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2008年3月 7日 (金)

プッチーニ 「トスカ」 マゼール指揮

Tosca_maazel プッチーニ(1858~1924)の生誕150年の今年。
ちょっとずるいけれど、昨年分も入れて全作品制覇を目指してます。

オペラ作品は、全部で10作品。(三部作を分けると12作品)
これまで、「マノン・レスコー」「ラ・ボエーム」「西部の娘」「ラ・ロンディーヌ」を取上げた。
ヴェルディの延長としてではなく、マーラーやシェーンベルク、そしてR・シュトラウスと同時代人としてとらえて聴くと、プッチーニのあらたな面が見えてくる。
ともかく、オーケストレーションの巧みさの中に、斬新な響きや、甘味な歌がたっぷり盛り込まれている。それが完璧な構成の中に、見事なドラマを築きあげているんだ。
天才としかいいようがない。
モーツァルトのレクィエムが、弟子の補筆とのギャップがあまりに大きいのと同じに、「トゥーランドット」のリューの死以降の出来栄えの格差はいかんとも仕方がない。

Photoトスカ」は、その舞台がローマの名所・旧跡で色どられていて、さながらローマ観光をする思いである。
だから、演出もその装置に金がかかるだろう。
でも人気作品だから、何度でも上演できるから、減価償却もバッチリ終えることもできるだろうな。
読替えや、過激な舞台に仕立てにくいし。

こちらは、第1幕の舞台「サンタ・アンドレア・デェラ・ヴァッレ教会」に似ていると思われる教会の内部。(画像がなかったのであります)
こんな聖なる場所で、トスカとカヴァラドッシは愛を囁きあい、嫉妬に燃えてしまう。
悪漢スカルピアは、いやらしい妄想をテ・デウムとともに歌っちゃうし。
このテ・デウムは、最高に素晴らしい。ワタシ歌っちゃいますぜ。

Photo_2 第2幕は、ファルネーゼ宮殿。
ミケランジェロもたずさわった豪華な宮殿は、今はフランス大使館らしい。
ここの一室で、バッド・ガイ、スカルピアは「ムフフ・・」といわんばかりに、いやらしい思いでいる。
窓の外からは、階下で歌うトスカの声が聞こえる。
CDによっては、その窓をガシャンと閉める音がリアルに入っていて、妙にうれしい。
この敵の陣地で、カヴァラドッシは破れかぶれに「ヴィットーリーア~」と高らかに叫んでしまうんだ。
絶望に捕らわれるトスカが、涙ながらに歌う「歌に生き、愛に生き・・・」は、息詰まる劇的な展開の中に涙誘う素晴らしいアリア。
そして、トスカはナイフで、「ふっふっふ・・・」とばかりに迫って来た悪代官をグサリと。

3 第3幕は、サンタンジェロ城。ローマ皇帝の霊廟として作られた。トスカの時代には、牢獄だった。
幕開きはローマの清々しい朝で、絵のような音楽だ。
ここで、カヴァラドッシは死を覚悟し、嘆くがトスカの登場とともに甘い二重唱を歌って、希望を取り戻す。
 ところが、悪代官の方が1枚上手だった。
目の前で、カヴァラドッシが銃殺され、「いい演技ねぇ」なんて言ってたトスカ。
ようやく気が付き、「スカルピア!神の御前で~」と叫んで、城壁から身をひるがえす・・・・・。3人全部死んじまう。
大きなカバリエが、どッカーンと落ちる映像が忘れられない。
このシーンが、美しかったのは、カヴァイヴァンスカですな。

   トスカ :ビルギット・ニルソン   カヴァラドッシ:フランコ・コレルリ
   スカルピア:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
   アンジェロッティ:シルヴィオ・マイオニカ スポレッタ:ピエロ・デ・パルマ

 ロリン・マゼール指揮  ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団/合唱団
                               (1966年ローマ)

このマゼール盤、数あるトスカの演奏のなかでも、もっともユニークな演奏だと思う。
主役3人と指揮者のなかで、イタリア人はコレルリだけ。
あとは、ワーグナーでも上演できそうな3人。
ニルソンが、ワーグナーばかりでなく、イタリアオペラのドラマティックな役を得意にしたのは周知のとおりだが、歌姫トスカは、可憐さや嫉妬に狂ういじらしさ、恋人の拷問に耐えられなくなってしまうか弱さも必要な役柄だ。
ニルソンは、そんなイメージとはちょっと違って聴こえる。
スカルピアと対等に張り合い、カヴァラドッシに負けちゃいけないと言わんばかりの強さを感じる。どうもこれは、私が彼女のブリュンヒルデやイゾルデを聴きすぎで、その声のイメージを引きずりすぎているからなのだろう。それとイタリア語がちょっと・・・。
そんなイメージを払拭すれば、声は冷凛として透明かつ輝かしく、聴き応え十分。

