R・シュトラウス 「影のない女」 カラヤン指揮
静岡の居酒屋の名店「鹿島屋」にて、旬の「かつお」を食す。
「かつお」は大好物なのである。
肉厚の切り身は、食べ応え充分で、一口頬張れば、かつお特有のねっとりとした食感と、芳醇な味が楽しめる。
そして、そのあと純米酒を口に含めばもう・・・・・・・。
たまりませんなぁ。
先日、HMVをチェックしに覗いたら、長く見かけなかった、カラヤンのR・シュトラウス「影のない女」が復活して店頭に並んでいた。
「かつお」とともに大好きなオペラ。
しかも3890円也と嬉しい価格。(後で調べたら、ネットでうまく買うともっと安い!)
そくレジに直行。ついでに、尾高&札響のエルガーも手にして。
カラヤンは、正規録音として「影のない女」を残すことがなかったから、このウィーンライブは唯一のものとなる。
シュトラウスを得意にしたカラヤンが、録音したオペラは、「サロメ」「ばらの騎士」「アリアドネ」の3作に、同じライブ音源の「エレクトラ」と「影のない女」と意外に少ない。
オーケストラ曲なら豪奢に聴かせることに長けたカラヤンが、シュトラウスの後半生を飾ったオペラ作品の大半に手を出さなかったのもわかるような気がする。
新古典主義的な簡潔さと、地中海的な明晰さ・晴朗さといった要素が支配的な後半生の様式が、カラヤンに合うようで合わない。
ベームやクラウス、サヴァリッシュらとの個性の違いで言いえることでもあろうか・・・。
私のかつてな思い込みかもしれない。ダフネやカプリッチョあたりをやっていたら、すごく面白かったに違いない。
なんてことを思いつつ聴いたこの「影のない女」。
シュトラウス生誕100年の記念公演でもった、1964年6月11日、ウィーン国立歌劇場での公演は、きしくもカラヤンが、ウィーンと決裂して分かれてしまう最後の上演の一環ともなったらしい。
以降、1977年の歴史的な復活まで、カラヤンはこの劇場のピットに姿をあらわすことがなくなった。
以降のカラヤンのオペラ上演は、ザルツブルク音楽祭と、手兵のベルリン・フィルを初めてピットに入れることとなった、1967年から始まるのザルツブルク復活祭が中心となる。
「魔笛」にも似た錯綜する筋と荒唐無稽のお伽話、長大な内容で、慣習的なカットも施されることが多いが、カラヤンはより簡潔に、舞台転換もスピーディにするかのように、さらなるカットをなしている。大きなものでは、2幕の3場と5場のバラクの家での二つの場面がひとつにされている。
これはちょっといただけないと思ったが、当時の上演体制では、やむを得ない処置なのだろうか・・・・。
そんなこともあって、1幕63分・2幕53分・3幕55分、と短めの演奏時間。
早めのテンポで全編さっそうと進められるのがカラヤンらしいが、思い切り歌われるバラク夫妻の愛情こもった音楽や、2幕のエンディングのすさまじいまでの、猛烈きわまりない興奮。3幕の、皇后の葛藤を描く緊張感。そして最後、夫婦愛を唱和する二組で迎える幕切れの高揚感には、こちらも涙ちょちょぎれ状態だ。
オペラ指揮者としてのカラヤンの実力を見せ付けられる。
かなりライブな雰囲気に満ちているため、ちょこちょことミスもあるし、弦のウィーン風のポルタメントな弾き方が少し古さを感じる。カラヤンならもっと完璧であってしかるべきかもしれない。
皇帝 :ジェス・トーマス 皇后 :レオニー・リザネック
バラク:ヴァルター・ベリー バラクの妻:クリスタ・ルートヴィヒ
乳母 :グレイス・ホフマン 使者 :ヴァルター・クレッペル
若い男:フィリッツ・ヴンダーリヒ 鷹の声ほか:ルチア・ポップ
天の声:マルガリータ・リロヴァ
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団
演出:カラヤン
舞台装置:ギュンター・シュナイダー・ジームセン
(1964.6.11)モノラル録音
このライブの聴き所は、カラヤンもさることながら、充実した歌手陣にある。
見ていてため息のでるような顔ぶれ。
トーマスの皇帝は、カイルベルト盤よりヒロイックで、弧高の悲しみに満ちた歌唱で、トーマスらしい気品がまた素晴らしい。キングとコロと並んで最高の皇帝だ!
ルートヴィヒのバラクの妻は、もしかしてこれが唯一の音源かもしれない。これがまた超素晴らしい。ドラマテックな歌唱を要求される難役だが、皇后以上に、世俗に悩まなくてはならないその苦しみを、圧倒的な歌唱力でもって歌いのけている。
私生活でも夫役のベリーの暖か味ある歌唱とも共通した、人間味豊かな歌に感銘。
ちょい役で、ヴンダーリヒや若いポップの歌が聴けるのも、カラヤン治世下におけるスター主義の贅沢。
リザネックの聴きようによっては、ささくれたような歌は、確かに部分的に荒く感じるが、さすが、皇后にかけてはほかに右に出る歌手も見当たらない、役にのめり込んだ迫真ぶりがよい。後のベームや実演で観たドホナーニのハンブルク来日公演となんら変わらぬ歌いぶりが、息の長い歌手であることを思わせる。
聴きどころの、影を拒む「Ich will nichit!」は、後年のものの方が感銘が深いように思った。
それにしても、シュトラウスのファンタジーと人間愛に溢れた音楽は素晴らしい。
過去記事の自己リンク
サヴァリッシュのCD
ショルティのDVD&ドホナーニ/ハンブルク歌劇場来日公演
「影のない女」幻想曲 スウィトナー
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コメント
yokochanさま お早うございます
実は私も、カラヤンのこの「影のない女」購入しています~。まだブログには書けていないんですが~。
「影のない女」は、やはりベーム盤が好きなんですが、このカラヤン盤(カットはちょっとどうかとも思いますが)、なかなか面白いですよね~。
一番気に入ったのは、ルートヴィッヒさんのバラクの妻ですね、ベーム盤のニルソンさん、ゴルツさんに匹敵する素晴らしさですよね~。
キャストは豪華ですし、どうしてカラヤンは、シュトラウスの後期のオペラの録音を残さなかったのか、不思議ですね~。ひょっとすると、DGにはベーム盤があるという、それだけの理由なんでしょうか?
よく分かりません~
ミ(`w´)彡
投稿: rudolf2006 | 2008年4月22日 (火) 07時47分
rudolfさん、コメントありがとうございます。
カラヤン盤お持ちですか!
私は今回、初めて聴きましたが、カラヤンの指揮がちょっとよそよそしく感じるなかで、歌手陣がきわめて素晴らしく思えました。
中でもルートヴィヒとトーマスでした!!
カラヤンとシュトラウス、作曲者とのつながりはどうだったのでしょうね?
投稿: yokochan | 2008年4月23日 (水) 00時36分