ラヴェル 「道化師の朝の歌」 アルヘンタ指揮
音楽の話ではないけれど、野球の話。
巨人のオーナーさまが、原監督に、「これで、勝たなきゃウソだろ・・・」と言ったらしい・・・。
おし着せのような監督が、ここまでくると気の毒。よくガマンしているもんだ、と思わざるを得ない。生え抜き選手を顧みず、他チームの悲鳴もよそに、金品で害人選手を誘惑する手口は相変わらず。そんな虚人軍に憧れを抱き続ける現役選手も、短い勝負人生なだけにわからなくはない。しかし、野球の世界に金銭報酬獲得の勝組・負組はどうかと思うね。
ファンの方、すんません。
「のだめカンタービレ」の正月特番は、録画したもののまだ見ておりませぬ。
ちょい見で、教会のような場所で、モーツァルトとラヴェルを弾く「のだめちゃん」を見たが、普通は残響の多い教会でピアノはないだろな。
でも才気煥発風のモーツァルトと、ノーブルかつ一触触発風の危なげなラヴェルを演奏する彼女は、クラヲタという、いわばこっち側の人間が見ても見事な設定だった!
誰が弾いたかわからないけれど、彼女の思い描いたラヴェルの「道化師の朝の歌」が耳にあるうちに
オーケストラ版を聴いてみよう。
EINZATZレーベルが復刻した、スペインの名匠「アタウルフォ・アルヘンタ」の指揮する「セント・ソリ管弦楽団」の演奏で。
アルヘンタは1914年生まれ、1958年に44歳にして事故死してしまうが、故国スペインでは若くしてスペイン国立管弦楽団の指揮者になるなど、同国を代表する指揮者として活躍する矢先の死だった。
アルヘンタは、かの大指揮者「シューリヒト」にも学んだ。
後輩のラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスもスペインの血を感じさせるが、ドイツの血も濃く、以外やかっちりした構成重視の音楽を聴かせるのに対し、アルヘンタはより自在で、神出鬼没的・フレキシブルな音楽を聴かせるように思う。
ストイックでありながら、神がかり的なモーツァルトやブルックナーを聴かせたシューリヒトとの整合性についてはよくわからん。
このCDで聴くラヴェルは、今となっては聴くことの出来ないノスタルジー色が濃く、過去や地域に軸足を置いた一方で、直球勝負の思い切った演奏になっているように思う。
今風に言えば、地域性と国際性を兼ね備えようともした「グローカル」演奏ではないかしら。
オーケストラは、当時のレーベル契約等の関係からパリの一流オケの腕っこきの団体とも、ラムルー管とも言われるが、いくぶん鄙びたサウンドは、まさにローカル色の部分を担っている。対するリアルで明快な指揮者との取り合わせが楽しい。
「道化師の朝の歌」は、伊達男の朝帰りの歌である。
粋でいなせな伊達男が、夜も白む朝方に、ほろ酔いで陽気に歌を歌いながら帰還するサマを思い起そう。
かつてワタクシも若き頃、よくやったもんだ。
なにか、とてつもなく気持ちが大きくなって、大仕事を成し遂げたような気分だった。
休日ならいいけど、週日はそのまま職場に向かう。
朝はハイテンションで、仕事は順調。ところが10時頃から、死んだようになってしまったもんだ。昼は食事も喉を通らず、「もう、しません。」と思いつつ、夕方に復活、全開。
そしてまた同じことが繰り返されるわけであった。
アレレ?違う方向に! 単なる酔っ払いじゃん。
ラヴェルのそれは、もっと色っぽい朝帰りじゃん。
アルヘンタの「道化師」も、酔っ払いじゃなくて、洒落た伊達男なのであった。
「マ・メール・ロワ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「スペイン狂詩曲」などが、他に収められた当CD。1956年の録音とは思えないリアルで、味わいのある音が復活している。
大阪でお世話になっていたEINSATZさんが起したレーベル。
待望のホームページも立ち上がり、さらに涎垂の音源の数々の復刻を準備中という。
こちらは、デッカに録音したアルヘンタのスペインにまつわる音楽の1枚。
ロンドン響から、びっくりするくらいの濃厚スパニッシュ・サウンドを引き出している。
ラヴェルとともに、こちらもお薦めアルヘンタ!
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コメント
私も「のだめ」4晩かけてコマ切れにようやく見終えました。ピアノの「道化師の朝の歌」も素敵ですね~。
明日(もう今日ですが)私は出張がてら恵比寿で音楽仲間と新年会、そのまま友人宅に宿泊し、自宅へは「朝帰り」どころか「夕方帰り」の予定です・・・・
投稿: cozy | 2008年1月11日 (金) 00時58分
cozyさん、こんばんは。
今頃はまだ楽しくお過ごしでしょうか?
さすがに夕帰りは、私もありません(笑)
実は今もまだ、のだめ見終えてません。
目も耳もいくつも欲しいところです。
ピアノ版とオケ版、両方聴くとラヴェルの天才的な作曲技法に驚きます。
投稿: yokochan | 2008年1月11日 (金) 23時45分
こんばんは。
さきほど久しぶりにこのディスク聴きましたが、あらためて瑞々しい演奏だと感じました。
すべての音符達が、適材適所で生き生きと振舞っていることに驚きの念を禁じえません。
アルヘンタは、まさしく天才でしたね。
どこかの野球チームも、適材適所という言葉の重要性と、素材(パーツ)を磨き上げると言うことの奥深さを認識すると、もっと感動を与えられるのに・・・。
ところで、のだめ、私はようやく10回まで観ました。
キャスティングがあまりにもはまりすぎ?(笑)
毎回、こっちまで泣き笑いさせられます。
漫画とはまた違った魅力があって、これまたブラヴォーです。
投稿: romani | 2008年1月12日 (土) 21時42分
romaniさん、こんばんは。TBもありがとうございます。
アルヘンタの素晴らしい音楽性と某チームをうまく結び合わせていただいき、座布団3枚進呈です!!
「のだめ」は愉快です。のだめ効果は、コンサートにいろんな影響を与えてますが、うまく根付いてくれると本当にいいですね。
投稿: yokochan | 2008年1月12日 (土) 23時07分
アップされておいでの『スペイン!』、『栄光のロンドン・サウンド・シリーズ』中の一枚にて、所持しております。演奏・録音共に鮮烈です。何か不可解な事故で突如あの世に召されてしまわれた人のようですが、逝去された1958年と言えば晩年のB・ワルターがアメリカ西海岸で、ステレオ録音を開始した年ですから、あまりにも早きに過ぎた他界としか、言い様がございません。イエペスとの『アランフェス‥』があまりに高名ですが、OSRとのドビュッシー『映像』も、聴いてみたいものです。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年9月 5日 (日) 18時45分
アルヘンタほど、スペインそのものを感じさせる指揮者はいませんでしたね。
早逝が悔やまれる方のひとりです。
投稿: yokochan | 2021年9月 9日 (木) 08時36分