プッチーニ 三部作~「修道女アンジェリカ」 パッパーノ指揮
今日のにゃんこ。
ショーウィンドウの中、感慨にふける。新橋と汐留の堺あたりにある質屋さんに、彼女(?)はいる。
冬や春の天気のよい日には、きまってここにお出ましになって店番。
専用の座布団も毛だらけ。
ねこ不在のショーウィンドウには空しく座布団があるのみ。
じっとして置物のような今日のニャンコでありました。
プッチーニの3部作の第2話は、「修道女アンジェリカ」。
ダンテの「神曲」に倣えば、こちらは「煉獄」ということになる。
イタリアのとある修道院が舞台、登場人物は女性だけ。男性だけのおホモチックなブリテンの「ビリーバッド」と好対照をなすオペラは、宗教的な神秘劇で、その繊細であまりにも儚く美しい音楽は、1話のやたらリアルで激情的な音楽と180度違う。
でも、どちらも子供を亡くしてしまう悲劇でもある。
主役の女性がプッチーニ好みの薄幸の人生であることも3部作の中では唯一。
抒情的で、透明感に溢れた音楽は、いやでも修道院の清々しい雰囲気を引き立てるし、一転我が子のこととなると人が変わったように必死となるアンジェリカには、意外なくらいに強い和声を響かせたりしている。
これまた1時間に満たない音楽ながら、大きな感動をもたらせてくれる名作に思う。
時は17世紀、トスカーナ地方のとある修道院。
修道女アンジェリカは、フィレンツェの公爵家の娘ながら許されぬ子を宿し産んだため修道院に入れられ懺悔の日々を送っている。
修道女たちの祈りの合唱。修道女ジェノヴィエッファが中庭の泉に太陽の光が差し金色に輝くのを見つけ、マリア様の奇蹟が訪れるのよ、と沸く。
しかし、1年前にある修道女が亡くなったことも思い出す・・・・。
アンジェリカは生あるうちに花開き、死には何もないと語り、願いはないと語るが、皆はその言葉を信じず彼女の身の上話をささやく。
そこへ、修道女のひとりが蜂にさされ怪我をしたと騒ぎになるが、薬草に詳しいアンジェリカが秘伝の治療法を託す(ここは後に伏線アリ)
そこへ、アンジェリカの伯母の公爵夫人が立派な馬車でやってくる。修道院長から呼ばれ、接見するが、意地悪な伯母から、アンジェリカの妹が結婚することになりその遺産分与の同意を得にきたと伝えられる。家名を汚した姉の償いを妹がするのだとなじる。
7年前に生んだ坊やの消息を必死に尋ねるアンジェリカに、公爵夫人は2年前に伝染病で死んだと冷たく答える。その場に一人泣き伏せるアンジェリカ。
「いつ坊やに会えるの?天であえるの?」と、あまりにも美しいアリア「母もなく」を楚々と歌う。
彼女は、死を決意し、毒草を準備する。
毒薬を服し、聖母に自決の罪の許しを必死に乞うアンジェリカ。
そこへ天使たちの歌声とともに、眩い光が差し、聖母マリアが坊やを伴なってあらわれ、死にあえぐアンジェリカの方にそっと差し出す。にじり寄りつつ、彼女は救われ息を静かに引き取る・・・・・。
このオペラは、私はもう涙なしには聴けない。
ドラマにまさに付随したプッチーニのあまりに美しい音楽!
涙さそうアンジェリカのアリアから、これまた絶美のオーケストラによる間奏曲。
心に染み入る天使の歌をともない、神々しくも優しい幕切れ。
アンジェリカ:クリスティナ・ガラルド=ドマス 修道院長:フェリシティ・パーマー
公爵夫人:ベルナデッテ・マンガ・ディ・ニッサ
ジェノヴィエッファ:ドレテア・レーシュマン
アントニオ・パッパーノ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
ロンドン・ヴォイセズ
「外套」では死の苦しみの喘ぎと、驚愕の叫びがあったが、「修道女アンジェリカ」では、子供の死を知った母の絶望の嘆息、救われる時の放心の嘆息が聞かれる。
その嘆きの声に聴き入るばかりに情の入ったドマスのアンジェリカがとてもいい。
リリカルで優しい、時に母の強さも歌いだす、素適な歌唱。
現在大活躍のレーシュマンがちょい役ながら、とても美しく存在感ある声。
オケがフィルハーモニアに変わり、パッパーノの指揮も精妙の限りを尽くし、一方で温もりある響きも充分。
真夏の部屋で、汗をたらしつつ、一人涙するワタクシでございました。合掌。
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コメント
>ショーウィンドウのネコ
いいですね!!
>このオペラは、私はもう涙なしには聴けない。
yokochanさんのあらすじを読んだらもう目頭が
熱くなりました・・
投稿: edc | 2008年8月 4日 (月) 06時47分
euridiceさま。このねこいいでしょ。すっごくお気に入りでして、たまに通っていないとがっかりだっらりします。
あらすじを書きながら泣いてました・・・。
プッチーニにやられっぱなしであります。
投稿: yokochan | 2008年8月 4日 (月) 23時07分