ジーン・コックス オペラ・アリア集
いつも思うけれど、こうした飾り付けにいくらかかっているんだろう。
こちらは毎年チャリティー募金が目玉になっていて趣旨は非常によろしいけど。
空虚なネオンやイルミネーションはそろそろ見直して欲しいもの。
でも夜のネオンは、いつどこでも恋しいけれどね。
「ジーン・コックス」の名前をご存知の方は、私と同世代のワーグナー・ファンかもしれない。
1970年代前半に、バイロイトで獅子奮迅の活躍をした歌手なのだ。
私はご多分にもれず、年末恒例のバイロイト音楽祭のFM放送のおかげもあって、ワーグナーに開眼していったこともある。
ヴィーラント・ワーグナー演出のリングは、1970年(マゼール指揮)で終わってしまい、その年はまだワーグナーなんて思いもよらない世界だったが、1971年からのウォルフガンク・ワーグナーのリングあたりから聴き始めた。
たしか、そこで登場したのがホルスト・シュタインであり、ジークフリートを歌ったジーン・コックスだったはず。
演出に独創性が希薄となり、指揮もベームやマゼールからすると小粒、歌手もヴィントガッセン、ニルソンの時代から世代交代の時期にあった。
でもそこはシュタイン、年々磨きがかかり、誰をも納得させてしまうワーグナー演奏を次々に繰り広げることとなった・・・・。
でもソプラノもテノールも、やや不毛の時期だった。
リゲンツァやジョーンズまでは少し間があったし、デルネッシュはカラヤンが独占してしまっていた。
ヘルデン・テノールにおいて、J・キングの守備範囲以外、ヴィントガッセンとR・コロ、ホフマンの間をつないだのがこのジーン・コックス。J・トーマスは、70年代は不調だったし。
アメリカのアラバマ州に生まれ、ボストンでじっくり勉強をつんでヨーロッパに渡る。
このあたりは、先達とまったく同じ道を歩む。
イタリアでデビューし、ファウストやロドルフォを歌い、その後、マンハイムに拠点を移しイタリアものを中心に活躍。とりわけオテロは今でも語り草・・・と解説にある。
マンハイムでいよいよワーグナーの諸役に挑み、やがてバイロイトへの道が開かれることになる。
当時、マンハイムにはホルスト・シュタインもいたから、この二人の関係もうかが知れる。
バイロイトでは、エリック、ジークフリート、パルシファル、ヴァルターを歌った。
年によっては、ヴァルターとジークフリートすべてを歌うという快挙もなしていて、当時バイロイトにはなくてはならぬコックスだったのだ。
正規録音は、残念ながら「マイスタージンガー」のみで、シュタインのリングが聴けないのが残念だ。
かなり気合をいれて飛ばしてしまう人だから、スタミナ配分に問題があったらしく、ジークフリートでは元気一杯のブリュンヒルデに押されっぱなしだったし、黄昏では、息も絶え絶えの葬送行進曲のモノローグだったらしい。
私のエアチェック音源でジークフリートが少し残っているけれど、結構いいと思うけど。
CDRでも売ってるけど、高い!
そんなコックスの唯一と思われるCDが今日の1枚。
「フィデリオ」「魔弾の射手」「タンホイザー」「マイスタージンガー」「パルシファル」「神々の黄昏」、これらから歌われている。
なかでも黄昏は、ジークフリートが記憶を回復しつつ、鳥の歌やブリュンヒルデのことを歌う場面から、その死と葬送行進曲までたっぷりと収録されている。
録音時期が不明だが、正直全盛期を過ぎていることは否めない。
声の威力や音程に不満があるのは事実だが、高音をエイッとばかりに張り上げるさまは、コックスの特徴で、人によってはダメのレッテルを貼りそうだが、私は微笑ましく聴く。
こんな健康優良児的な人のいいジークフリートは他に聴かれないから。
神々しい役柄よりは、朴訥であったり自然児的であったりする役柄の似合うコックスなのである。それにしても、どんなオテロを歌っていたのだろう。やたらに興味がある・・・・。
オーケストラは、英国のフランク・シップウエィ指揮のマンハイム国立歌劇場。
このオケが聴ける点でも貴重な1枚。雰囲気豊かないい演奏に驚き。
このCDは、ひょっとするともう手に入らないかもしらん。
ウォルフガンク演出のリング。中肉中背のコックス・ジークフリート。
今年も25日から、恒例のバイロイト放送が始まる。
新演出のマイスタージンガーの盛大なブーが聴きもの??
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