プッチーニ 三部作~「外套」
おーっ、哀れなり!
いや、違います。
あまりの暑さにぐったりのにゃんこ。
もーだめ・・・・、とのことであります。
でもトラックの下はあぶにゃい。
(もしかしたらこの会心の写真、すでに公開済みかも、ボケてますもので)
プッチーニ(1858~1924)のオペラ全曲シリーズ。10作中の8作目は3部作。
トゥーランドットの前は、1幕ものを3つ集めた3部作となった。
7作目「西部の娘」の初演後、パリで観たセーヌの雰囲気の横溢する悲劇「外套」に大いに引きつけられ、オペラ化を決心。3部作にしたいと思いつつも、
なかなか台本作家が見つからず、ようやく決まって1915年に、まず「外套」を作曲。
残り2作が決まらないまま、愛すべき「ラ・ロンディーヌ」を1917年に作曲。
併行して、ほかの2作の題材を選別し、順次作曲し1918年に「3部作」完成、メトでの初演となった。
「イル・トリッティコ」3部作、「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」
ダンテの「神曲」にならい、それぞれ「地獄」「煉獄」「天国」に相当するように作られている。
1曲目の「地獄」は「外套」。ヴェリスモ風の死の横溢する激しい愛憎劇は、甘味な旋律と耳を聾する大音響が交錯する。
円熟の筆致に達していたプッチーニの作曲技法も鮮やかなものだ。
パリの雰囲気を豊かに表わす警笛や手回しオルガンなどがリアルだし、主役3人に与えられた短いが情熱的なアリアは極めて素晴らしい。
でも、劇の内容はあまりに陰惨で目を覆いたくなる。
若い妻に初老の夫。ようやく出来た赤ん坊が亡くなってしまうことで、二人の間には隙間風が吹き、悲劇へと転がっていってしまう・・・・。
時は作曲当時、場所はパリのセーヌのほとり。海運を細々と営むミケーレ親方と妻ジョルジェッタ、働き手のルイージと仲間たち。
仕事を終え煙草をふかすミケーレ、ジョルジェッタのつれないそぶりに心は浮かない。
ジョルジェッタは、仕事を終えたルイージや仲間たちに酒を振舞い、楽しい雰囲気。
仲間の妻は、田舎で旦那とつましい余生を送りたいと歌い、ジョルジェッタは、自分やルイージはパリの郊外の生まれで、こんな水辺での浮き草のような生活は早く終わりにしたいと歌う。そして、愛を交わしあい、密会を約束しあう二人。ルイージは熱い思いを歌う。
寝ずに火照りを覚ますジョルジェッタにミケーレは、ふたたび「自分の外套に包まれればよい」と、やり直しを迫るが、またしてもそっけない妻。
一人になり、怒り震わせ男をひっとらえてやると、豹変するミケーレ。
煙草に火を着けるが、それを同じ合図と勘違いしたルイージが船にやってくる。
「ははぁん、お前か」「違う、あっしじゃありやせん」「いやテメエだ!」と押し問答の末、絞殺してしまう。物音に出てきたジョルジェッタ、夫の怪しい雰囲気に怖くなって、以前のように「喜びも悲しみも包んでしまうといった、外套に私を包んでよ」とおねだり。
「そうさ、時には罪もな!俺のとこへ来やがれ・・・」と外套から転がりでたルイージの死体にジョルジェッタの顔を無理やり押し付ける。凄まじい悲鳴とともに幕。
こえ~。ミケーレはサドっ気ありすぎ。
ルイージの断末魔のうめき声に、ジョルジェッタの異常なくらいの叫び声。
特に後者は、あらゆるオペラの中でもナンバーワン級の「ウギャー~~ツ」である。
ミケーレ :カルロ・グェルフィ ジョルジェッタ:マリア・グレギーナ
ルイージ :ニール・シコフ ブルーゴラ:エレーナ・ズィーリオ
恋人たち:アラーニャ&ゲオルギューほか
アントニオ・パッパーノ指揮 ロンドン交響楽団
(97年録音)
トスカやカヴァレリアを歌えそうな強力メンバーによる録音。実際、この1時間足らずのオペラには凄まじいほどのドラマテックな声を必要とする。
この3人に文句のつけようがありませぬ。
でも甘味な曲だけれど、最後のギャーがあるかと思うと、そう何度も聴く気になれません。
パッパーノの唸り声も伴なった渾身の指揮は、ことさらに大音響を強調せずに、熱を帯びた音楽を見事につくり出すことに成功していると思う。
