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2008年2月23日 (土)

ワーグナー 「ワルキューレ」 二期会公演②

Walkure1_04 二期会ワルキューレ、今回2回目の観劇。
前回と異なるキャストでプレオーダーで取得した、グレードも上げた席(1階8列目)で土曜の午後をワーグナーにすっぽり浸かろうと万端の思い。    

あまりに説明的で、ト書きにない人物の動きに、ちょっと消化不良ぎみだった私。
一度経験したから、なんであんたがそこにの違和感はさほど抱くことなく、普通に受け入れられた。
やはり、リング4部作としてではなく、単発の「ワルキューレ」としての完結感をより出すために、しつこいほどの描写が必要であったのだろう。
ヴォータンが何故、指輪に手を直接出せず、そのためにウェルズング族を生まなくてはならなかったことや、指輪にかけられた愛を断念せざるを得ない宿命などが、単発ではなかなかわかりにくい。
Walkure1_06_2  どうしてヴォータンは愛するジークムントから手を引かざるを得なくなったのか、その点をもっともわかりやすくするためには、結婚をつかさどる女神フリッカを重要な役回りとして扱わざるをえなくなったのであろう。
前回書いたとおり、フリッカが最初から最後まで登場するし、フンディンクまでちょろちょろ出てくる。
 それ以外にもト書きにない、人物や場面がいくつも見られることになったが、これはこれでいいのかもしれないと思った。

ただそれは、ワーグナーが網の目のようにはりめぐらした精妙なライトモティーフを軽視することにもつながった。音楽と劇(舞台)が乖離してしまうことだ。
ワーグナーはしつこいまでに、登場人物や物や感情にまで主題を与えたが、そこに登場しない人物までには何も用意していない。ト書きにない人物や事象は、音楽だけから見れば場違いなのである。
劇の仕立てからすれば、何の矛盾もないことではあるから難しいものだ。

ただ、リングの中で重要な要素、剣や槍といったものが軽々しく扱われていたように思う。ジークムントが危急存亡の嘆きを発し、武器を求めてる場面、剣(ノートゥンク)の主題が高らかに鳴るのに、ノートゥンクは暗闇にむなしくささったままで無視されてしまう。
こうした矛盾がいたるところに散見。
ブリュンヒルデがヴォータンに、その槍で一突きにしてくれ、と歌っても、ヴォータンは手ぶらだったり・・・・・。


前回と異なる場面でいうと、ジークムントの死の場面。
前回は、ヴォータンはジークムントに手を差し延べ、拒絶され、終わったが、今回はそのあとジークムントはヴォータンの胸に倒れこみひしと抱き合う。
これだよ、私の好むお涙シーンのひとつは
ちなみに、きょうの涙ポロリの場面は、①ジークムントの死の告知の場面でのジークムントとブリュンヒルデの感動的なやりとり。(成田さん、横山さん、素晴らしいし、飯守先生の指揮が神々しかった)、②ジークムントの死、③ジークリンデがジークフリートの受胎を告げられ感謝をささげる場面(橋爪さん、素適すぎ)、④ヴォータンの告別、魔の炎の音楽でのオーケストラの圧倒的な盛上り(手を握り締めてしもうたわ)。⑤わかっちゃいたけど、少女ブリュンヒルデが登場してヴォータンに抱きつく、そして小さく手を振るんだもの、やめていただきたいです・・・・(涙)

今日はそこら中で、グスグスと鼻をすする音がしておった。

Walkure1_09 やっぱり、ワルキューレはリング争奪ではなくて、「愛のドラマ」なんだわな。
その愛は、夫婦・父息子・父娘・兄妹・恋人・祖父孫・叔母甥・・・・・。
ゆえに、「ニーベルングの指環」でありながら、リングが不在のドラマでもあるわけだ。
幕間で、二期会関係者に観劇中のある女性が、「あの井戸は、なんざます??」とまともに聞いていた。関係者の方、答えに窮して、「実はプロンクターボックスなんです」・・・・、女性は「はははっ、そうなの。で、何?」、「こちらのパンフレットに演出の意図が書かれておりますので・・・・」などというやり取りが行なわれていたのを盗み聞きしていたワタシ。
 私は、あの井戸は、運命をつかさどるモニュメントで、ここに登場する人物たちを惑わし、導くいわば「リング」ではないかと、想像する次第・・・・・。

     ジークムント:成田勝美     ジークリンデ:橋爪ゆか
    ヴォータン :小森輝彦     ブリュンヒルデ:横山恵子

    フンディンク:長谷川顯     フリッカ  :小山由美
    その他、ワルキューレ

  飯守泰次郎 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
              演出:ジョエル・ローウェルス
                   (2008.2.23 文化会館)

今回の歌手陣も前回にもまして強力で、ほんとうに素晴らしい歌が聴けて超うれしい。
小山さんの、フリッカの圧倒的な存在感と声の表現力、そいて独語の確かさ。
独語でいえば、初めて接した小森さんのヴォータンが言葉と歌が完全に一体化した見事な発声で、声も前回の泉さんにも増して美しい。これからこの人のドイツものがおおいに楽しみ。ヴォータン役の聴かせどころである2幕の長大なモノローグや、告別ではなかなかに味のある歌が聴けたし、フンディンクに蔑みの一撃を加える「Geh!」では、予想に反しソット・ヴォーチェで、むしろ凄みを感じさせてくれた。私は、ホッターやマッキンタイアと同じようなこうした歌い口のほうが好きである。
こちらが小森さんのHP
 そして、感心したのが橋爪さんの没頭感あふれるジークリンデ。前向きな声の力に溢れたすばらしい歌唱に思った。
お馴染みの成田さんのジークムントは順当な出来栄え。
長谷川さんの、安定感抜群のフンディング、頭も衣装も小鉄さんと全然違ってる。
上も下も、名前がとても親しみある、横山さんのブリュンヒルデ、以前シュトラウスの「エジプトのヘレナ」を聴いたときより、声に力強さと存在感が加わり、今後ますます国内のドラマテック・ソプラノの第1人者になるのでは。そして、こちらが横山さんのHP

