ブリテン 戦争レクイエム アルミンク/新日フィル
<UK-JAPAN2008>
連日のコンサート通いに対する後ろめたさもあって、せめてもの罪滅ぼしと、今朝は早起きして息子とサッカーにキャットボールにバトミントン。
当然野外だから、これがいけなかった。
暖かいけど、風の舞う今日。
クシャミ連発、鼻水タラ~リ、目は痒い。
こんな苛酷な状況で、錦糸町のトリフォニーホールへ向かう。
楽しみにしていた、ブリテンの戦争レクイエムを聴くために。
もうひとつ、難題は昨日聴いたシュナイト/神奈フィルの「田園」があまりに素晴らしかったので、いくら好きとはいえブリテンの深刻な音楽がまともに聴けるのか?ということ。
心配その1、花粉症はホールに入ってビールを飲んだらきれいサッパリ発症しなくなりました。
コンビニで買った大人ののど飴(シトラスジンジャー味)がまたよく効く。
それにしても、あのビール600円は高いぞ。グラス一杯だもんな・・・。
心配その2、最初の一音からすっかり、気分はブリテン。
昨日の「田園」も聴く人の心を癒す演奏だったが、ブリテンの平和を希求する心が生んだこの名作も祈りと哀悼に満ちたある意味癒しの音楽でもあるのだ。
約80分間、私は身じろぎせず、しっかりとこの素晴らしい音楽に聴き入った。
何度聴いても思うこの曲の重さ。
ラテン語の典礼としてのレクイエムに、早世の詩人オーウェンの生々しい反戦詩による独自のオラトリオ風な詩劇を混ぜ合わせた独創的な作品。
重くて、やりきれないし、反戦の詩が時に残虐であったりする。
でも最後の最後、リベラ・メで「ともに眠ろう」、「彼らを平和の中に憩わせたまえ・・・」と繰返し歌う場面で、すべては浄化されて音楽が祈りのうちに静かに閉じる。
この極めて感動的な最後の場面を目指して80分間集中できる。
今日も、ここで涙が溢れてきた。
音楽が終わって訪れた静寂。かなり長かった。相当、長かった。
レクイエムでは、フル・オーケストラとソプラノ独唱、合唱・児童合唱。
詩劇の場面では、室内オケとテノール・バリトンの独唱。
それぞれが交互に歌い演奏する。
最後のリベラ・メで両者が一体になり、祈りの音楽となる。
ソプラノ:ジェラルディン・マクグリーヴィー
テノール:ロバート・マーレイ バリトン:石野繁生
クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
栗友会合唱団
東京少年少女合唱団
(3月9日 トリフォニーホール)
どうしても、歴史的なブリテンの自演盤が耳にあるものだから、あれを前にしてはどんな演奏でも不利に聴こえる。
今日のアルミンクの果敢な挑戦は、響きが少しスリムで流麗にすぎるきらいはあったが、戦後世代の演奏として客観性もあり、素直に楽しめた。
汗だくになって曲に没頭するタイプじゃないから予想はできたことだけれど、もうすこし切実な響きも欲しかった気もするが贅沢かしら。
歌手は、テノールのマーレイが実によろしい。
英国テノールの伝統のうえにある人って感じで、きれいさと、没頭感とが競合していた。
出待ちで椅子に座っている時は丸くなっていて、頼りない雰囲気だけれど、歌いだすとすごかった。
すごいといえば、石野さん。去年の「ローエングリン」の伝令士で絶賛した人だけれど、今日もまた素晴らしい声を響かせてくれて、完全マークの日本人歌手の一人となった。
ソプラノのイギリス人歌手は、ちょっと声が届かなかったけれど真摯な歌いぶりがよい。
そして鍛え上げられた合唱の素晴らしさ。これはどこへ出しても恥ずかしくないくらいに立派すぎる。オケも薄口だけどうまい。打楽器の活躍は見ているだけでも楽しい。
こんないいコンサートなのに、客席は空席だらけ。6割くらいか。
おまけに字幕がなしで、対訳を見ようにも細かい字で見えない。(自慢じゃないけど、私はなしでも大丈夫だったけど)
これじゃみな寝てしまう。私の両脇の方々は、ほんとよくお休みになっていた。
チケットの高さや、曲の内容から予測はできたことだけに、主催者側にはもう少し工夫が欲しかったかも。
3月10日は、東京大空襲から63年。ホールのあるあたりも、未曾有の犠牲者がでた。
まだ63年しか経っていない事実。
私の生まれる十数年前の出来事。
繰り返してはならない過ちに、平和を祈る気分になった日曜。
千葉の駅に降り立ったら、駅頭で初老の紳士がこんなビラを配っていた。
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コメント
こんばんは。家庭サービスも大変ですな~。
いや、それにしてもよいコンサートでしたね。ちょっと値段高かったけど。それに予想はしてたけど、あの空席はもったいない感じがしました。寝ている人は多かった(たまにバタン!とか音がしました)けど、しっかり聴いていた人は何か手ごたえを感じていたと信じています。
投稿: naoping | 2008年3月10日 (月) 20時38分
>3月10日は、東京大空襲
忘れてはいけませんね。
投稿: edc | 2008年3月11日 (火) 18時07分
家庭サービスもマンネリ化するといけませんので、ほんと、大変ですわ。
あんな素晴らしいコンサートがあんなガラガラなんて。
お隣のお婆様なんて、最初の1分でカックンときて、怒りの日で少し起きて、あとはすべて前傾60度でした。
でも最後の場面は食い入るようにお聞きになってました。
あの音楽の深さは、誰しも揺り動かしてしまうものだと思いますね。すみトリは、今後、戦争レクイエムの演奏会数世界一になるかもしれません。客足を気にせずに何度もやって欲しいものです。
投稿: yokochan | 2008年3月11日 (火) 23時07分
euridiceさま、こんばんは。
風化しつつある過去。
ほんの数十年前なのですから、呆けた今の日本が怖いです。
戦争の恐怖は絶対に忘れてはいけませんね。
投稿: yokochan | 2008年3月11日 (火) 23時09分