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2008年6月 5日 (木)

フランクフルト放送交響楽団演奏会 P・ヤルヴィ指揮

Furankfurt_rso パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団の来日公演を聴く。
このオーケストラは、やはりエリアフ・インバルの名を抜きには考えられない。インバル後、キタエンコやウルフがよく務めたものの、インバルとのマーラーを初めとする精密で分析的な演奏は、このオケの名前についてまわる宿命かもしれない。

ウルフは、シュトットガルトのように、ピリオド奏法をこのオケに植えつけたが、そちらの分野にもめっぽう強い多角的なP・ヤルヴィの音楽監督就任は、誠にいい選択かもしれない。

インバルの幻影を打ち払うことができるか!

私の大好きな演目に、そこそこリーズナブルなチケットで、即飛びついた私だ。

       R・シュトラウス  最後の4つの歌
               S:森 麻季

       マーラー      交響曲第9番

    パーヴォ・ヤルヴィ指揮 フランクフルト放送交響楽団
                        (6.4@サントリーホール)

観客は7割の入り、休憩後のマーラーになって8割くらいに増えたかな?
シュトラウスは、フライング拍手があったりで、客の反応はちょつとイマイチ。
マーラーになると、聴衆の側の聴き入ろうとする空気が違って感じられたから、いかにマーラーが時代を掴んでしまったかがわかる。

Maki_mori そのシュトラウスの歌曲だが、ドレスデンでのゾフィーが巨大NHKホールの前に力負けしてしまった森麻季ちゃんのきれいな声がサントリーホールでは、いかに響くかが、大いに気になるところであった。
そして、結果は・・・私の2Rの席には響いてこなかった。
第1曲「春」の歌いだし「In dammirigen gruften・・・」だけは聴き取れた。
がしかし、その後は完全にオケに埋没してしまっていた。
指揮者の押さえようという雰囲気がなかったから、前方の席ではよく聴こえていたのだろう。前方で観劇した、「ばらの騎士」は全然問題なかったから、一重に声量なのだろうか?
第2曲「9月」のオケを透かして聴かれる歌いまわしや美声は素晴らしいのに・・・。
ここでのホルンのソロの素晴らしいこと!
続く「眠りにつくとき」、「夕映えの中で」は、いずれもオケの奏者達の腕の冴えが目立つ。
 もう少し編成を刈込んでもよかったのでは。
素適な声の持主だけに、オケとの合わせものは慎重にした方がいいのかも。
おなかに、赤ちゃんがいらっしゃるので無理はしないで欲しいし・・・。
今日の彼女、黒いドレスに髪をアップにして、大人の雰囲気。
遠目には、キャスリーン・バトルを思い起させた。
 オケも含めて、昨秋聴いた、シュナイト&神奈川フィルの美音に敵わない。

本日は、二人の世紀をまたいだ作曲家の晩年の作品を集めたプログラムだが、シュトラウス作品が1948年。マーラーの第9が1910年。
38年もの開きがあるのに、かたやロマンティシズムにどっぷりとつかり、過去を回顧するかのような爛熟の響き。一方は、無調の扉を開き、新時代への掛け橋とならんとする彼岸の響き。
どちらも好きなだけに、これを並べたプログラミングの妙に感心。

Furankfurt_rso2 メインのマーラーは、ユニークかつ壮絶な名演とあいなった。
個々のカ所では、初めて聴くような音の押さえ方や、出し方、間の取り方など、細かな点がたくさん散見。大枠で言えば、リズム感が豊かで(パーヴォの指揮はいつも弾むような動き)しなやか。そして明るく、前向きな音楽の運び。
マーラーの第9と、大仰に構えず、1曲の交響曲として全体を見据え、全体を睨みながらも清新な響きを細部にまで漲らせる。
私には、息詰まるような緊張感はあまり感じられず、音楽の美しさ(終楽章の美演)や革新性(1楽章の終わり)を意識させる演奏だった。
後ろ姿のパーヴォ、N響のラフマニノフに続いて2度目だが、その姿が実に指揮者してる。
ブレない正確かつ明確な指揮は、きっとオケからしても頼もしいのだろうな。
恐ろしきヤルヴィ一門。
 終楽章エンディングは、克明な解釈で、しっかり指揮して、オケもしっかり着いていった。
それがまた完璧に決まった。
この曲、お約束となってしまった静寂の享受は、演奏者と聴衆が見事に一体となって完璧だった。
楽員が去る中、ヤルヴィは拍手に呼びだされてステージに再度登場。