8人のワルキューレたち、今回よく観察すると、衣装も羽も微妙に異なる。
オッサンとしては、何故かお一人(たぶんヘルムヴィーゲ)、胸の大きく開いた衣装でちょっと違和感が・・・・・。

飯守先生の指揮は、オケの時に空転する熱演(特に金管)はあったものの、相変わらずワーグナーの真髄をとらえて離さない熱演。
とりわけ素晴らしかったのが、ヴォータンの告別における高揚感。
そして、今回痛感したのが、場と場をつなぐ移ろい行く音楽。ワーグナーが巧に書いた主題の移り変わりを実に見事に表現していたように思う。
2幕、ヴォータンとブリュンヒルデの場面から、ジークムンとジークリンデの逃避行の場面に切り替わる音楽の素晴らしさ。鳥肌が立つ思いだった。
今日は、幕が降りきるまでヒヤヒヤしたけれど、拍手は音楽が止んでから。
よかったよかった。

いやぁ、なんだかんだで、すっかり楽しんだワルキューレだった。
今回で10度目の観劇体験。次は、来年、新国だ!

Oyama1 ワーグナーに身も心も浸り、肉が食べたくなった。
違う日になってしまったかのように寒風吹くなか、上野の山を下り、アメ横近くの「肉の大山」へひとり向かい、酒を飲む。
ここは超安くて、肉料理はなんでもある。ステーキ肉のような「牛かつ」や「煮込み」でひとしきり飲んで、東京駅へ出ると、なんと総武本線が大幅遅れ、というか動いてない。
肉食った祟りか、ワーグナーの毒をもっと覚ませともいうのか?
家には11時過ぎにたどりついた・・・・・・。ち~ん。

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コメント

またまたこんにちは。昨日も良かったですね。キャストよって歌手の細かい動作とか、衣装も多少違っていたのかな?と思いました。そうそう、ヴォータンの「Geh!」の歌い方?って重要ポイントだと思うんですが、小森さんのほうがそこはホッターっぽくて良かった気がします。横山恵子さん(歌手のほう)は初めて見聞きしたのですがびっくりしました。素晴らしいです。
ところで、yokochanさんもカツを召し上がったのですね?私は休憩中に万世のカツサンド食べました。ハコが可愛いし美味しかったです。

投稿: naoping | 2008年2月24日 (日) 08時47分

naopingさん、こんにちは。
いやぁ、本当によかったです。
小森さんという歌手を発見した喜びも大ですし、横ちゃんも素晴らしい。
日本人歌手もすごいことになってきましたねぇ。
万世かつサンドはうまいですね!ビールと最高に合いますよ。
私の肉の大山は、店構えは、ちょいとB級ですが、肉の聖地でございました。

投稿: yokochan | 2008年2月24日 (日) 10時19分

2月23日(土)の公演に行きました。
正直、途中で何度帰ろうと思ったことか・・・

東フィル!!!あまりのボロボロな演奏にdown
飯守もアリアドネよりはましだったけれど、この程度ではねぇ・・・
歌手も一部を除いて一杯一杯って感じでしたし。
演出は単独と言うことで説明過多という感じなのは仕方ないかもしれませんが、ただ鬱陶しいだけ。

ただ、一つだけ良いことがありました。(^_-)
それは、来シーズンの新国のリング(オケ:東フィル)は行かない方が良いと分かったこと。scissors

投稿: さすらい人 | 2008年2月28日 (木) 08時06分

さすらい人さま、毎度どうもありがとうございます。
たしかに東フィルは、破綻が多すぎます。
まるで、2軍のような場合もあって普通のコンサートでも金管がコケまくることがしばしばあります。
一方で、もの凄く乗りまくる時もあって、実に不思議なオケだと思います。
東響の方が安定感では上かもしれません。

たしかに、新国リングは不安ですが、私は未消化になる可能性の演出も含めて、怖いもの見たさもあって行きたいですね。そうおっしゃらずに、行きましょうよ(笑)
まぁ、来年の話なのでどうなるかわかりませんし、チケットも手に入るか不明ですが・・・・。

投稿: yokochan | 2008年2月28日 (木) 23時45分

今晩は、ワルキューレはDVDで見たことがありますが。
本物はまだ観劇していません。ワーグナーは鑑賞する側も
気合を入れないといけない感じがしています。自分が
ベストな体調の時に観劇できたらいいなあと思って
います。

投稿: 風車(かざぐるま)2号 | 2008年2月29日 (金) 18時50分

風車(かざぐるま)2号さま、こんばんは。
DVDでお楽しみになれたのでしたら、是非、舞台で観劇してみてください。完全に音楽とドラマに飲まれてしまうこと請け合いです。強力なワーグナーの魔力にはまっていみるのも一興かと存じます(笑)

投稿: yokochan | 2008年3月 2日 (日) 00時14分

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ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」成田勝美(ジークムント)、長谷川顯(フンディング [続きを読む]

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