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2008年2月11日 (月)

マリア・カラス

Callas

 

 

 










マリア・カラス」(1923~1977)
この不世出の大歌手を取上げるのは何となく恐れ多かった。
そのすべてをまだ聴き尽くしてないし、カラスに必ず付いてまわる音楽以外のゴシップなどが、どうにも苦手だったから。

53歳で亡くなってしまったカラス。
無理なダイエット、オナシスとの別れと歌手生命からの別離による鬱症状。それを克服しようとした薬漬けの日々・・・・・。

ドラマのようなカラスの人生は、映画にもなったし、これから先、伝説を呼んでいくことだろう。

Callas_tosca そんなすごいカラスには、私は高校生の時に出会った。
もちろん、現役を退いてしまっていた頃だけれど、プレートルの指揮するステレオ盤の「トスカ」のレコードを買ったのがきっかけ。
今にして思えば64年のこの録音ではもう、カラスの声は衰えが目立つが、その風格とトスカに乗り移ったかのような大女優の貫禄には、ほとほと参った。加えてゴッピのスカルピアのもの凄さと、ベルゴンツィの高潔なカヴァラドッシ・・・・。
デ・サバタ盤もいいが、これも今もっていい。

 






次いで、1974年のカラスの復活来日公演。
前年にオープンしたNHKホールという巨大空間で、ピアノ伴奏による、ディ・ステファノとのジョイントコンサートが開かれた。
欧米を経てから、カラスの生涯最後のコンサートが、日本だったことは複雑な気持ちだが、その公演はNHKで放送され、テレビとFMに釘付けだった。
出来栄えがどうのこうのではなく、モニュメント的なコンサートだったが、映像で見たカラスは、その立居振る舞いに大歌手のオーラが出まくっていた。
そして、カラスより、ステファノが現役そこのけの立派な歌だったのも鮮明に覚えている。
この映像と音源は、私の貴重なコレクションとなっている・・・・・・。

その翌年、カラスは横浜の県民ホールで「トスカ」の舞台に立つ予定だったが、やはり無理だった。かわりにカラスに指名されたのが、モンセラット・カバリエ
皮肉にも、カバリエの巨漢と、見事なソットヴォーチェを印象付けた上演だった。

Callas_japan こちらは、73年に公演を前に初来日したカラス。
雑誌の切抜きから。
長崎の「マダムバタフライ・コンクール」の特別審査員として来日。

私が思うカラスの素晴らしい役柄を3つあげると、「トスカ」、「ノルマ」、「ルチア」 だろうか。

決して美声ではないが、知性に裏打ちされた圧倒的な歌唱力は聴いていて、それこそ平伏し、ヒロインといっしょくたになって、感動の涙にくれざるを得ない。そんなすごい説得力に満ちているカラスの歌。ほかの歌手たちとは、比較もできない。
カラスはカラス。オンリーワンの歌手。

 

EMIに残した、スタジオ録音による13枚のリサイタル盤を集大成した今回のCD。
昨年夏に、今は亡き新橋のキムラヤで、格安で購入。
以来、おりにふれ、1枚1枚聴いて楽しんでいる。
モノラルの若い頃のものほど素晴らしいが、30歳そこそこで、こんなに役にのめり込んだスゴイ歌唱をしていたのかと思うと恐ろしい。
歌うたびに、そしてそのたびに、きっとものすごい努力を重ね、命をすり減らしていたのだろうか・・・・・。54年録音のプッチーニ集から、ミミの歌や、アンジェリカの歌をそんなことを思いながら聴いていたら、落涙してしまった。

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コメント

こんばんは。
僕はカラスの現役時代を全く知りません。さぞや凄かったろうと想像しています。というのは、昨年、EMIから発売されたカラスのコンプリートBOXを購入して、衝撃を受けたからです。
世評高いサーバタ指揮の「トスカ」、初めて聴きました。ものすごい存在感でした。他の演奏もスゴイです。「椿姫」、「ルチア」、「トロヴァトーレ」も・・・・・とにかく、1950年代までの録音は、どれも圧倒的な歌唱で、大歌手、いや、大女優と言った方がふさわしいでしょうか。不世出の大歌手大女優であったことが、感じ取れました。