それにしても、完璧な精度のオーケストラだ。機能性も充分伺えたし、弦は厚く、管も層が幾重にもある。金管も完璧。ドイツの放送オケはすごい。
そして、明らかにインバルとは違う個性を見出し、フランクフルトは多様性を持ったマルチオケとなる気配を感じる。
心配は、パーヴォ氏の多忙。ドイツカンマーに故国のエストニア・オケ、シンシナシティに、このフランクフルト。さらにパリ管までも手中に・・・・。


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コメント

こんにちは。
私も同じ演奏会を聴きました。
確かに森麻季さんの声量は余りにも小さくてがっかりでした。ブーが出るんじゃあないかとひやひやしておりましたが、日本の聴衆は優しいですね。普通以上の拍手でしたから。
また、フライング拍手の発端となった「おっさん」にはそれとなく注意しましたところ、「すんませ~ん」とあっけらかーんと返されました。会場の皆さんに迷惑かけたという意識など皆目でした。困ったものです。
それにしてもマーラーは良かったですよね。明るい9番もなかなかおつなものです。ヤルヴィ恐るべし。
さまよえる歌人さんの言われるとおり、本場ドイツにはBPO以外にもバイエルン放送響、当オーケストラ等熱血集団が沢山あってうらやましい限りですね。

投稿: フォン カラヤン | 2008年6月 5日 (木) 13時12分

フランクフルト放送響、今夜が名古屋公演でした。昨夜の東京と同様、シュトラウスとマーラーでした。
個人的感想はトラックバックに譲るとして、大好きな2曲を聴けたことはなにより楽しかったです。
あらためて、マーラーは難しいですね。集中力が相当ないと、生で何が起こるかわからないです。
名古屋公演はやや安全運転気味だったように思いました。

投稿: ピースうさぎ | 2008年6月 5日 (木) 23時20分

フォン カラヤンさま、コメントありがとうございます。
麻季さんの声は残念でした。ドレスデンの時は、一人ブーを浴びてしまい可哀想でしたが、今回はそうならずに一安心。
ちゃんとした状態で聴いてみたいものです。
それにしても、フライングの「おっさん」には困ったものです。
よくぞ注意していただきました。
でも気をつけないと、キレる人もいますから。
オペラなどでは、最近、「音が完全に鳴り終わってから拍手してください」などという情けない放送が流れることがあります。

それにしても、いいコンビになりそうな予感ですね。
パリ管との組み合わせも期待できます。
貴HP拝見しました。私も高校時代からのエアチェックマニアでして、カセットからのCDR化も途中で挫折してます。
カセットもVHSも捨てるに偲びなく、段ボールの山が家庭問題となっております(笑)

投稿: yokochan | 2008年6月 6日 (金) 22時42分

ピースうさぎさま、こんばんは。TBありがとうございます。
名古屋公演行かれたのですね。
貴記事を拝見しました。急病人が出たりで、長時間のコンサートになってしまったようですね。
東京では、席にもよりましたが、麻季さんの声が残念でしたが、なかなかのマーラーだったかと思います。

それにしても、マーラーの第9の前にシュトラウスをやるなんて、ヘヴィーなコンサートでしたね。
私も好物の組み合わせなだけに、それだけでも満足満足でした。

投稿: yokochan | 2008年6月 6日 (金) 22時48分

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