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2008年9月10日 (水)

ヴォーン・ウィリアムズ 「田園交響曲」 ボールト指揮

Yurigaoka_1北海道の晩夏。
木漏れ日の織り成す、グリーンの濃淡が美しい。
英国の四季もきっと寒暖の差があるだけに、ドラマティックで美しいのだろうな。

唯一の英国訪問だが、高速を北に走っていると、そこここに緑の丘がぽこぽことあって、とても印象的な風景だった。
それは、まさに私の愛する英国音楽が似合う光景。
 

Rvw_pastoral

歌入り交響曲、今日は、レイフ・ヴォーン・ウィリアム(1872~1958)の「田園交響曲」を聴く。
 略してRVW
RVWには、9曲の交響曲があるが、バラエティに富んだ作風は鮮やかなくらいにそれぞれが異なった個性を放っている。
タイトル付きのものは、「海の交響曲」「ロンドン交響曲」「田園交響曲」「南極交響曲」と名付けてあるから、番号と併記するとややこしい表示となる。
そして、歌入りの交響曲は、「海」と「田園」と「南極」の3曲あって英国のシンフォニストの中では、一番歌に熱心だった。

この「田園交響曲」は交響曲第3番にあたり、1922年に本日聴いたボールトの指揮により初演されている。全曲がゆったりしたモデラートで書かれていて、ベートーヴェンの田園はリアルな田園風景だし、そこに人間も登場するが、RVWのものは、あくまで心象風景そのもので、より内面的な音楽に思う。
同じ作風は、5番の純粋交響曲にもいえること。しかも静かやながら、両曲ともに、二つの大戦の影響が影を落としている・・・・。

もともとは、北フランスにいた1916年頃から構想され、そのカミーユ・コローの風景画のような景色に大いにインスパイアされた。
しかし、第1次大戦が、この平和な交響曲に陰りを帯びさせることとなる。
構想から6年、完成した「田園交響曲」は、確かに平和でなだらかな牧歌的なムードにあふれているが、RVW独特のペンタトニックな旋律は、物悲しい北イングランド風で、戦争の悲しみをも歌いこんでいるかのよう。

木管の上下する音形で印象的に始まる茫洋とした出だしの第1楽章。徐々に霧が晴れてくるかと思うと、また風景は霞んでしまう・・・。
やはり静やかな第2楽章、長いトランペットのソロは、夜明けを切り裂くような悲しいラッパに聴こえる。あまりに儚い夢の中にあるかのようだ。
唯一元気のある3楽章は、フルートやヴァイオリンソロ、ハープの涼やかな合いの手が美しいが、ダイナミックな舞踏曲の様相となるユニークな楽章。
そして、この曲最大の聴き所の第4楽章。ティンパニのトレモロのなか、いよいよソプラノ・ソロが歌詞を伴なわずに入ってくる。このミステリアスな雰囲気で始まる繊細で美しい終楽章は、聴く私の心の襞に染み込んできてやまない癒しと安らぎの音楽だ。
最後に再度、ソプラノが歌い、消え入るように「田園交響曲」は終わる。

初演者のボールトニューフィルハモニア管を指揮した1枚は、小手先だけでないジェントルな大人の演奏。若きマーガレット・プライスのニュートラルな歌声も素敵。
のちに、カルロスの元でイゾルデを歌うことになろうとは、これを聴いた昔にはとても信じられないこと・・・・。

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コメント

おはようございます。
私もRVWの三番は、五番と並んで大好きでして、一時期狂ったように聴いていた気がします。会社帰りのアンニュイな時間に聴くと癒される気がしまして。音楽に癒しを求めるのは邪道かもしれませんが。私もボールトの全集廉価版を持っています。同じ音源だと思います。ソプラノがマーガレット・プライスとは気づきませんでした。RVW、すばらしいですね!

投稿: Shushi | 2008年9月12日 (金) 04時52分

shushiさま、こんにちは。
RVWの交響曲は癒し系あり、アヴァンギャルド系あり、スペクタクルあり、文学系ありで、実に楽しめます。
私も、同様に3・5番を心の平安を求め聴きます。
いい聴き方ではないかと思ったりしてますよ。
ボールトの演奏は、エルガーとともに安心して聴ける演奏ですね。いつの日か、RVWの交響曲連続聴きを企画しております。

投稿: yokochan | 2008年9月13日 (土) 11時35分

yokochan様今日は。
 今日は、RVWの第3番と第9番を聴いてみました。第3番の素晴らしさは私にもわかります。昨日聴いた5番以上に地味ですが、聴いていて心が安らぎます。第3楽章以外はスローテンポの音楽が延々と続くのに聴き手を退屈させず、安らぎをもたらしてくれる作曲者の力量は凄いですね。
 ギブソン氏とトムソン氏を間違っていました。申し訳ありません。アサートン指揮のN響の演奏会は、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番とベートーヴェンの交響曲第1番の名演が印象に残っています。
 9番は今の私には難解すぎます。ショスタコの4番と並ぶ難解交響曲ではないかと思いました。ショスタコの15番が平明で分かりやすい曲に聴こえてくるほどです。トマス・ハーディの長編小説「テス」と関連性があると解説には書いてありましたが、私にはどう関係があるのかさっぱりです。大学時代に岩波文庫で読んだのですが…
 

投稿: 越後のオックス | 2008年12月11日 (木) 15時25分

越後のオックスさま、こんばんは。
RVWの田園交響曲はほんとうに素晴らしい音楽で、もっと聴かれていいと思います。
がしかし、第9は、意識したとは思えないくらいに、悲壮感ただよう思い音楽になってます。
正直、私もいまひとつわかりません。
9つすべて異なり雰囲気のRVWの交響曲、私もまだまだこれから聴きこむべき対象です。

投稿: yokochan | 2008年12月12日 (金) 00時25分

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