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2008年5月19日 (月)

エルガー 交響曲第3番 尾高忠明指揮

Symphony3_odaka N響でのエルガー交響曲第1番の名演を聴いたばかりの尾高さん
発売されすぐ購入したものの、温存してきたアンソニー・ペイン版交響曲第3番を聴こう。
イギリスのレーベル、シグナムにどのような経緯で録音することとなったかわからないが、尾高&札幌交響楽団を起用し、お国物のエルガーを録音するなんて、しかも、第3交響曲なんだから、素晴らしいとしかいいようがない。
おまけに、ドヴォルザークの第8と第9交響曲も録音したときたもんだ。
このレーベル、英国の合唱音楽を中心に古楽などを中心にしていて、まだオケ曲は少ないようだ。
尾高さんの英国における実績ゆえに、こうしたコラボレーションが生まれたのであろう。
シグナムのオケレパートリーの核として、是非とも、後続が続くように熱望したい。
だから、皆さん聴いて下さいな。

BBCの委嘱で書き始めた3番目の交響曲、3楽章までのスケッチのみを残してエルガー(1857~1934)は、亡くなってしまう。
死期を悟った作曲者は、スケッチを破棄するように頼んだが、そのスケッチは大切に大英図書館に保管されたが、エルガーの娘カーリスをはじめととする遺族は故人の意思を尊重することで封印を望んだ。
1990年、BBCは交響曲の補完をアンソニー・ペインに依頼、同時に遺族の了解を得るべく交渉を重ね、1997年にまず録音が、翌98年には初演が、うずれもA・ディヴィスの指揮によって行なわれた。
一口に言えば、簡単な経緯だが、スケッチのみから60分の4楽章の大曲を作りあげることは、並大抵のものではなかったろう。
スケッチがあるといっても総譜はごく一部、スケッチを結び合わせて、かつエルガー・テイストを漂わせなくてはならない。さらに終楽章は、ほとんどがペインの創作となるため、エルガーの他の作品からの引用で補わなくてはならない。エンディングにエルガーの常套として、冒頭の旋律が回顧される、なるほどの場面もある。

以前にも記したが、最初はどうも聴く気がしなかったが、P・ダニエル盤を購入して、繰返し何度も聴いた。だんだんと、エルガーの第3の交響曲として新たなレパートリー誕生を素直に喜ぶようになった。

Sso_2  そんな折に、2004年日本初演のコンビ、尾高/札響のCDが登場。
音楽と真剣に向き合い、ゆっくり、じっくりと歩むような演奏はこの大らかな曲に相応しい。第1楽章のいかにもエルガーらしい第2主題の歌わせ方など胸にぐっとくるし、男性的な第1主題との対比も見事に効いている。上昇する音形が多用される場面もとても聴き映えがする。
交響曲の一部とは思えない、エルガーの小品のひとつのような2楽章は、札響のきれいな音色がとてもいい。北海道の初夏のような爽やかさ。
一転、憂愁につつまれる3楽章。曇天のロンドン=札幌か。ホルストの土星を思い起させるような、憂愁と優しさが交互におりなす音楽。
オケの精度をさらに求めたくなる場面もあるが、気持ちのこもった演奏ぶりに心惹かれる。
出来栄えに難ありとも言われる終楽章。行進曲のような威勢のよさは、この楽章、唯一残ったスケッチが冒頭のファンファーレだったことにもよるのかしらん。
消え入るように弦が冒頭主題を奏で、ドラの一音で静かに終わるとエルガーを聴いた気分と喜びに満たされる。
堂々とした札響のブラスが充分に聴けるし、スリムな札響の弦の美しさが響きの良い「キタラ」で行なわれた録音によく捉えられていると思う。
ブラインドで聴かされたら、日本のオケとは思えないだろうな。

このCD、さらなるオマケ以上に、「威風堂々」第6番が収録されている。
5番までしか完成しなかったが、この曲もスケッチが残されていて、同じくアンソニー・ペインの補完で2006年にやはりA・ディヴィスの指揮、プロムスにて初演された。
ネットラジオで聴いたが、その時の印象はいまひとつ。
昨年、大友さんが日本初演を行なった演奏会を聴いたが、この時は面白かった。
エキゾテックな雰囲気と打楽器の活躍がやたらに印象に残った。
そして、録音ではこちらの方が一足早かった尾高さんの演奏は、しごくまっとうで、落ち着いた演奏。でも交響曲に較べるとその魅力はもうひとつかな。

ペイン補完の2作品を収めた日本人によるエルガー演奏が、英国のレーベルから発売されたことの意義は大きい!
(2007.3@札幌コンサートホールKitara)

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コメント

こんにちは。一寸遅れましたが今拝見しました。
尾高さんと札幌響によるエルガー3番のCD、喜ばしいことですね。是非購入して聴きたいと思います。
情報有り難うございました。

投稿: | 2008年5月22日 (木) 08時39分

丘さん、こんばんは。
久方ぶりの京都から帰ってきたところです。
このCDは、日本人としても誇りに思える1枚だと思います。尾高さんの静かなる情熱には頭が下ります。
大友さんは、この曲をやらないですね・・・。

投稿: yokochan | 2008年5月24日 (土) 01時09分

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» エルガー作曲ペイン補完の交響曲第3番を尾高の指揮で聞く [鎌倉スイス日記]
最初に断っておかないといけないのだが、私はエルガーが死後焼却するようにと言い残した交響曲第3番のスケッチを、作曲者の意志に反して完成させるのには如何なものかと思っている。 チャイコフスキーの交響曲第7番などのように、作曲者が「ちゃんと?」別の曲として完成したものを、最初交響曲を考えていたという理由で、勝手に仕立て直して「新発見」のように装って宣伝するのは論外の蛮行にしか考えられないけれど、マーラーの第10番の例もあるように、確かに聞いてみたいという欲求を分からないでもない。 1932年というから... [続きを読む]

受信: 2008年5月31日 (土) 21時09分

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