ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 ブロムシュテット指揮
夏の陽光まぶしい庭園。
くっきりと影を落す木々。
日差しを浴びた芝生の緑との対比がとても美しい。
こんな光景に心和ませながら好きな音楽が聴けたらどんなに幸せだろう。
この手の英国風庭園を眺めると、当然のようにディーリアスやRVWがお似合いだけれど、今日は「田園」を。
今日も名曲。
日頃ドロドロした後期ロマン派や、オペラばかり聴いているので、こうした体にしみ付いたような名曲を聴くと、逆に心洗われるような新鮮な思いに浸ることができる。
私の初「田園」レコードは、カラヤンのDG最初の録音のもの。
「フィデリオ」序曲とのカップリングで、豪華見開きジャケットで、いま手にしても、その重厚感は高級感あふれるものだった。匂いまで覚えてます。
今にして思えば、スピーディーかつ重厚な演奏で、ちょっと田園のイメージとは違ってた。
ドイツ的であるけれど、カラヤンとは対極にあったゆったりとした翁系の演奏が、ワルターやベーム。
ゆったり大らか系で、翁要素を抜いた演奏が、今日のブロムシュテットやスウィトナーやアバドのウィーン盤など。
それにしても、このブロムシュテットとドレスデン・シュターツカペレの田園は素晴らしい。
作為的な要素が一切なく、音の一音一音がすべて渡ってベートーヴェンの書いたスコアに奉仕しているかの感がある。さすがに菜食主義者ブロムシュテットらしい、グリーンの色調に彩られた田園。
ドレスデンのややくすんだ美音が、指揮者の無心の指揮ぶりに寄り添うようにしていて、柔和でかつ平和な気分が巧まずして導き出されている。
「田舎について起こる晴ればれとした気分」「小川のほとり」「農夫たちの楽しいおどり」「雷雨、嵐」「牧歌、嵐のあとの喜ばしい感謝に満ちた気分」
ベートーヴェンが残した各楽章につけた表題に、こんなに相応しい演奏はないであろう。
この演奏の最大の解説・・・。
こんなに自然で、あたりまえのような田園。
今やこんなにのどかな田園はめったに聴くことも出来ないのと同様、我々の身の回りを見渡しても平和な田園風景を見つけることができない。
地方の郊外を見渡すと立派な道路が走り、その先には忽然とイオンを始めとするショッピングセンターが田んぼの中に林立し、それを取り巻くように郊外店舗が集結する。
日本のどこもかしこも、少し走るとこんな光景になってしまった。
田園は、郊外と郊外の間を探さないといけない。 音楽だけは音源として残るから、今や脳裏にある幼き日々に親しんだ田舎の風景を思い起しつつ「田園」を楽しもうではないか。
こちらは、発出のレコードジャケット。
広告記事からのものでモノクロだけど、とてもセンスがいい。
当時のこのレーベルのジャケットは素適なものが多い。
私の持つ再発廉価盤のものは、おどけたブロムシュテットがちょっと違うかな。
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コメント
おはようございます。
いや、これは懐かしいです。演奏は勿論ですが、当時のLPのジャケットも、良かったですね。懐かしさに涙がこぼれました。
僕はブロムシュテット盤は全集LPが8枚組セット1万円になったときに買いました。当時としては激安、徳間音工の大盤振る舞いでした。ホンマによく聴きました。特に第九と「田園は今も最高の演奏の一つと思います。
「田園」交響曲、大好きなんですが、このブロムシュテット盤は、いつかエントリーしてみたいなと思っておりました。大切にとっておきにしてます。
誠実で真摯、ひたすらベートーヴェンの音楽を伝えようとする姿勢が僕は大好きです。
投稿: mozart1889 | 2008年8月21日 (木) 08時03分
私も全集をセットで買った口です。
この全集はどれも好きですが、この田園もいいですよね。
オーケストラって言うのはこういうふうに鳴るものなのだと思いました。まるで一つの生き物のように全部がピタリとはまり響きも格別、あの頃の私の世界で一番好きなオーケストラでした。
ウィーン風とは一線を画した彼らなりの「田園」で、しかもそれが全然不自然でないどころかまったくこれが王道にきこえるからスゴイです。
美しい演奏だと思います。
投稿: yurikamome122 | 2008年8月21日 (木) 15時52分
mozart1889さん、コメントありがとうございます。
そうそう、1万円で全集出ましたね。私は、思い切りが悪く購入しませんでしたが、CDで1枚1000円の時にそろえました。
今はさらに格安でもったいないくらいですね。
ブロムシュテットのベートーヴェンは7番が最初だったかと記憶しますが、その幻想的なジャケットも名作と覚えてます。
いつの日か、mozart1889さんがこの演奏を取り上げられるのを楽しみにお待ちしてます!
投稿: yokochan | 2008年8月22日 (金) 00時06分
yurikamomeさん、こんばんは。
私どもの世代は、このあたりの演奏にやはり思い入れがありますね。
ウィーンでもベルリンでもないヨーロッパの響きは、コンセルトヘボウと双璧です。
いつまでも浸っていたい美しい演奏。
先般のシュナイトさんの田園とも通じる「王道」の演奏ですよね。
投稿: yokochan | 2008年8月22日 (金) 00時17分