神奈川フィルハーモニー演奏会 シュナイト指揮
神奈川フィルハーモニーの定期演奏会を聴く。
出張のため危ぶまれたが、春の嵐のような悪天候のなか、無理くりに時間調整してギリギリにみなとみらいホールへ。
こんな熱い気持ちになるのも、シュナイトさんの指揮が集中して聴けるのは神奈川フィルしかないこと。
おまけに回を重ね聴くたびに、神奈フィルの美質に魅入られてしまったこと。
すっかりこのコンビのファンになってしまった私。
はたして、昨晩もたいへんな名演が繰り広げられ、地味な演目ながら私を含む聴衆は、このコンビと合唱団がおりなす美しい世界に、食い入るように聴き入ってしまったものだ。
バレンボイムの演奏をもっていたはずだが、行方不明。
ショップには、ヨッフムやチェリビダッケ、リリンクのCDが出ているが、珍しい演目なので、真面目に聴いたのは今回初めて。
ブルックナー ミサ曲第3番 ヘ短調
S:平松 英子 Ms:竹本 節子
T:福井 敬 Br:福島 明也
ハンス=マルティン・シュナイト指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
神奈川フィルハーモニー合唱団
(3月14日 みなとみらいホール)
演目は、3曲あるブルックナーの若書きのミサ曲第3番の1曲。
70分あまりの曲ながら、これ一曲で勝負するシュナイトさん。祈りの音楽として、じっくりと受け止めて欲しいとの強い思いのあらわれではないだろうか。
ともかく美しい音楽であり、オーケストラの美音が際立った。
本格的な交響曲の作曲前ながら、どこをどう聴いてもブルックナーの響きがする。
独得のリズムに、永遠に続くかのような弦の刻み、オーケストラのユニゾン・・・・。
随所にそうした特徴が聴かれ、うれしくなってしまった。
合唱が終始歌い、ソロは控えめ。
テ・デウムのように、石田氏のヴァイオリン・ソロの活躍も多いが、ヴァイオリンとビオラのソロに管が優しく絡む場面など、オケの聴き所もたくさんある。
あれ、どこかで聴いたことがある。というシーンもいくつかあり、帰りの電車で解説を読むと第0番や第2番に引用されている旋律だった。
もっとも印象に残っているのが、ベネディクトゥス。
これぞまさに、私の大好きな1・2・6番あたりの緩徐楽章の楚々とした美しい世界。
アルプスの山々を見渡す野辺に咲く花々を思い起すかのような音楽に、私は陶然としてしまった。2番への引用もなされたこの章の、神奈川フィルの弦と、フルートの素晴らしさといったらなかった。
そして誠実極まりない合唱も掛け値なしに見事。
それに続く、アニュスデイも天上の音楽のように響きわたり、ホールが教会であるかのような安らぎに満ちた空間になってしまった。
合唱が歌い終え、最後に弦とオーボエが残り静かに曲を閉じた時、シュナイトさんは両手を胸の前に併せて、祈るようなポーズをとって静止した。
合唱もオケも、そして聴衆もまんじリともしない。
長いながい沈黙がホールをつつんだ・・・・。
またしても、素晴らしい演奏が刻みこまれた。
シュナイトさんのつくり出す響きは、ドイツ的で低音も豊かだが、全体の基調は明るい南ドイツ風のものに思う。
そこに神奈川フィルのきれいな響きが加味されるので、独得の雰囲気が醸し出される。
専属合唱団もアマチュアとはとうてい思えない素晴らしさ。各声部のバランスがとてもいい。豪華な独唱陣ももったいないくらいの出来栄え。なかでもソプラノの平松さんの清潔な歌唱がとてもよかった。
いつもより早くはじまったお馴染みのアフターコンサート反省会でも、絶讃のコンサート。
楽しいひと時を過せました。
今年は、全国でシュナイトさんのコンサートが聴ける。
横浜はもちろん、札響(田園)、仙フィル(グレイト!!)などなど。いやはや困ったぞ。
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コメント
昨日からとても良い時間が過ぎています。演奏会のおかげです。本当、CDにしてほしいですねぇ…。
投稿: Schweizer_Musik | 2008年3月15日 (土) 19時00分
ほんとにいい演奏会でした。
心にとどく演奏とはああいった演奏なんでしょうね。
つまんないCDばっかり作らないで、あのような名演のCDに残すべきですね。
投稿: yokochan | 2008年3月16日 (日) 00時52分