ワーグナー 「ワルキューレ」 二期会公演①
二期会公演、ワーグナーのワルキューレを観劇。
ワルキューレは、演奏会形式を含めてこれで通算9回目。我ながらずいぶん観て聴いてきたもんだ。
どの舞台も、その時代時代、印象深い舞台で今でもそれぞれ思いだすことができる。
今回の二期会ワルキューレは、タブルキャストで、平日二回と土日の上演。
今日は15時開演、19時40分終幕で、もう少しどうにかならなかったのだろうか?
幕あいの留守番電話対応が大変だった。
自分の仕事管理能力を棚にあげて。
夜8時前にホールを出て、その時間の中途半端なこと。でも今日は「鹿男・・・」もあるし、普通に満員電車に乗って帰宅することにした。
さて、すっかり手のうちに入ったワルキューレ、ローウェルスという演出家がいかなる舞台を見せるか、20年前大活躍だったベテラン大野徹也さんの久方ぶりのジークムントがとうか、飯守先生の自家薬籠中のワーグナーがどうか、などの思いで上野へ。
舞台の様子を本演出が、一般と違う点に絞って書いてみたい。
これから観る方は、お読みにならない方がいいかも・・・・。
舞台は、黒系のモノトーン、装置はまったくといっていいほどなく、シンプル。
衣装も渋系で、暖色系は一切なし。時代設定不明。
第1幕
ピットに迫り出したステージに四角の井戸のようなものがあり、1幕では出番のないはずのヴォータンが腰掛けている。
幕が開くとさらに二人。痩せて卑屈そうな様子でヴォータンの足元にいるのはローゲ。もう一人は少女時代のブリュンヒルデらしい。戦乱の亡者のような一行が、舞台奥を行進してゆく。
ジークムントが駆け込んできて、ジークリンデと出会うさまをウ゛ォータンは傍観している。
先ほどの四角いコーナーが、時に青に赤に光ったりして、泉の役割や、2幕でヴォータンが沈思するときに眺めたりするモニュメントとなっている
フンディングは、手下を連れた文字通り虎刈りの俗物で、ジークムントが一人ウェールゼ・・・と悩んでいるとき、舞台の奥のベットで、ジークリンデに圧し掛かったりしてるオッサンになっている。
ジークムントが剣を抜くとき、またもやヴォータンが登場。槍を掲げ、手助けしている。
兄妹の二重唱の場面、出番であるはずのないフリッカが何故か出てきて、汚らわしそうにしている。
第2幕
開幕前から、ジークリンデがまとっていた、白い布が、1幕最後から四角いコーナーに掛けられ、そこに男がうずくまっている。
幕開き、いきなり8人のワルキューレが勇士達を収納している。
このワルキューレたち、本来3幕まで登場するはずもないが、虫のような羽をはやしている。
早くから、フリッカも出ている。
そしてフリッカとヴォータンの長丁場では、執事がいてヴォータンが脱いだ服を片付けたりしているし、二人分のグラスワイン(赤)を運んできたりする。
夫婦のやりとりがかなりリアルで、女性上位の動きでヴォータンはおろおろするばかり。出番なしのフンディンクが私のお願い聞いてとばかりに登場する。
失意のヴォータンの長大なモノローグ。ヴァルハラに戦士を集め中の段になると、舞台奥が開き、8人のワルキューレたちと、勇士らが登場してごちゃごちゃやってる。
そこに、先のブリュンヒルデ少女もいる。
兄妹の逃避行、ヴォータンとブリュンヒルデがいる間に、兄妹登場。当然二人には見えない神々の姿・・・。
兄妹ふたりになったあとも、ちゃっかりヴォータンが登場。自分が見えないように魔法をかけたのか、兄妹は動かない。ジークムントの方に未練がましく手をかけ、ジークリンデに至っては槍で突いて殺そうとする。でも思い直し、お腹に手をあて(妊娠を確認し)満足そうに去る。去り際にジークムントの顔あたりに手をかざしてから、ジークムントは正気に戻ったように動きだした。
ジークリンデが夢の中で狂乱する。奥では、雪が降りしきり、妊婦が辛そうに横切る。
なんと、フリッカがブリュンヒルデの手を引き、ジークムントの死の告知の場面へ導く。
最初は見えないブリュンヒルデだが、彼女が手をかざすと魔法が解けたかのように見える存在となる。
