ベルリオーズ 幻想交響曲 ハイティンク指揮
曇り→雨→晴が短い周期で繰り替えされる毎日。
4月は、ただでさえ忙しいし、雨を思うと新調の服(私はここ数年なしだが、肉体は成長中)もなかなか取り出しにくいし、何を着ていいかわからない日々が続く。
春は気まぐれで、ややこしい。
六本木ヒルズのエントランスの花のデコレーション。
色のバリエーションは4種類くらいあった。金が掛かってますねぇ。
ベルリオーズの「幻想交響曲」を久しぶりに取り出してみよう。
かわいいフレンチ・ソプラノ、プティボンに浮かれてしまい、彼女の歌が心の大半を占めてしまうここ数日。
そんな日々に、一応フランス音楽のジャンルであろうベルリオーズを聴く気分に。
以前も記したけれど、私は「幻想」フェチでもあります。誰しもあるかもしれない、特定曲のフェチ。
広義では、ワーグナーや英国もの、アバドなんかがそうだけれど、曲に関しては、この「幻想」、「海」、「未完成」、「ロマンテック」、「フランク ニ短調」、「ラフマニノフ第2交響曲」、「エルガー1番」・・・・・。
かつて、毎日「幻想」を聴き続けたことがある。ほぼ1ヶ月。
家族からはクレームが相次ぎ、それを境に夜間はヘッドホン試聴に甘んずることとなったし、だんだんと夢まで見るようになった・・・・・。
ベルリオーズとワーグナーを交互に聴きまくると、精神は宙をさまよい、我がおつむは夢想にかられ、白馬の騎士を目指してドンキホーテさながらとなってしまうであろう。
そうならない良薬は、私にとっては、英国音楽であり、シュトラウスの洒脱なオペラの数々なのだ。
スコアを見ながらこの幻想を聴くと、ベートーヴェンやシューベルトのすぐ後に書かれたとは到底思えない音符の数とその氾濫ぶりに驚く。
オーケストラの各奏者ってこんなすごいのを弾いているんだ!とつくづく感心したもんだ。
そこに熱狂を吹き込むこともベルリオーズの演奏の典型だが、その楽譜をあるがままに交響曲としてのバランスと構成をしっかりと再現したのが、ハイティンクとウィーン・フィルの演奏だ。
79年、ハイティンクがウィーン・フィルと初めて録音をしたのも、この1枚。
それまで、何度も共演し、相思相愛の関係にあったコンビだが、契約の関係で実現しなかった。その後このコンビは、ブルックナーやブラームスの名録音をなし、日本にもやってきた。
オーケストラの個性を優先し、そこに乗りつつも、重心の低いがっちりした枠組をつくりあげ、柔らかな弦主体の歌心をその上に載せる。
そんなハイティンクの個性が、優美なウィーンフィルと見事に結びついた「幻想」に思う。
ゆったりと始まり夢を徐々に開示してゆく雰囲気の1楽章、ポルタメントを多用し、ウィンナワルツのような2楽章、ウィーンの管の音色の素晴らしさ満載で、かつ弦楽器の延々と続く伸びやかな歌が素適な3楽章。少しもうるさくない音楽的な4楽章。着実な歩みで、圧倒的なクライマックスを迎える終楽章。
数ある「幻想交響曲」のなかでも好きな1枚、ハイティンク盤である。
あと好きなのは、アバド、ミンコフスキ、モントゥー(ハンブルク盤)、ミュンシュ(新旧)、ミュンフン、ヤンソンス・・・・などなど。でもその他もすべていいなぁ~。
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コメント
こんにちは。
ハイティンクとVPOの「幻想」、けっこう昔に聴いたきりですが、よく覚えています。
特に2楽章のハープが印象的です。あのハープは、いままで聴いた「幻想」のなかでも私的にはトップクラスです。
当時はハイティンクがロンドンに録音するのは珍しかったので覚えているのかも知れません。
投稿: 吉田 | 2008年4月19日 (土) 17時11分
吉田さん、こんばんは。
ハイティンクらしい真面目さがありますが、目覚しいロンドンの録音とウィーンフィルの美しさが実に良いです。
2楽章は優美ですよね。
ハープは2楽章を終えると、この曲では登場しないところがまた面白い音楽でもあります。
かつてのロンドン=デッカのレコードは、いい録音ばかりでしたね。
投稿: yokochan | 2008年4月19日 (土) 23時35分
今日は。
ベルリオーズは昔は虫が好かない作曲家の最右翼でした。好きな女優さんをストーカーみたいに追いかけかましたり、幻想交響曲の終楽章で彼女を魔女にしたり。自己陶酔的で独りよがりで嫌な奴だと思っていました。曲の良し悪し以前に人間として好きになれなかったのですね。それが昨年あたりから積極的に曲を聴くようになってトロイ人などは神々の黄昏のフランス版ではないかと思うほどベルリオーズを高く買うようになりました。人物と作品は別なものだと考えるようになったからかもしれません。ワーグナーだってライナーやセルだって人間としてはそうとう嫌な奴ですし(笑)そんなわけでレクイエムもファウストの業罰もテ・デウムも皆好きになりました。ところがいちばんポピュラーで人気のある幻想交響曲が分からない。ミュンシュ旧盤、ショルティ、マルティノン、インバル、バレンボイム&ベルリンなどできいたのですが、いまひとつしっくりこないのです。そんな私を救ってくれたのがミュンシュ新盤とガーディナー盤です。三十すぎてやっと幻想が楽しめるようになりました。特にミュンシュ新盤は凄いですね。長い間食わず嫌いしてきた自分がバカに思えてきます。次はyokochan様絶賛のハイティンクとアバドとそれからムーティやノリントンを聴いてみたいと思います。私もいっぱしの幻想フリークスになってしまうかもしれません(笑)
投稿: 越後のオックス | 2008年11月29日 (土) 16時53分
越後のオックスさん、こんばんは。
確かに、ベルリオーズは困った人ですねぇ。
ワーグナーとともに、変な人ほどスゴイ音楽を書くところがまた、困ったものです(笑)
ベルリオーズは、オペラはこれからで、トロイ人もCDや映像を持ってますが、楽しむ時間がありません。
オペラ以外は、大概を聴いており、最近はその抒情性に痺れております。
幻想も、3楽章に味わいを見出すようにありました。
越後のオックスさんも、ぜひ、幻想の世界へ!
はまると大変ですよ(笑)
投稿: yokochan | 2008年11月30日 (日) 01時10分