R・シュトウス 最後の4つの歌 ニーナ・ステメ
大晦日の晩、紅白を楽しむ居間から離れて、ひとり音楽を楽しむ。
思えば1年、いやずっとこんな生活を送ってきた。
一人で楽しむ趣味だから、家族との絆はよっぽど時間を割いておかないと、密室の父状態になってしまう。
そんな今年も、いい音楽会やCDにたくさん出会えた。
記憶に残る音楽会をあげてみると・・・。
①「トリスタンとイゾルデ」 バレンボイム/ベルリン国立歌劇場
②「ばらの騎士」 W・メスト/チューリヒ歌劇場、シュナイダー/新国
ルイージ/ドレスデン国立歌劇場
③エルガーの交響曲 大友/京響、尾高/読響
④ラフマニノフの交響曲 プレヴィン/N響
⑤未完成とR・シュトラウス シュナイト/神奈フィル
⑥「タンホイザー」 オーギャン/新国、エトヴェシュ/ドレスデン国立歌劇場
自宅での鑑賞の最大の喜びは、R・シュトラウスのオペラ全15作をこのブログで取り上げることが出来たこと。連続聴きはこれまで2回目のことだけれど、聴くたびに喜びが高まる。そして、音楽の出来が均一なところもシュトラウスのすごいところ。
私の二本柱のワーグナーは、こうはいかない。
リエンツィはともかくとして、妖精と恋愛禁制はかなり苦痛を伴なう。
でもこれも、しつかりしたテキストを得たり、舞台を経験すれば違うかもしれない
そして、たくさんの方々に訪問いただき、こんな拙いブログをご覧いただき、本当に感謝感謝!音楽を一人楽しみながら、その喜びを多くの方々と分かちあえる。
こんな素晴らしいことってないと思う。
皆様、ありがとうございました。
今年最後の音楽は、その名も「最後の4つの歌」、R・シュトラウス(1864~1949)の文字通り最後の作品。
1948年、死の前年に人生のすべてを達観し、黄昏に満ちた素晴らしい4つのオーケストラつきの歌曲を作曲した。
ヘッセの詩による「春」、「9月」、「眠りにつくとき」、アイフェンドルフの詩による「夕映えに」の4曲からなり、いずれも絶妙のオーケストレーションにのって時に飛翔するように、時に佇み、感慨に耽り、そして死を意識し、それを受け入れるかのように、これまでのシュトラウス音楽の総決算のようにソプラノが歌う。
こんなに美しい歌曲を私は知らない。
4曲すべてが美しい瞬間だが、なかでも「9月」の逝く夏を惜しむ場面のソプラノの高音での歌「夏は驚いて微笑み、そして力を失う・・・」、この場面がまずたまらない。最後のホルンのソロといったらもう・・・・・。
「眠りにつくとき」のヴァイオリン・ソロ!もう言葉がない。
神奈フィルの石田コンマスの絶美の演奏が耳に残る。
「夕映えに」では、シュトラウスのオペラの最終場面のようだ。
「かくも深く夕映えのなかに、私たちはなんとさすらいに疲れたことだろう、これがあるいは死なのだろうか」
音楽はまさに、夕暮れに染まりゆく空を思わせる。
遠い空には、巣へいそぐ鳥の姿も見えるようだ。
どこまでも美しく、儚く、そして澄み切った明るさがある。
この名曲を、スウェーデンの歌姫「ニーナ・ステメ」の今年登場したCDで聴いた。
イゾルデやマルシャリンとして、心震わせる名唱・名演技をすでに残している彼女。
北欧の諸先輩と同じように、クリアーでもたれない明晰な歌声。
今風に厚ぼったくなく、クセのない声はとても気持ちがいい。
すべての音域に心が通い、無理なく声が出ている。
ワーグナーとシュトラウスは、もう彼女で決まりだ。
今年舞台で観た若々しいマルシャリンは、とても素適。1幕の終わりに、猫のように床に丸くなってしまった。オクタヴィアンとの別れに耐え切れないいじらしいマルシャリンを演じて見事だった。
これまであんまり聴いてなかった、パッパーノの指揮が意外によろしい。
というか本当にいい。コヴェントガーデンのオケの雰囲気ゆたかなサウンドを得て、シュトラウスに必須の軽やかさと歌心が巧まずして出ている。
「サロメ」の終幕場面と愛すべき「カプリッチョ」の最終場面も収められていてチョー嬉しい。
さあ、録音中のバイロイト・パルシファルでも聴きながら、年を越しますか!
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コメント
初めまして、FC2からおじゃましました
風車(かざぐるま)2号と申します。
とても鋭く、詳しい、貴殿の音楽評論に興味を持ち
ました。クラシック音楽入門者ですが、貴ブログから勉強させて頂きたいと思っています。よろしくお願いします。
投稿: 風車(かざぐるま)2号 | 2008年1月 4日 (金) 13時13分
風車(かざぐるま)2号さま、はじめまして。
ようこそおいでくださいました。
お褒めいただき、くすぐったいような気持ちです。
感じたまま、素直に思い・書くのみです。
クラシック入門者との由でらっしゃいますが、わたしなぞ、だらだらと聴くのみで、音楽聴き始めの頃の初々しい感激が失われつつあるのではないかと思う日々でもあります。
貴ブログにも訪問させていただきますね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2008年1月 4日 (金) 15時56分
1年間yokochanさんのブログ興味深く拝見させていただいきました。おかげで京都のCafe Elgarさんにも12月訪問することができました。私の方にも新年のご挨拶のコメントありがとうございます。で答礼のコメントが大晦日なのもヘンですが、4つの最後の歌が大好きなもので・・・・おっしゃるようにホルンやヴァイオリンソロの美しさは絶品ですよね!
投稿: cozy | 2008年1月 8日 (火) 06時29分
cozyさん、こんばんは。
Cafe ELGARさん、いかれましたか!エルガー好きには聖地のようなお店でしょう!店主さまも気さくで、お話が上手ですし。
30枚セットCDも購入された由。
何故だか、私までうれしいです。
最後の4つの歌、正直だれの歌でも感激します。
素晴らしい音楽のひとつですね。
投稿: yokochan | 2008年1月 8日 (火) 23時32分