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コメント
この写真は初出ですなぁ。
ネコはいいですね。
投稿: リベラ33 | 2008年8月 3日 (日) 06時03分
yokochanさまが私が聴いたことのない曲について書いておられると、その曲を聴きたくなりますし、聴いたことのある曲について書いておられるとまた聴きたくなってきます。yokochanさま絶賛のシャイー指揮のプッチーニ管弦楽曲集が聴いてみたくなりこの間注文しました。 プッチーニの三部作はジュゼッペ・パターネ指揮ミュンヘン放送交響楽団の演奏をもっているのですが、気合を入れて聴いた事が無いです(情けない…)。これを機会に本気で聴いてみたいと思います。オペラに出てくる「ギャー!!」という絶叫で私が一番怖いのはベルクのルルで、ルルが殺されるところの「ギャー!!」ですね。初めて聴いた時は凍りついてしまいました。
投稿: 越後のオックス | 2008年8月 3日 (日) 11時32分
よかった初出でしたか。ありゃ、自分で言うのもなんですな。
一昨年夏に撮ったものを探しだしたものです。
ねこはいいです。この暑い中、犬猫どもも大変であります。
投稿: yokochan | 2008年8月 3日 (日) 13時15分
越後のオックスさん、こんにちは。
シャイーの1枚はクールで最高の1枚と存じます。
私も聴きたくなりました。
そして、3部作はその対比が驚くほどよく出来た連作に思います。次週3作が同時上演されますので、観にゆく予定です。
ルルのギャーもすごいですねぇー。
やはり近現代ものにギャーは多いようです(笑)
投稿: yokochan | 2008年8月 3日 (日) 13時19分
yokochan様
筋書きも音楽も陰惨で、救いが無いですね、このオペラ‥。私めの入門盤は、日本ビクターより初発売のRCA原盤のLP(SRA-2940)、L・プライス、ドミンゴ、ミルンズを揃えた、ラインスドルフ&ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の、録音でした。その後に、Decca原盤のガルデッリ指揮の『三部作』を買い足して、まぁそんな所であります。プッチーニとしては、これに続く『修道女アンジェリカ』、『ジャンニ・スキッキ』を効果的に導く狙いで、このような悲劇を仕上げ備えたのでしょうけれども、単独にお付き合いするのには、些か辛い作品です‥(笑)。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年8月 3日 (水) 10時04分
たしかに救いなく血なまぐさいヴェリスモの典型です。
ご指摘のラインスドルフ盤、いまだにCD化されてない気もします。
RCAは、同時期にリッチャレッリのアンジェリカを録音しましたが、ジャンニ・スキッキはなかったような記憶があります。
今年のザルツブルグ音楽祭の演奏を聴きましたが、順番が、ジャンニ→外套→アンジェリカと言う風になっていたのが画期的でした。
投稿: yokochan | 2022年8月 6日 (土) 14時52分
yokochan様
早速の御返信、感謝致します。
件の『外套』、BMGより『イ・パリアッチ』(サンティ指揮LSO、ドミンゴ、カバレ、ミルンズ他)との組み合わせで、輸入盤2CDの『GD-60865』の番号で、棚にございます。目まぐるしくカタログ上の商品状況が移り変わりますので、『えっ、この盤、新装再発されてたの?』と言う経験は私めも、枚挙にいとまが御座いません。ただ、この一組、当時の収録時間の限界故でありましょうか、一枚目が『パリアッチ』の第二幕の導入合唱で終わり、二枚目は劇中劇から始まると言う、鑑賞には些か不都合な盤に、なってしまっております。DGのカラヤン&ミラノ・スカラ座の盤も、結構じっくりした音楽の運びで、75分を越す演奏ですが1CDになりましたので、今なら一枚への収録も可能かとは、思いますが‥。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年8月 7日 (日) 11時18分