戦いでは、やはり卑怯にもフンディングは手下二人を連れている。
手下をやっつけたが、フンディングとの戦いでは、ノートゥンクをヴォータンに折られ、ヴォータンに刺されたかのようなジークムント。
間にはいったヴォータンが、思わずジークムントに手をさしのべるが、ジークムントは拒絶する!見た目にもがっかり寂しいヴォータンである。死につつある息子が寄りかかってくるのを受け止めるだけ。
最後の確認にフリッカがまたもや登場して現場確認している。
第3幕
勇士たちの戦場での戦いで、ワルキューレの騎行がはじまる。
戦士たちを集める戦乙女たち。舞台奥に薄暗い階段があり、勇士たちはそこを昇ってヴァルハラに向かうらしい。
駆け込むブルンヒルデとジークリンデ。このあたりは普通。
ジークリンデが、懐妊の知らせとともに感謝を歌う場面では、金色の照明が舞台右から全員を照らし、感動的な場面。
怒れる父と罰を受ける娘。大きな羽をはやしたワルキューレたちが、いろいろ分割しながらヴォータンとやり取りする。
父の厳罰が決定的となるなか、またもやト書きにない満足そうなフリッカが執事を連れて登場、ブリュンヒルデの背中の羽根を執事が取るのを確認。
父・娘の会話のあと、娘の懇願に負けるが告別の準備をまったくしない父親。
告別の素晴らしい音楽をうけて、なんとジークムントが登場しヴァルハラの階段をゆっくり登りだす。ジークムントは、こちらを振り返り、ブリュンヒルデと目をかわす。
神性を抜く口付けのあと、ひとりブリュンヒルデは舞台奥(多分、山頂)に去る。
去ったと思ったら、緞帳の影から、幼い日のブリュンヒルデ(少女)が駆け出てきて、ヴォータンと楽しく抱き合う??
娘の懇願を聞き入れ、山を火で包むが、ブリュンヒルデはいつのまにか、山の頂きに自分一人で勝手にいってしまっている。
火をおこすため、案の定ローゲが登場。この原作にないローゲ役、バレエダンサーだった。神妙な音楽の流れるなか、ローゲは激しく踊りまくる・・・。(あ~ぁ)
ひとしきり踊り、舞台奥のブリュンヒルデコーナーで、彼女が一人勝手に横たわろうとするとき、ローゲはゆっくりと舞台奥に消え、それより早く、ヴォータンは意外なほどあっさりと舞台を去る。魔の炎の音楽が鳴る中、舞台は鳥籠のようなブリュンヒルデの寝床が赤く染まり幕となる。
こんな具合の舞台。画像は、classic NEWSから拝借です。
う~む・・・・・ちょっとね~。そりゃ違うだろ・・・・・。
舞台の印象は、土曜の別キャストでの観劇ののちに。
ジークムント:大野徹也 ジークリンデ:増田 のり子
ヴォータン :泉 良平 ブリュンヒルデ:桑田葉子
フンディンク:小鉄 和広 フリッカ :増田 弥生
その他、ワルキューレ
飯守泰次郎 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
演出:ジョエル・ローウェルス
(2008.2.21 文化会館)
なんといっても熟練の飯守さんの指揮がすばらしい。
どこをとっても、音楽が息づいていて、気持がこもっている。
オペラの呼吸を熟知した東フィルならではの、ハズレのない前向き音楽だった。
大野さんの日本人ではありえないロブストな声は、相変わらず健在だった。
見栄えのいい泉さんのヴォータンは、少し軽めながら、その声の美しさに満足。
けなげなジークリンデを演じた増田さん、最初は声がうわずってしまったけれど、立派なブリュンヒルデの桑田さん、存在感あったフリッカの増田さん(何度も何度も舞台登場ごくろうさまでした。)
歌手の皆さんは、立派なものだった。
初日は、皇后様がお見えになったそうだが、幕間のロビーにはそこそこの著名人が見かけられた。かつてのヴォータンのひとり、木村俊光さんもお見かけした。
土曜日に異なるキャストで、もう一度観劇予定。
あのローゲだけは、あんまり見たくないなぁ~。
あっ、それとまたあのぶち壊し拍手あり!ばかも~ん!!何度言ったらわかるんじゃ!!
