マーラー 交響曲「大地の歌」 バーンスタイン指揮
横浜の港町の風情を彩っていた「東西上屋倉庫」が解体されている。
土曜の県民ホールへの道すがら撮影。
戦後、保税倉庫として活躍した建物は、引込み線が残っていたりで、風情があった。
開港150周年の整備計画で公園化してしまうらしい。
確かに、海への眺望はよくなるけれど・・・・。
春は出会いと別れの季節。
ことに3月は、別れの景色が濃厚だ。
学校で、会社で、それぞれ旅立ちがあるから。
マーラーの「大地の歌」は、こんなときに、しんみりと聴くのもいい。
この曲は、高校生の時に初めて聴いた。
テノールの奇数楽章ばかりがやたらに気に入った。
詩の内容はあまり気にせず、ホルンのかっこいい出だしの1楽章を何度も聴き、歌いもした。
そして初めて買った「大地の歌」のレコードが、バーンスタインとイスラエル・フィルのもので、ニューヨークフィルとの来日記念盤でもあったように思う。
ちなみに、その来日公演はブーレーズが音楽監督時代だったので、二人の指揮者兼作曲家に伴なわれて行なわれた。
バーンスタインのチケットは買えなかったので、私はブーレーズを聴いた。
演目は、なんと「イタリア」に「マイスタージンガー」「ペトルーシカ」という、今思えばすごいプログラムだった。客席にバーンスタインもいた。
そのバーンスタインは、マーラーの5番と「エロイカ」をメインとする二つのプログラムだったから、こちらはもったいないことをしたもんだ。
さらに余談ながら、イスラエル・フィルとのマーラー第9が私の唯一で最後のバーンスタイン体験で、拍手に応え、一人コートを肩に羽織って出てきた、ユダヤ人司祭のような風貌があまりに印象的だった・・・・・。
さて、「大地の歌」の真髄を味わうのは、そんな先でなく、同時期のカラヤンのライブをエアチェックし、このレコードと同じルネ・コロとクリスタ・ルートヴィヒの歌で聴いてから。
ここでは、「告別」に目覚めてしまったのだ。
あの長大で静的な楽章が、Ewig・・・・と繰り返されて余韻を残しながら終わる。
静寂ののち、観客の一人がブラボと、呟く。これが実にきれいに決まって、「ほう、本場ではこういう音楽をじっくりと聴いて静寂も楽しむのか・・」と大いに感心したものだった。
そして手持ちのこのバーンスタイン盤を、対訳片手に徹底的に聴き込んだわけである。
あのホルンの出だしの音楽は、「生は暗く、死もまた暗い~Dunkel ist das Leben, ist das Tod」というあまりに印象的な結びがあること発見し驚いた。
このフレーズを高校生の私は何度歌ったことだろう。
そしてなんといっても「告別」の王維&孟浩然の厭世的な詩は、私を大きく揺り動かした。
「疲れた人々は、忘れはてた幸福と青春を、眠りの中にふたたび知るために家路をたどる」・・・・・、「友よ、わたしは君のそばで、この夕べの美しさを味わいたい。・・・」
やってきた友は語る、「汝、我が友よ。この世のしわわせは私には与えられなかった。私はどこへゆくのだ」「故郷にむかってさまよい歩こう」
「愛する大地にふたたび春がくれば、いたるところに花は咲き、緑はふたたび栄えるだろう。いたるところ永遠に、遠いはてまで輝くだろう、永遠に・・・・・・」
こうした詩につけたマーラーの音楽をなんと例えたらよいのだろうか。
先日観た「ばらの騎士」の音楽や登場人物が背負う「時の経過」のもつ甘味なまでの残酷さ、これに気付いたときの悲しみとともに、それを受容した時に見える明るく澄んだ心情。
これらと同じものをこのマーラーの音楽にも感じる。
演出家ホモキが描いたような、意外や明るい帰結がそこにあるのではなかろうか・・・。 レコードは音が薄っぺらくて最悪だったが、CDでは少し改善された。
コロの歌もいいが、ここではルートヴィヒの歌がまったく素晴らしい。
気持ちのこもった情感豊かな歌唱は、この曲の最高の歌だと思う。
バーンスタインもライブらしく、尻上がりに調子を上げてゆき、告別では唸りをあげてイスラエルフィルから情念に満ちたサウンドを引き出している。
しっかし、すごい音楽だな。
このあと、あの第9を書いてしまうんだもの。
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コメント
yokochanさま お早うございます
バーンスタイン・ニューヨーク・フィルハーモニックの来日公演 行きました。モツアルトのピアノコンチェルト第25番、マーラーの5番のプロでした。

どちらも良かったです。
終演後、ちゃんちゃんこを来ているバーンスタインにサインと握手をしてもらいました
イスラエルフィルとのマーラーの9番も行きました。
「大地の歌」は、昔ディースカウと録音したもの、良く聴いていました。ルートヴィッヒさん盤は、まだ聴いていないような~
ミ(`w´)彡
投稿: rudolf2006 | 2008年3月27日 (木) 08時57分
こんにちは。
高校生のとき、マーラーは全然知りませんでした。
その数年後ぐらいでしょうか、マーラー狂とも言えるような若い人が増えたのではないでしょうか。私はマーラーしか聴きませんなんて、公言する友人、知人が複数いました。それでも私はマーラーに興味がなかったです^^;;
「巨人」ぐらいは聴いて、けっこう好きでしたけど。
ケン・ラッセルの映画、おもしろかったです。
>このフレーズを高校生の私は何度歌ったことだろう。
耳に残るフレーズですね。詩を知ればなおさら・・
毎度ですが、TBしますので、よろしくお願いします。
投稿: edc | 2008年3月27日 (木) 09時58分
rudolfさん、こんばんは。
あのニューヨークフィルの演奏会に行かれたのですね。
バーンスタインに行けず残念でしたが、ブーレーズの不思議なプログラムを味わえてよかったです。
でも、バーンスタインのサインはうらやましい・・・。
このイスラエル盤はFDとのウィーン盤と別もののように濃いですよ。
投稿: yokochan | 2008年3月28日 (金) 00時24分
euridiceさん、こんばんは。
TBありがとうございます。
高校生の頃はさほどではなかったのですが、マーラーは、大学から社会人にかけてやたらに聴きました。
このCDの映像版を私もみました。コロがともかく若いですね。
そして、ホフマンのこの曲の正規録音がないのが残念です。ジュリーニ・トロヤノスいずれも物故してしまいましたね。
投稿: yokochan | 2008年3月28日 (金) 00時30分
このディスク、ジョン-マックルーアがプロデュースしたセッション録音にも拘わらず、演奏に録音共に、日本での評価は今一つだったようですね。
愚生もDecca原盤のウィーン-フィルとの録音しか持っておりませんが、このCBS盤はカワセミの中国画‥でしょうか‥の美しいジャケット-デザインに目を奪われた覚えがございます。DGへのマーラー-ツィクルスは、この曲と『第8』が未収録に終わりましたので、このイスラエル-フィルとの再録も、どのような解釈なのかな‥との興味はございます。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月18日 (土) 10時26分
レコードで出たとき、即、買いましたが、録音がヴェール1枚かかっているようで、ピリッとしませんでした。
その後のCD化は別物のようで、やはりこの懐かしいジャケットとともに、若き日々の想いをしっかり踏襲できるようになりました。
投稿: yokochan | 2019年5月20日 (月) 08時24分