カントルーブ 「オーヴェルニュの歌」 フォン・シュターデ
夏も先が見えてきて、今日のように曇りや雨模様だったりするととても寂しいものだ。
暑さも懐かしく思えるこの数日だ。
こちらは志賀高原の涼しげな光景。
なんちゃってスイス・オーストリアなところがいい。
数年前の夏に旅行した当地。
このあたりにカニクリームコロッケのおいしい洋食屋さんがあった。
私は、カニクリームコロッケ&カレーをいただいたが、舌がとろけそうな美味しさだった。
フランス南東部のオーヴェルニュ地方は、山地地帯で旧火山もあって地沃には恵まれない厳しい地域と聞く。
歴史的にはケルト文化が根付いていて、フランス語ではゴールと呼ぶのだろうか、ブリュターニュ地方と通じるものがある。
風土的・文化的に、アイルランドにも近い。
そのオーヴェルニュ地方の民謡を集め、編曲したのが同地に生まれたカントルーブ。
今ではこの「オーヴェルニュの歌」のみしか知られていないが、解説を読むに、オペラ・オーケストラ曲・室内楽などをも作曲しているらしい。
その地方色豊かなオペラは、是非にも聴いてみたいものだ!
ロスアンヘレスやダヴラツのレコードで有名となった、カントルーブの「オーヴェルニュの歌」は、CD時代になって、リリカルな歌声のディーヴァたちがいくつか録音するようになり、その音楽の素晴らしさに、いい録音で接することができるようになった。
「キリ・テ・カナワとジェフリー・テイト」、「ドン・アップショーとケント・ナガノ」そして「フレデリカ・フォン・シュターデとアントニオ・デ・アルメイダ」の3種である。
3種ともに愛すべき歌唱だが、それこそ愛らしいシュターデの歌声が大好きだ。
70年代半ばに突如として現れたシュターデのそれこそシンデレラ・ストーリーは有名だ。
NYのティファニーで働いていたところ、その美声が認められて歌手となり、パリに渡り子守りをしながらヨーロッパ文化を身に付けていった賢明な彼女。
カラヤンやアバド、ショルティに認められ次々に大役をこなしていったが、スターぶることなく、いつもにこやかで優しい笑顔のステージマナーは、やはり自由なアメリカの生んだ歌手である。
チェネレントラ、ケルビーノ、オクタヴィアン、メリザンドあたりが最高の当たり役。
「琥珀色のラブリー・ボイス」と呼ばれたその素適な歌声は、このオーヴェルニュの歌でたっぷりと味わえる。
ちょっとなまめかしく、でも気品があって、なめらかな声はいつ聴いても心和ませてくれる力がある。アバドのマーラーの4番の交響曲での独唱は、まさに天国の歌声そのものだった。深刻な音楽では深みにいざなう力が弱い気もするが、フリッカの歌はそれでいい。
そう、彼女は「フリッカ」の愛称で親しまれた。
ワーグナーのリングに登場するあの怖~いフリッカとは大違いの、優しくフレンドリーなこちらのフリッカ。
冒頭の有名な「バイレロ」からして、もう身も心もとろけるような気分に誘ってくれる。
でも楽しい曲でも、この歌曲集には、哀愁と儚さが紙一重になっていて、山岳地方の風土の厳しさや、そうした自然の中で育まれた男女の仲の身につまされるような関係が巧みに描き出されているんだ。
フリッカの歌は、そうした音楽の意外な深みをさりげなく歌うことで、聴き手の想像力を刺激してくれる。
アルメイダとロイヤルフィルの伴奏が、それぞれがオペラの一場面のような雰囲気に富んだ演奏ぶりで、フリッカをひきたてていて見事。
オーヴェルニュといえば、今やウォーターの「ボルヴィック」で有名。
クリアな水と郷愁誘う清冽な音楽。
また行ってみたい場所が増えてしまった。
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コメント
こんばんは。
フレデリカ・フォン・シュターデ!いいですねえ。大好きです。しかも「オーヴェルニュの歌」の「バイレロ」、最高ですね。この曲の美しさを最も引き出した歌唱かと思います。フリッカのケルビーノにマーラーの4番(アバド盤)も、愛聴盤です。いやあ、懐かしい。
フリッカの「オーベルニュの歌」が発売されたとき、キリ・テ・カナワ盤も出ました。どちらも評価高く、結局僕は両方買ってしまったのでした。ビンボーな時代に無理をして買った音盤は、愛着があります。ホンマに懐かしいです。
投稿: mozart1889 | 2008年8月24日 (日) 21時31分
moazart1889さん、こんばんは。
懐かしいでしょう!私も棚の奥から引っ張りだして、ほとんど10年ぶりに聴きました。
バイレロの懐かしさに涙する思いでした。
CDが出来たての頃でしたね、キリとともに私も即買いでした。
1枚3800円とか4500円でしたから、今思うとよく買えたもんです。
そうした思い出とともに、フリッカの声は懐かしく心に響きました。
投稿: yokochan | 2008年8月25日 (月) 00時32分
フリッカの『オーヴェルーニュ』いいですよね。
他のソプラノの嫌味がなく最もナチュラルな歌だと思います。
ボクのこの第1集とフォーレ歌曲集のLPを聴いて、フリッカに惚れてしまい、後の東京公演を2回聴きに行きました。
投稿: 松夲ポン太 | 2011年10月23日 (日) 18時41分
松本ポン太さん、こんばんは。
フリカッカことシュターデがほんとうにお好きなのですね。
期せずして、本日は、彼女のシャルロッテを聴きました。
彼女の音源はそこそこ集めましたが、残念なことに実演に接することはできませんでしたので、とても羨ましく存じます。
投稿: yokochan | 2011年10月23日 (日) 20時46分
こんにちは。
シュターデのシャルロッテは泣かされますよね。
実演とまではいいませんが映像で観られたどんなにすばらしいだろうかと思いますね。
投稿: 松夲ポン太 | 2011年11月 3日 (木) 12時30分
松本ポン太さま、こんにちは。
フリッカの映像は、少ないのが残念ですね。
シャルロッテを観たかったです!
投稿: yokochan | 2011年11月 4日 (金) 22時41分
カントループドーベルニューvairero
投稿: 河西万里子忠博 | 2019年6月 5日 (水) 12時27分
カントループドーベルニューバイレロ
投稿: 河西万里子忠博 | 2019年6月 5日 (水) 12時30分