ナタリー・デセイ 「ヴォカリーズ」
昨日は、日帰りで静岡まで出張。
懇意にしていただいてる、さる有名人のお父さんにすっかりご馳走になってしまった。
新幹線の時間を見計らって、お開きにしてくれたのに、自分ったら、「もう帰るのめんどくせ~」と「おでん横丁」へ突入。
気がついたら、ホテルで寝ていましたとさ。
寿司屋→オネイサン→おでん→スナック、こんな按配のアル中モードであります。
午前中約束があったものだから、死ぬ思いで静岡から朝帰り。
それにしても、お魚におでん、最高っす、静岡。
実はワタクシ、父親の仕事の関係で、生まれは熱海なのですよ。2歳くらいまでで、その後は神奈川なのだけれど、のほほん性格は、生地や育った地から来ているのだな、これが。
そんなこんなで、寝不足の二日酔い。
外出先で、京浜東北線を反対方向に乗ってしまい、快速運転だったから、相当ロスをしてしまった。
ボケです。
そんなボケ男に、ズバリとシャープな歌声で褐を入れましょう。
昨秋その歌声に接することのできた、ナタリー・デセイの「ヴォカリーズ」。
1996~97年の録音は、彼女の初期のもの。
超越的なコロラトゥーラの技巧が満載、いわば、ナタリーのデモンストレーションアルバムだ。
グルベローヴァの一人勝ちの分野に、登場したフランス産の名花は、メカニカルな雰囲気の一切ない、人間味に溢れた歌で世界を魅了してしまった。
私もすっかり、参ってしまっていて、プティボンとともに、私のアイドル的存在。
ラフマニノフ 「ヴォカリーズ」 アリャビエフ 「ナイチンゲール」
サン=サーンス「ナイチンゲールと薔薇」
ドリーブ 「カディスの娘たち」 ラヴェル 「ハバネラ形式のエチュード」
グラナドス 「マハと夜鶯」 ブロッホ 「主題と変奏」
デラックァ 「ヴィラネル」 グリエール コロラトゥーラのための協奏曲
J・シュトラウス 「春の声」
ソプラノ ナタリー・デセイ
ミカエル・シェーンヴァント指揮 ベルリン交響楽団
見慣れない名前の作曲家や曲が並んでいるが、そのどれもが、ナタリーのために書かれたのではと思わせるような音楽ばかり。
冒頭のあまりにも美しいラフマニノフの曲は、夜の音楽だ。ナタリーの美声でシビレて下さい。面白いのは、次ぎのアリャビエフの曲。ロシア民謡を扱っているが、どこかで聴いたことがある懐かしい雰囲気。解説によれば、この作曲家、殺人の冤罪でシベリア送りになったらしい。ナタリーのハイポジションの高音が冴えに冴えまくる。
サン=サーンスのヴォカーリーズ作品は、すごく抒情的で透明感溢れた桂曲。
その声は、まさにヨーロッパの庭園で聴くようなナイチンゲールのさえずりのよう。
ドリーブのムード満点のスパニッシュな曲は、色気さえ漂う震いつきたくなるような歌声だ。
プティボンもこの曲をかわいらしく歌う。
こうして歌でやられると、ミステリアスな雰囲気の漂うラヴェル。
まさに本家スパニッシュのグラナドスの曲は、気だるくも夜のマドリードの気分だ。
この曲は、有名なピアノ曲「ゴイェスカス」をもとにしたオペラの中のアリアで、このCD唯一のオペラ作品。ゆえにナタリーのドラマテックで思いのこもった解釈がまったく素晴らしく聴ける。ブロッホやデラックァの作品は珍しいが、ナタリーの歌ゆえに、名曲として聴こえるから不思議だ。気品と品のよい情感がたまらない。
そして、コロラトゥーラ協奏曲は、まさにソプラノの声を楽器にように扱った音楽。
2楽章15分の大作だが、濃い目の作曲グリエールらしからぬ、さわやかな作品に思う。
2楽章のワルツなど、ウィーン情緒さえ漂う洒落たムードだ。
ナタリーでしか歌えない作品に思えるし、事実唖然とするくらいの技巧の冴え。
それが全然、鼻に付かないし、温もりある清潔感が漂う声だから堪らない。
最後は、超メジャーなシュトラウスで、これまたお口あんぐりのすげぇ歌で、この素適なCDはおしまいとなります。
いやぁ、ともかく素晴らしい。彼女の歌声に、すっかり頭が冴えてしまった。
はやく彼女のオペラの舞台が日本で実現しないものかしらん。
ナタリー・デセイの過去記事
「フランス・オペラ・アリア集」
「R・シュトラウス オペラと歌曲」
「オペラ・アリア・コンサート2007年公演」
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コメント
ふむふむ、yokochanさん、トーゼンの感想ではありませぬか、ナタリー・ファンとしては!グルベローヴァの声にいまいちの齟齬を感じ、ナタリーのモーツァルト・コンサート・アリア集を買って以来この方、ナタリーの声・容姿・キャラクターを愛し続けたあっしとしては、この秋りゅーとぴあに来るコロラトゥーラの女王のコンサートにも行く気がせんのです・・・。「ヴォカリーズ」、コロラトゥーラ協奏曲、「鐘の歌」、ツェルビネッタ・・・今聴いてもどれも最高です。といおうか、声の威力に関しては今のナタリーよりも上だったりしますね。
ちなみに、DVDで発売された「連帯の娘」、激しくコメディエンヌしてました。キャラクターが乗り移ると自分の声の維持など全く気にかけなくなるナタリーが心配です。
[付録]ハイビジョン放送でやってた小吉パトリシアちゃん、良かったです。アーンのメロディ(歌曲)があんなに素敵に聴こえるとは・・・!
投稿: IANIS | 2008年6月 7日 (土) 07時59分
yokochanさん
美人で声よし、歌よし、お芝居上手の女声歌手次々登場でナタリー・デセイはもう大ベテランのほうに入りそう・・ですけど、両手に花どころか、手が足りませんね^^+
この間、彼女の「連隊の娘」の映像を視聴して、釘付けになりました。ご紹介くださったCD、聴いてみたくなりました。
TBしますので、よろしくお願いします。
投稿: edc | 2008年6月 7日 (土) 08時02分
IANISさん、毎度です。
さすが、筋金入りのナタリアン(?)ですな!
たしかに、この頃の声の方が強くしなやかに感じますね。
ご指摘のように、演技派の彼女なものですから、ちょっと心配です。レパートリーの変化や子育てなんかもいろいろと影響があるのでしょうね。
もう一人のアイドル、我がほうは、まだハイビジョンが未導入なので見てませんが、アーンの魅惑的な歌いぶりはホント素適でしたよ。BS2放送を狙います。
投稿: yokochan | 2008年6月 7日 (土) 12時49分
euridiceさま、こんにちは。
そうですね、彼女はもう大御所くらいの立場になってしまいました。
TBいただいた、「連隊の娘」はメットライブを見逃がしてしまいました。ゆえに、ご紹介のDVDは何とか見なくてはならないと切迫しております(笑)
ウィーン版との比較、大変興味深く拝見しました。
当然コヴェントガーデンをば、見てみます。
このCD、素適ですから是非お聴き下さい。
投稿: yokochan | 2008年6月 7日 (土) 12時54分