日本公演の放送などもあったんですね・・・・。
いろいろなことが、分かりました。有り難うございました。

投稿: mozart1889 | 2008年2月11日 (月) 19時13分

子ども時代から名前だけはよ〜〜く知っていました。もうひとりはマリオ・デル・モナコ。何を通じて知っていたのか覚えていません。テレビはなかったので、新聞、ラジオなんだろうと思いますけど・・こんなにも有名な歌手とは一体どういう存在なのかと子ども心に不思議に思った記憶がかすかに残っています。

そして、その歌を意識して聴いたのは?十年後、CDで聴いたトスカ(デ・サバータ指揮)、椿姫(ジュリーニ指揮)が最初だったでしょうか。それ以前に映画の中で耳にして、忘れられなくなったアンドレア・シェニエからのアリアもカラスの録音だと知りました。

音質は最高とは言えないですが、ほんとに独特の存在感のあるすばらしい歌で、なんと言ってもその人物そのものがそこにいると感じさせられるのがたまりません。

投稿: edc | 2008年2月11日 (月) 21時24分

mozart1889さん、こんばんは。
カラスの歌唱はほんとうにスゴイですよね。
私もこのCDアンソロジーを聴きながら、圧倒される思いです。
すべての歌手、聴き手がカラスを聴き、感激してるんじゃないかと思います。
歴史のひとコマで片付けられる人ではないと思ってます。
コメントありがとうございました。

投稿: yokochan | 2008年2月11日 (月) 22時40分

euridiceさん、こんばんは。

>その人物そのものがそこにいると感じさせられるのがたまりません<
 そうです、まさにその役に没頭するリアルな存在感。
まさにカラスですよね!!

そうした歌手としてのデル・モナコもそうでした。
役柄を選びますが、凄まじいばかりの表現力は、今にして見ると恥ずかしいくらいですが・・・

カラスの永年の相方が、ディ・ステファノ。
デル・モナコの同様の相方が、テヴァルディ。
正統派が期せずして揃っているところもオペラのおもしろいとこりでしょうか。

投稿: yokochan | 2008年2月11日 (月) 22時49分

yokochanさま こんにちは

カラス、私にとってはあまり聴かない歌手です。イタリアオペラはあまり聴かないですし、聴く場合もニルソンさん、リザネクさんの録音を聴くことが多いんです。

ですが、来日公演の「カルメン」の終幕のところ
テレビで見ていて、こりゃ凄いって思ったことを覚えています。DVDも出ているのかもしれませんが、あれはもう一度観てみたいです。それと、LP時代では、「ノルマ」は素晴らしい歌でしたね。
懐かしい歌手ですね~。

ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2008年2月12日 (火) 11時32分

rudolfさん、こんばんは。
私はかつて(若い頃)、明けても暮れてもイタリアオペラ、そしてカラスにデル・モナコばかりを追い求めていた時期があります。
このアンソロジーCDを昨年購入し、あらためて感嘆してます。
カラスの魅力がぎっしり楽しめるこの一組、日々聴くと大いなる気分転換になりますよ。

投稿: yokochan | 2008年2月12日 (火) 22時52分

今晩はあまりにも偉大なカラスは私にとおては

伝説のオペラ歌手です。映画で見る限り人生の最後が

あまりにも惨めで寂しいのがとても残念です。

でも全盛期の歌声はとても迫力のある声で

生で聴いたらたまらないだろうなと思いました。

投稿: 風車(かざぐるま)2号 | 2008年2月12日 (火) 23時29分

風車(かざぐるま2号)さま、こんばんは。
そうですね、「あまりにも偉大なカラス」、この言葉につきますね。復活するまでの失意の日々は、決して成功とはいえなかった復活劇とその後のあっけない死・・・・。
カラスの人生は、まさにドラマ、オペラでした。

もし、過去にタイムスリップできたら、カラスとデル・モナコの共演を聴いてみたいものです。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2008年2月12日 (火) 23時39分

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