レオンカヴァッロ 「五月の夜」 ヴァグリエリ指揮
三田の閑静な場所にある「網町三井倶楽部」。
三井家の迎賓館として、大正期に出来たルネサンス様式の館で、英国式庭園や宮殿のような内部はゴージャスそのもの。(らしい・・・)
三井系大企業を中心とした会社のお偉いさんや、その紹介がないと入れないみたい。
結婚式もできるし、本格フランス料理も食べれるようだ(正装でね)。
私のような人間には縁はございません。
事務所から歩いてこれる場所なので、たまにこのあたりを散策し、麻布あたりまで足を伸ばすことも多い。
歩いて覗き込むだけですが・・・・・。
ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857~1919)は、昨年が生誕150年だったが、見事に何もなし。
「パリアッチ」(道化師)だけが超メジャーな悲しい存在。セットで付いてまわる「カヴァレリア・ルスティカーナ」のマスカーニもご同様。
「カヴァ・パリ」なんて、いっしょくたに呼ばれちゃう。
偉大なヴェルディのあとは、プッチーニがしっかり人気・実力ともに次いでしまったが、このセット2人組も決して捨てたものでない(はずだ)。
マスカーニは、「友人フリッツ」や「イリス」などの美しいオペラが聴かれなくはないのに、レオンカヴァッロは、プッチーニに台本を提供しておきながら、断られ自分で書いた「ラ・ボエーム」をはじめとするオペラがいくつもあるようだが、それらは全く耳にすることができない。
有名なのは、歌曲の分野くらいか・・・・・。
さて、今日の首都圏は、低気圧と台風のダブル攻撃で、早朝から風雨が吹き乱れた。
午後は、風がすべて吹き飛ばしてくれたかのような晴天。
晴れた夜空には、きれいな月が美しく輝いている。まさに美しい5月の夜。
レオンカヴァッロの「5月の夜」は、テノールとオーケストラのための交響詩である。
レオンカヴァッロは、ナポリ生まれだが、本国で勉強してオペラを数曲書いてのち、フランスやイギリスで軽い音楽を書いたり演奏したりしていた。
その後、親族がいるエジプトに渡ったりしたが、民族戦争があり、イタリアに帰還し、マスカーニのカヴァレリアの成功を見て、一年発起して「パリアッチ」を作曲(1892)して大成功を収めた。その初演はなんと、トスカニーニなんだ。
さてさて、この「5月の夜」はパリ時代の1886年に書かれた。
原作は、フランス・ロマン派の詩人・作家の「アルフッド・ド・ミュッセ」の同名の詩。
ミュッセは、かのジョルジュ・サンドとの恋愛物語もある人だから、その時代性とロマン主義真っ只中にあった存在感が理解できる。5月のほか、8月、10月、12月のそれぞれ夜を歌った詩集を作っているので、よっぽど甘い夜がお好きだったのだろうか。
ネットでいろいろ見てみたら、かなりハンサムでもてそうな男子だった。
ちなみに、プッチーニのオペラ「エドガー」の原作もミュッセでっせ。
この輸入盤CDのリブレットは、原作のフランス語の詩しか出ていないので、内容はさっぱりお手上げ状態。今度、詩集でも調べてみなくては・・・。
「憂愁に沈む詩人」と「苦悩と絶望こそ言葉の源泉」と慰めるミューズの対話が内容の様子。
ということで、レオンカヴァッロは、原作のフランス語そのままに、オーケストラがミューズを、テノール独唱が詩人を、それぞれ交互に並ぶ12曲の構成として作曲した。
音楽は、とてもロマンテックで聴きやすいもので、総じていえばオーケストラ部分は優しく抒情的、テノール独唱部分はドラマテックで歌謡的、まるでオペラアリアを聴くよう。
流れるように湧き出てやまない美しい旋律は、さすがに南の国の作曲家。
そして、フランス語の語感の美しさも相まって、なかなかに陶酔の境にいざなってくれる。
最後のテノールの絶唱は、のちのパリアッチを思い起させてくれるし、ミューズ(オケ)の第1曲は、ジャケットにある「海に浮かぶ月」が思う浮かぶし、同じオケによる5曲目は、分散する弦のさざなみに乗って、ヴァイオリンやマンドリンが夢見るように、きれいな歌を奏でる。
本場の雰囲気豊かなオケに、目一杯に歌いまくる国籍不明のテノールはとてもよろしい。
テノール:グスターヴォ・ポルタ
パオロ・ヴァグリエリ指揮 サヴォーナ交響楽団
(2002年録音)
オペラ好きや、後期ロマン派音楽好きには是非お薦めの桂曲であります!
レオンカヴァッロとマスカーニ、いろいろと聴いてみる必要ありデス!
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