« モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 ベーム指揮 | トップページ | ラヴェル 「道化師の朝の歌」 アルヘンタ指揮 »

2008年1月 8日 (火)

R・シュトラウス 「ドン・ファン」 アバド指揮

Abbado_strauss_dg モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」から、ちょうど100年のち、R・シュトラウス(1864~1949)も同じ題材で、交響詩を作曲した。
1888年のこと。
この作品の前に交響詩「マクベス」を作曲してはいるが、発表が前後したため、「ドン・ファン」が世に出た、シュトラウスの交響詩第1号となる。
シュトラウス24歳!
これ以前は、習作的な交響曲と協奏曲、器楽・室内楽がある程度で、本格的な成功作がこの「ドン・ファン」

モーツァルトのドン・ジョヴァンニが、やたらに女色を好み漁りまくったあげく天罰を受けたのに比べ、レーナウの詩に基づく、シュトラウスのドン・ファンはもっと崇高な思いをもって理想の女性を探し求める、といった弧高(??)の人物像を描いているという。

天衣無為なモーツァルトの音楽は、そうしたドン・ジョヴァンニに相応しく、悪ふざけと神妙さが同居する人間の二面性を鮮やかに描き出した。

何でも音にしてみせたシュトラウスは、やたらに高尚で冗談のつけいる余地のない音楽を書き上げた。ドン・ファンの愛の歌はともかく真剣味に満ちているし、二人の愛情もどうやら本物だ。が、しかし、ドン・ファンの求める女性ではなかった・・・・。
決然としたホルンとともに、あらたな遍歴の旅に出る。その先には死あるのみ・・・・。

17分の交響詩にシュトラウスが描いてみせたドン・ファンの生き様。
私らには到底関係ないお話。
まったくいい気なものだ。
シュトラウスの音の洪水に心地よく浸っていると、某嫁が来て、「うるさい!」と・・・。
さて、私の理想の女性はいったいどこへ消えてしまったのだろう?

アバドが1982年に、ロンドン交響楽団と録音したシュトラウスを集めた1枚。
今もって大好きなCD。カラヤンもいいけれど、アバドのすっきりとした切り口で歌われるシュトラウスは、マーラーとの近似性を感じさせる。
構えたところが一切ないかわりに、物語性・表題性が乏しいが純音楽的な真摯な演奏は聞き飽きることがないはず。
ジャケットには、クリムトの「愛」が使われていて、センスよろしい。

Abbado_strauss_sony

ベルリン時代の1992年、アバドはジルヴェスター
コンサートでシュトラウスを特集し、同曲を冒頭に演奏した。
こちらは、ライブならでは、一気呵成の一筆書きのような勢いと流れの豊かな演奏。
そしてベルリン・フィルの密度の高い響きは、ロンドン響との違いを見せつけてしまう。

どちらも、私にとって大事なシュトラウス。
ベルリン盤は、アルゲリッチとの「ブルレスケ」や、シュターデ、フレミング、バトルといった夢のような競演による「ばらの騎士」が入っている。
ラトルが、一昨年、同じようなプログラムを組んだけれど、先輩アバドの方がシュトラウスに関しては新境地を見せていたように思う。

オペラ全曲を終えたシュトラウス、今年は他の作品を順次取上げることとしよう。

|

« モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 ベーム指揮 | トップページ | ラヴェル 「道化師の朝の歌」 アルヘンタ指揮 »

コメント

R.シュトラウスは私も大好きな作曲家です。ま、どの曲も高度なテクニックを要するのでオーケストラ泣かせですけどね。でも私の周りはシュトラウス嫌いが多くて寂しい限りです(笑)

投稿: EINSATZ | 2008年1月 9日 (水) 00時06分

今晩は
リヒャルト・シュトラウスではツァラトゥストラはこう語った (交響詩)が好きです。映画(2010年?)の宇宙シーンで使用された時の印象が強く残っています。

投稿: 風車(かざぐるま)2号 | 2008年1月 9日 (水) 19時59分

あ、このベルリンのシルベスターコンサートはLDで持っています。宝物のひとつです。「ブルレスケ」でのアルゲリッチとティンパニーとのスリリングな掛け合いには興奮します。
三人の歌姫による「ばらの騎士」終曲の三重唱も素晴らしいですね。うっとりです。

投稿: YASU47 | 2008年1月 9日 (水) 23時27分

EINSATZさん、シュトラウス嫌いの方々のおはなし、よくわかります。あの、あざとさと巧さがイカンのでしょうか。
私はオペラも経て、再びオーケストラ作品に、シュトラウスの真髄を見出しつつあります。

投稿: yokochan | 2008年1月10日 (木) 00時11分

風車(かざぐるま)2号さま、こんばんは。
ツァラトゥストラの映画では、ベームとベルリンフィルの演奏が使われたんですね。
今はもっとカッコイイ冒頭部分を鳴らす演奏がたくさんありますが、ベームはそれ以外の部分に味わいがあります。
シュトラウスはマーラーと同じく、オーディオの発達もその音楽受容にとって欠かせない要因だったように思います。
そして、キューブリックの映画ですね!

投稿: yokochan | 2008年1月10日 (木) 00時15分

YASUさん、こんばんは。
私も、DVDでも購入しました。
BPOのティンパニ奏者、すごいですよね。
アルゲリッチ+女声3人は、もう名前だけ見ててもため息ものです。私にもお宝の1枚であります。
あの3人で「ばら騎士」全曲があったら・・・・夢です。

投稿: yokochan | 2008年1月10日 (木) 00時18分

ほお、今年は管弦楽作品ですか?!yokochanさんのパワーにはほとほと感心いたします。でも、ここまできたら、シュトラウスの最も魅力的な世界である歌曲も是非っ!
一応作品番号付のシュトラウス作品はほとんど持っておりますが、歌曲、いいですよ。

投稿: IANIS | 2008年1月10日 (木) 21時49分

IANISさん、こんばんは。
ふっふっふ。そうです、こうなりゃ歌曲も器楽も室内楽もまるごと制覇を企んでます。
まだ道の作品もありますゆえ、いろいろと教えて下さい。

投稿: yokochan | 2008年1月10日 (木) 23時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: R・シュトラウス 「ドン・ファン」 アバド指揮:

« モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 ベーム指揮 | トップページ | ラヴェル 「道化師の朝の歌」 アルヘンタ指揮 »