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2008年4月 6日 (日)

ブラームス ドイツ・レクイエム シュナイト指揮

Schneidt_deutsches_requiem

4月3日は、ブラームスの命日だったそうな。
出張先の車の中で聴いたFM放送で知り、その放送では、ウラッハのクラリネット五重奏曲を流していた。
車を運転しながら、聴き入ってしまったけれど、あまりのロマンチックな泣きの演奏に、かえって辛い気分になってしまった。
名演だけれど、いま、このシテュエーションでは違うなって演奏ってある。
天に唾を吐くような思いだったが、ウラッハとウィーンの演奏は、まさにそう聴こえた。

ブラームスの音楽の聴き方が、曲にもよるがだんだんと変貌してきているように思う。
フルトヴェングラーやワルター、バーンスタインのようなロマン派的な演奏や、カラヤンのような響きを重視した演奏、ケンペ、ベーム、ザンデルリンクのようにカッチリした演奏。
これらも大いに好んで聴いているが、歌謡性もあってまろやかで豊かな詩情や歌に満ちたブラームスに、私は惹かれることが多い。

こんなことを長々と書いてきたのも、今日聴いたシュナイト師のドイツ・レクイエムがまさに、そうしたブラームスだったから。

         ブラームス    ドイツ・レクイエム

          S:平松英子    Br:トーマス・バウアー

    ハンス=マルティン・シュナイト指揮 シュナイト・バッハ管弦楽団
                          コンサートマスター:石田泰尚
                                                                      シュナイト・バッハ合唱団
                           (4月5日@オペラシティ)
   

Schneidt_deutsches_requiem2 昨年1月に、神奈川フィル定期で、シュナイト師のドイツ・レクイエムは聴いていて、その南ドイツ的な響きと精緻な音楽に感激したものだったが、今回はそれを上回る完成度で、75分あまり縛りつけられたように聴き入ることとなった。

こうした渋い演目となると、聴衆も心地よく眠りの境地へいざなわれてしまうもので、その対策としての飴やガムを口に運ぶガサガサ音が発生して気分を害してしまうのだが、今日はそれが皆無。
満席のホールの観衆は、宗教的な儀式に参列しているかのように、まんじりともせずに集中していた。
それゆえか、咳をする方が、やたら目立ってしまうことに・・・・。

この曲の試金石ともいえるような冒頭の静かな出だしから、慈しむような優しさに満ちていた。
そして、合唱がマタイ伝の一節「悲しんでいる人たちは幸いである・・・・・」と歌い始めると、もう私は感動で胸が一杯になってしまった。
ティンパニの痛打も全曲に渡って極めて印象的で、シュナイト師は、低音を時おり煽ったりして、充分響かせることに心を砕いていた。
第3曲のバリトンは、若いバウアー。この人の美しくも甘さをたたえた声は実に魅力的で、その誠実な歌は、宗教作品やリートにぴったり。
経歴をみると、レーゲンスブルクの聖歌隊の出身で、ここでシュナイト師との接点があったのであろう。
同じように、第5曲で清潔で天国的な歌声をホール一杯に響かせてくれた平松英子さんも、シュナイト師に師事したひとり。

このように、歌手も神奈川フィルが主体のオーケストラも、有志の合唱団も、すべてがシュナイト師を奉じて集まり、一丸となっていて、その絆というか、結びつきが作品の背景にある宗教心などをも越えてしまった音楽する喜びに到達していたように感じる。
それは、われわれ聴衆にも伝わってきて、こんな渋い音楽なのに、時おりブラームスらしい木管の優しい合いの手などを見つけては、微笑みさえ浮かべてしまう自分なのであった。

この作品のクライマックスであろう大規模なフーガを内包する、第3曲と第6曲が素晴らしかったのは当然として、優しさに満ちた第4曲と第5曲。
慰めに満ちた終曲。ハープのゆるやかなアルペッジョに伴なわれて静かに曲を閉じたとき、祈るようなシュナイト師の後姿を見つめながら、われわれ聴衆は拍手もなくじっと佇むのみであった。

「音楽の幸せ」ここに尽きる。

ライブ録音もなされていたので、そちらも楽しみ。
是非、多くの方に聴いていただきたい。

アフターコンサートは、新宿3丁目の素晴らしくも味わいゆたかな居酒屋の名店にご案内いただき、音楽の余韻を楽しみながら、おいしい酒と肴をいただきました。
みなさん、ありがとうございました。

 「ドイツ・レクイエム」自己リンク

 シュナイト/神奈川フィル
 尾高忠明/札幌交響楽団



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コメント

ほんとうに素晴らしい演奏会でした。
あれ以来まだ頭の中でこの曲が鳴っています。
出だしの厳かな優しさ、2楽章の重い響き、3楽章の大フーガ、4楽章の優しい天井の響き、どれも今は愛おしくて仕方がないです。
といっても誰のCDも聴く気にはならず、あの時の音が鮮明によみがえってきます。
あのアフターコンサートのあと、電車の中でプログラムの大役を読みながらまた涙がでそうになったり。
ほんとうに素晴らしい演奏会でした。

投稿: yurikamome122 | 2008年4月 8日 (火) 18時09分

yurikamomeさん、私もじわじわと感動が後から沸き起こってます!
この桂曲が、おいそれと聴けなくなってしまった、またもや罪な演奏を味わってしまいましたね。
来春のロ短調ミサまで続く、このコンビの奇跡の名演に、同じことが次々と起こってしまうのでしょうか。
封印シリーズであります。

投稿: yokochan | 2008年4月 8日 (火) 23時27分

私も友人が合唱団で参加していたので、聴きに行きました。
素晴らしい演奏でしたね( ^ω^ )
出だしから鳥肌が立ちました。
シュナイト氏は、この曲の演奏の際に大切な方の死に面した経験があるそうで、思い入れもひとしおの曲なのだそうです。
最後はほんとうに深く頭を垂れて、長く長く祈られていました。
ちょうど見える位置にいたのですが、つられて涙が止まりませんでした。
ロ短調もまた聴きに行きたいです。

投稿: るかめ | 2008年9月30日 (火) 01時35分

るかめさま、はじめまして。
コメントありがとうございました。
シュナイトさんの宗教曲は、ご自身が篤信家だけあって、とても説得力がありますね。
同じ演奏で共有できた感激も、シュナイトさんの思いを受け止めたとっても説得力あるものだと思います。
神奈川フィルの会員までなってしまいましたが、宗教曲以外でも、音楽への愛情と祈りを感じる演奏ばかりです。
 10月に、ブルックナーの7番、そして来年のロ短調、私も行きます。楽しみですね。

投稿: yokochan | 2008年9月30日 (火) 23時20分

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シュナイトバッハ合唱団/管弦楽団 ブラームス/ドイツ・レクイエム 作品45 2008年04月05日(土) 16:00 開演 東京オペラシティコンサートホール    指揮:ハンス=マルティン・シュナイト  ソプラノ:平松英子 バリトン:トーマス・バウアー  ブラームス/ドイツ・レクイエム作品45   怒濤の神奈川フィル月間も後半に突入、今回は今年から神奈川フィルが参加しているシュナイト・バッハ合唱団の「ドイツ・レクイエム」でした。  なんと優しいひとときが過ごされた... [続きを読む]

受信: 2008年4月 8日 (火) 18時10分

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