それと、全然関係ないけど、アルミンクと新日フィルが「ばらの騎士」をホールオペラ形式でやりますぜ。
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コメント
こんばんは。同じ日に鑑賞したのですが、私はyokochanさんより席がずっと後ろだったと思われ。こんなに細かくは見れなかったですよ。私は演出も結構楽しく見ました。休み時間に、解説を書いていらした田辺とおるさんをロビーでお見かけしました(向こうは私の顔は知らないので声はかけませんでしたが)。別キャストの感想も楽しみにしています。しかし、あのフライング拍手・・・なんとかしてもらいたいですね。
投稿: naoping | 2008年2月22日 (金) 20時05分
naopingさん、こんばんは。
やはりいらしたのですね。そんな気がしてました。
私の席は、実は2階のRのかなり右寄りでして、ここはオケピットのほぼ斜め上で、舞台が全景見渡せました。
そのかわり、音のリアルさがないのですが、まずまずでした。
明日は奮発のS席だけに楽しみではあります。
リングの単発演出を前提にしたせいか、説明的にありすぎたと思いますが、レヴェルの高い演出だと思います。
飯守さん+歌手がともかく素晴らしい。
とおるさん、私も1回ホール階段下で見かけましたよ。
明日の著名人も楽しみ。
拍手の件は、アンケートに書いてFAXしましたぜ。
土曜に行かれるのでしたら、白ワイン片手に外に出てるおっさんが私ですよ~、沢山いますが(笑)
投稿: yokochan | 2008年2月23日 (土) 00時01分
私も行ったのですが、yokochanさんが、こんなに詳しく解説しているので、けっこう書く気が失せてしまいました。
とってもよかったので、早く続くジークフリートをやってくれないかと願っています。トラバさせていただきます。
投稿: にけ | 2008年2月23日 (土) 22時29分
にけさん、こんばんは。
同じ日の観劇でしたか!
いやぁ、すいません。自己の記録の意味もあってちょいと書きすぎてしまいました。
ジークフリートを歌える人が日本人にいますかね?
大野さんのジークフリートを2度聴いてますが、さすがに難役ですね。でも是非和製リングを完結してもらいたいものです。
投稿: yokochan | 2008年2月24日 (日) 02時20分
20日A組と24日B組の両方行きました。20日の方がずいぶんと良かったように思いました。小山さんの存在感が際立っており、橋爪さんのジークリンデも立派でした。ジークムントの成田さんも苦しい部分はあるもののそれがジークムントの悲壮感にマッチしていました。オケはちょっと×。24日B組はまったくしまらない歌唱に終始していました。どんなに飯守さんでもあれではどうにもしようがなかったのでしょうね。
投稿: 博 | 2008年2月24日 (日) 20時58分
博さま、コメントありがとうございます。
初日と最終日に行かれたんですね。
確かに、ご指摘の通り、A組のほうが歌手はよかったと思います。
小山さんのインタビューが、音楽の友に出てますが、ドイツでは周りからイゾルデをやらないかなどと言われているそうです!
オケは連日お疲れなのか、東フィルの金管には毎度、ここという時に泣かされます。
でも、相対的に素晴らしい公演だったかと存じます。
投稿: yokochan | 2008年2月24日 (日) 23時00分
はじめまして。
自分は21日に見てきました。
音楽的にはまぁ満足だったんですが、意味不明の演出や安っぽい衣裳にがっかりしました。
やっぱりワルキューレにローゲが出てきちゃいけませんよね(失笑
奮発してS席買ったのにがっかり。
ちなみに自分の前の列には2千円の学生さんがたくさんでうるさいうるさい。学生をS席に入れるほど売れなかったのか(苦笑
投稿: くぅ | 2008年2月27日 (水) 19時26分
くぅさま、はじめまして、コメントありがとうございます。
同じ日の鑑賞でしたか。
装置がシンプルで象徴的なわりに、説明的にすぎる演出ではありましたね。
S席の学生さんですか!ちょっとそれは、やりすぎの感ありますね・・・・。難しいものですが、ドイツものはヴェルディやプッチーニの定番にはまだまだ敵わないのでしょうか。
>やっぱりワルキューレにローゲが出てきちゃいけませんよね< まったくもって、激しく同感します。
しかもボロボロのローゲは、策士にはどう見ても思えませんでしたね。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2008年2月28日 (木) 23時33分