R・シュトラウス ヴァイオリン協奏曲とソナタ サラ・チャン&サヴァリッシュ
人気の宮崎県が誇る県立芸術劇場内のコンサート・ホール。その名も売られしまい、さらにそのメインホールの「アイザック・スターン・ホール」は春の国際音楽祭のメイン会場だが、不稼動の時に、結婚式場として活用することになったらしい。
劇場内のレストランを運営する企業の企画で、「ミュージック・ウエディング」と称し、会場で招待客が見守るなか、ステージで結婚式をとり行なうらしい。本式のパイプオルガンと聖歌隊までが登場するらしい・・・・。
引き合いも上々とのこと。
地方のハコものが抱える問題の庶民的な活用作としてはいいのかもしれないけれどねぇ。
本格的なクラシック専門のホールだから、感覚的にはサントリー・ホールで結婚式をしてしまうようなものだ。立派な音楽ホールが、国内隅々までにある国って世界的にも稀でしょ。
今話題のガソリン税の余剰分が、こんな形で地方に交付され、使われている。
もっと、音楽に近いところでの活用の仕方ってないのだろうかなぁ・・・。
R・シュトラウス作品シリーズ。
1882年、18歳のヴァイオリン協奏曲と、1888年、24歳のヴァイオリン・ソナタを取上げる。
音楽一家のシュトラウス家は、父がミュンヘンの歌劇場のホルン奏者で、自身も音楽家になるべく育った。幼い頃からピアノを弾き、またヴァイオリンの名手でもあった。
そんなシュトラウスが、得意のヴァイオリン協奏曲やソナタを、ごく若い頃に書いただけで、交響曲とともに、純音楽を作らなくなってしまったのが面白い。
表題音楽である、「交響詩」そして「オペラ」へと軸足が完全に移行してしまった。
唯一、「歌曲」のジャンルだけはずっと共にあった。
そんな若書きの協奏曲は、伝統的なロマン派の流れを汲む正統派協奏曲で、ブルッフのようにも聴こえる。でも後年のシュトラウスらしい感傷的な歌いまわしや、軽やかな旋律なども随所に味わえる。
2楽章のホルンとヴァイオリンソロとの掛け合いなどは、晩年の「カプリッチョ」のホルンを思い起させる。父がホルン奏者であったことを今更ながらに思えば、シュトラウス作品におけるホルンという楽器の位置付けがまたわかってきて楽しい。
3楽章の軽快な旋律は、聴いたあともずっと耳に残る。
そして、6年後のソナタは、いかにも若書き風の協奏曲とはだいぶ、様相が異なる。
かなり青年の音楽になっている。
3楽章形式で30分あまりのこれまた伝統的なスタイルを踏襲してはいるが、馥郁たるロマンの香りが満ちていて、冒頭部分はまるでブラームスかフランクのような雰囲気だ。
でもその晦渋さは一瞬だけで、その後、ヴァイオリンは青春を謳歌するかのような歌を気持ちよく歌いあげてゆく。
2楽章のロマンテックな香りに満ちた抒情はなかなかのものである。時に翳るような、その若々しい多感なメロディーは、シューベルトをも思わせる。
3楽章では高潔かつ気品あるメロディーがシュトラウスらしい。
元気娘サラ・チャンの明朗快活な演奏は、シュトラウスの若い作品にピタリときている。
存分に歌い、輝き、飛翔するさまは気持ちがいい。
彼女のお爺さんのようなサヴァリッシュが、シュトラウスはこうやるんだよ、とばかりの落ち着きをもった伴奏を受け持っていて、心強い。
ソナタの2楽章のピアノは大変に美しく聞き惚れてしまう。
ヴァイオリンソナタは、ハイフェッツが愛した作品。
キョン・チョン・ファも録音していたはず。
情熱を持ったヴァイオリニストが取上げる桂曲。
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コメント
今日、6月のサラ・チャンの公演チケットを取ってきました。オルフェウスと来日するんですよね。
サインもらったんですか?
投稿: リベラ33 | 2008年1月27日 (日) 13時34分
6月にも来日するんですか!
昨年11月のヤンソンス/バイエルンと来日したときに、サインをもらいました。
明るくて勝気そうな女子でありました。
投稿: yokochan | 2008年1月27日 (日) 21時04分
yokochanさんが、私の聴いたことのあるCDをとりあげてくれるのは珍しいことです。というか、私があんまり聴いてないってだけなんですが。
昨年「ダフネ」勉強の時に、シュトラウスの協奏曲を聴きましたが、このCDはとても印象に残っています。オペラの伴奏じゃなくても、こんな美しい旋律を書いていたとは知りませんでした。
投稿: にけ | 2008年1月29日 (火) 19時41分
にけさん、こんばんは。
このCDは、協奏曲とソナタが1枚で聴け、しかもサヴァリッシュという信頼置ける指揮とピアノであることが大きいですね。
そいて、いっしゃるように美しい旋律にはまいってしまいます!
私は、あっちへふらふら、こっちへひらふら、といった気まぐれ視聴なものですから、にけさんのような深い聴き込みは出来ないですよ!
投稿: yokochan | 2008年1月29日 (火) 22時53分
この盤輸入外盤に遭遇?して、買い求めました。ジャケットのチャンの幾分ふてぶてしさすら感じさせる視線もさながら、R-シュトラウスの初期の佳作の組み合わせと言う好ましい企画に、レジに持ち込みました。演奏に付いての詳細はyokochan様が的確に述べておいでですので‥。チャン様も最近は新録音のニュースが届きませんが、無論ステージでは旺盛な御活動なさっておいでなのでしょう。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年12月 3日 (火) 08時30分