F=ディースカウは、予想以上にサマになっている。
まさに頭脳的・確信犯的な悪漢になりきっていて、言葉ひとつひとつに込めたドラマはもの凄く説得力がある。ニルソンと違って、あまりにも明晰に発声するイタリア語は憎々しい。
ゴッピと違った意味で、「悪いやっちゃ!」と思わせるFDのスカルピア。
トスカとスカルピアの死闘はものスゴイ迫力。

この強烈な二人に挟まれて、意外やいつも粘っこく感じるコレルリが、実に爽やかでよい。
むしろ普通すぎて面白くないところが悲しい。
素晴らしいカヴァラドッシなのに。(カラスとゴッピと共演するカヴァラドッシが可愛そうなのとおんなじだ)

60年代のマゼールは、その個性も全開。
思い切り引っ張り、思い切りあっけなく。そんなマゼール独特の緩急が随所に聞かれる。
歌を邪魔せず、ドラマにそれが生きているのがこの時期のオペラ指揮者としてのマゼールのすごいところ。
そして、ローマのオケの水も滴るような鮮度の高い響き。
この時期のイタリアのオペラのオーケストラを聴く楽しみがいやでも味わえる。

それにしても、よく出来たオペラである。ワーグナー聴く間に、トスカ2回聴けちゃうし。

                 

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コメント

yokochanさま お早うございます

マゼールの「トスカ」大好きです
というか、私は、ヴァーグナー歌手が歌うイタリアオペラが好きなんですが~ 

プッチーニとヴェルディは時代が重なっているんですが、音楽はかなり違いますね、オケストレーションも、プッチーニの方がはるかに複雑ですね~。あのスコアからあんな音が出てくるのが不思議です。

先輩にイタリア語の専門家がいたんですが、F・ディースカウさんの「ファルスタッフ」を聴いてもらうと、「こんなのイタリア語じゃないわ」と厳しいお言葉をいただきました、爆~。

意外や意外、コレルリさんとニルソンさんの二重唱が良いんですよね~ 仲も良かったそうですよ、メトではよく喧嘩もしたようですが、爆~。

ミ(`w´)彡 

投稿: rudolf2006 | 2008年3月 8日 (土) 08時32分

rudolfさん、こんにちは。
私も好きです、ワーグナー系のイタリアもの。
ドイツ語歌唱だともっと楽しいです(笑)
F=ディースカウは、Rを巻き舌で強く発声するものですから、そのような評価をいただいてしまうんでしょうね。
コレルリとニルソンは、アイーダやトゥーランドットもありますね。仲がよかったんですか!
いっそ、コレルリのワーグナーが聴いてみたかってですねぇ~

投稿: yokochan | 2008年3月 8日 (土) 11時00分

こんにちは。
このオペラを映像や実演で見たことがないのですが、ご紹介の写真は重厚な歴史の雰囲気がありますね。このようにオカネのかかった舞台を観てみたいものです(笑)。
それにしてもこの演奏のオケは際立っていますね。

投稿: 吉田 | 2010年2月20日 (土) 13時35分

吉田さん、こんにちは。
トスカは、ローマの史跡案内みたいな感じで、その設定のアイデアに感心してしまいます。
まず、行くことはないと思いますが(笑)、オペラでその雰囲気を味わいたいものですね。
マゼールは、このあたりから70年代がすごかったように思います。

投稿: yokochan | 2010年2月21日 (日) 12時25分

CBS、SONY-クラシカルへのプッチーニ-ツィクルスに、我らがローリンお爺様この『トスカ』は録音されませんでした。残念だったとは、思っております。スカラ座との『マノン-レスコー』も、同オペラハウスがセラフィン&カラス盤以来の録音でしたのに、あまり騒がれませんでしたし、ザンピエリとドミンゴにポンスとの『西部の娘』も、国内盤CD出ましたでしょうか。大脱線甚だしいのですけれども、門茂男-著の『ザ-プロレス365』なる、プロレス業界の内幕本を読んだ際に、日本プロレスの父力道山が、このオペラ第1幕の舞台となった教会の前で、和服姿で万歳している写真が掲載されておりました。来日レスラーの招聘交渉先はアメリカの筈ですから、1960年のローマ五輪の際にイタリアに飛び日本選手団を激励した際か、亡くなる半年前の再婚のおりの世界旅行の何れかで、ありましょう。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年2月15日 (土) 07時39分

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プッチーニ「トスカ」 マゼール指揮 聖チェチリア音楽院管弦楽団・合唱団 島田雅彦の「ひなびたごちそう」を読む。 日本全国世界各国をまわる食の旅。これだけであればただの食べ歩き本であるが、著者は自宅に帰るや否やすぐに実行する。 新しい料理を家で作ることができたとき、喜びは倍増する。自分のレシピが増える楽しみである。 そのなかからひとつご紹介する。 「大根の皮の即席タクアン」 1.大根の皮を切手大に切り、醤油と紹興酒(ウチでは日本酒にした)に適当な時間漬ける。 早速... [続きを読む]

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