に薄い紫でした。何事も同じことが嫌いな彼女らしい。
・・・やっぱり感じましたね、役者としての彼女の存在。ナタリーは、オペラを歌える女優-しかも飛び切りの女優ですよ。この次に日本にきたら、ヴェルディ中心なのかなぁ。

遅まきながら、〇〇才おめでとうございます。

投稿: IANIS | 2007年11月22日 (木) 22時17分

まずは、お誕生日おめでとうございます。
デセイは行かなかったんですが、あちこちのブログで読みました。素晴らしかったみたいですね。私は(自分のブログにも書きましたが)最初のウィーン旅行でデセイが出るんじゃないかとシュターツ・オパーの「ホフマン物語」の日を予約してたんですが・・・残念出なかったでした。
日本で(まあ、見れるなら外国でもいいんだけど)彼女のツェルビネッタの舞台が是非見たいものですね。

投稿: naoping | 2007年11月22日 (木) 23時18分

rudolfさま、ありがとうございます。
ちょっと風邪ぎみで、万全のコンディションではなかったようですが、さすがナタリー。プロ中のプロです。
相次ぐコンサート通いで、お財布が疲弊してしまってます。
CDにまで手がまわりませんが、唯一、ナタリーの新盤を購入しました。素晴らしいですよ!

投稿: yokochan | 2007年11月23日 (金) 15時06分

IANISさん、二足遅れて聴きにいってまいりました。
初生ナタリーは、陶然たる思いで聴きました。
この際、体調不良なんて関係ない!

<オペラを歌える女優-しかも飛び切りの女優ですよ。>
ほんとうにおっしゃることが、よくわかりました。
過去の来日公演を行かなかったのが今さら悔まれます。

どうもありがとうございました。

投稿: yokochan | 2007年11月23日 (金) 15時11分

naopingさん、ありがとうございます。

すごいよ、ナタリー、すごすぎるよ!
って感じです。体調不良はあるにしても、そんなことはわずかなキズにすぎません。
そんなことをどうこう言う贅沢は言ってはイカンのであります。私も同様、彼女のツェルビネッタが観てみたい。
そして、徐々にレパートリーを進化させてますから、アラベラやカプリッチョなども歌うようになるかもしれません。
楽しみなことですね!

投稿: yokochan | 2007年11月23日 (金) 15時17分

こんばんは。

一昨日は本当にありがとうございました。
思い出に残るコンサートになりました。
素晴らしい歌手ですね。
次回は、何としてもオペラを観ないといけませんね。
そのときは、また宜しくお願いいたします。(笑)

投稿: romani | 2007年11月23日 (金) 21時11分

romaniさん、こちらこそ、ありがとうございました。
声はもちろん、ビジュアル、演劇面、どれをといっても完璧にスバラシイですね!!
どこのオペラで来てくれるでしょうか。
実現すれば、チケット争奪がすごいことになりそうですね。
その時には、是非タッグを組んで戦いましょう(笑)

投稿: yokochan | 2007年11月24日 (土) 01時38分

毎度毎度の出遅れコメントですみません。
まず、お誕生日おめでとうございます。
一度きりの人生ですもん、自分の好きなことはトコトン追求して楽しまないと損ですよね!!
後輩としてyokocnanさんを見習って、がんがんミーハー道を貫こうと思っています♪

ナタリーのコンサートはちょっと考えていたのですが、お財布と相談の上、結局お流れとなりました。
詳しいレポをありがとうございます。
私も彼女を生で聴きたい。

投稿: しま | 2007年11月24日 (土) 11時17分

しまさん、こんにちは。そしてありがとうございます。
最近音楽狂いに、うしろめたい気分だったので、そのように言っていただけると、ほっといたします。
お互い、トコトン行きましょう!(笑)

ナタリーは、気品溢れるチャーミングな方でした。
もうメロメロですよ。
彼女の舞台が心から観たいものですね。

投稿: yokochan | 2007年11月24日 (土) 18時36分

遅くなりましたが、大津のびわ湖ホール「こびと」をみたところで、スーパーホテルに昨日まで3泊、大津に4泊する途中です。
ナタリーは15日に拝見しましたが、とても気持ちよく声が出ていて良かったです。本当にオペラで見たいものです。
高野山、飛鳥、奈良、に行って、これから京都の紅葉めぐりです。

投稿: にけ | 2007年11月25日 (日) 17時27分

にけさん、こんばんは。
おをっー、ツェムリンスキーご覧になったんですね。
いいなぁ~。びわ湖ホールは是非行きたいホールですね。
レヴュー楽しみにしてます。
ナタリーは、誰をも黙らせてしまう、完璧な歌手ですね。
京は今頃、紅葉の盛りですね。どうか良い旅をお過ごし下さい。

投稿: yokochan | 2007年11月25日 (日) 22時55分

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先週、母が大学病院で手術を受けました。 8時間を超える大きな手術になりましたが、お陰様で徐々に快方に向かっており、大阪と東京を行ったり来たりしていた私もようやく一安心といったところです。 執刀いただいた主治医の先生には、本当に感謝の言葉しかありません。 このような状況の中、先週から今週にかけて私が聴いた音楽は、すべてバッハでした。 というか、バッハしか聴けなかったのです。 この間、新たに発見したバッハのすばらしさについては、また機会をみてブログに書いていきたいと思います。 そんなバッハ漬けの生活か... [続きを読む]

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