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2008年9月27日 (土)

シュナイト指揮 仙台フィル演奏会

Sendai_po_2

シュナイト&石田が、杜の都に浜風を吹き込んだ

仙台フィルハーモニーに、シュナイト師が客演、しかも手兵神奈川フィルの石田氏を引き連れて。
直前にチケットを購入して、ワクワクしながら仙台へ。

仙台フィルは初めて聴くオーケストラだし、会場の青年文化センターというホールも初めて。
市の中心部から地下鉄で北へ向かい10分。大きな公園に囲まれ緑豊かな場所にあって、雰囲気がよろしい。
1階フロアのみ、802席という座席数ではあるが、天井がとても高く、響きがとても豊かで美しいホール。

ほぼ満席の会場で、楽員も出揃い、コンサートマスターの登場を待ち受ける。
そして、毎度おなじみとなったいでたちの石田氏登場。一瞬、おやっ、というムードがホールに流れた(気がする)。チューニングのあと、シュナイト師が姿をあらわした。6月以来だが、しっかりした足取りで、とても元気そう。
 そして、「魔笛」の和音が荘重に鳴り響いた。

     モーツァルト 歌劇「魔笛」 序曲
               ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
                Vn:川久保賜紀
     シューベルト 交響曲第8番「ザ・グレイト」

   ハンス=マルティン・シュナイト指揮  仙台フィルハーモニー管弦楽団
                             コンサートマスター:石田泰尚
                          (9.26@仙台青年文化センター)

Orchestra

ゆったり目のテンポで厳かな雰囲気で始まった「魔笛」、活気ある主部が始まると石田氏はいつもの動きでオーケストラを活発にリードしてゆく。
ゆったりした部分はより遅く、早いところはほどほどに早く。シュナイト師の面目躍如の活き活きとした「魔笛」。
 次いで、川久保さんの繊細かつ能動的なソロが光ったヴァイオリン協奏曲。
オーケストラをよく聴きながら、ソロのない時は体も揺らしながら音楽に聴き入る彼女。
面白いことに、指揮者ではなく、コンマスとよく目を合わせながら溌剌と弾いていた。
2楽章の天国的な美しさと、有名な3楽章のトルコ風場面の切れ味のよさなどが、ソロ・オケともに印象に残った桂演だった。

休憩後の「ザ・グレイト」は、やってくれました、まさにシュナイト風、巨大な名演奏。
時計をちらちら見ながら計ってみたら、Ⅰ(15分)、Ⅱ(21分)、Ⅲ(14分)、Ⅳ(14分)の合計64分。繰返しなしでこの長さ。まさにグレイト!
 2楽章がまさに、「天国的」な長さ、というか遅さ!
それがまったく弛緩しないし、歌心に満ちていたのがまさにシュナイト師のシュナイト師たる由縁。木管がおそらく緊張のあまり、固かったがそれも徐々にほぐれ、このテンポによく着いていったという以上に、素晴らしく柔らかい響きをかもし出していた。
そしてやはり、シュナイト師と気心の知れた石田氏の存在は大きかった。
他流試合ながら、そして練習もそんなに多くはなかったかもしれないが、シュナイトイズムの落とし込みをしっかりやった以上に、弦楽セクションの明るく活気ある響きは、普段の仙フィルを知らずに言うのも恐縮ながら、石田氏のパフォーマンスによるところも大きかったのではなかろうか。
ともかく、美しい2楽章。中間部から後半にかけて、たゆたうような歌の数々は、涙が出るほどに素晴らしかった。
 さかのぼって1楽章。冒頭のホルンの主題は、先のとおり、固すぎて滑らかさが不足したが、主部に入ってからの音楽のノリのよさは特質もの。
楽章の最後、思い切りテンポを落として、朗々と主題を奏で聴衆は固唾を飲んでその終わりを見守った。
2楽章は、先のとおり。
3楽章のリズムのよさ。シュナイト師は足を踏み鳴らし、舞踏性にこだわったかのよう。
その中間部、テンポを大きく揺らし、左右に踊るように指揮するシュナイト師だった。
 そして、爆発的な終楽章。これまでじっくり積上げてきたものが、その頂点で爆発したかのような活気みなぎる演奏に、手に汗握る気分だ。
石田氏の動きも激しく、体一杯に音楽を表現している。
オケももう夢中だ!すごいぞ、仙フィル!
最後のコーダ、弦は弓を使いきり思い切りのユニゾンで応え、シュナイト師がこれまで押さえていた金管も大爆発。もうドキドキが止まらない。
そして、最後の和音は、フォルテで終わることなく、緩やかなドミネンドで極めて印象的に終了。シュナイト師は動きを止め、石田氏は弓を掲げたまま、オケも全員止まったままに、しばしの静寂が。
もうすっかりお馴染みとなった、シュナイト・エンディングがこの曲でも味わえた。
やがて会場はブラボー(客演のわたくしも当然に、ひと声参加)と喝采につつまれた。

いやはや、またもやシュナイト・マジックにやられてしまった。
この巨匠の個性は、時間の少ない客演ではなかなかに発揮されないし、その指揮ぶりもわかりにくいものだから、相棒の石田氏の存在は不可欠。
それにも増して、仙台フィルのアンサンブルの緊密さに驚いた。
神奈川フィルとのコンビで味わえる南ドイツ風の明るくも重厚な響きが、杜の都でも!
素晴らしいコンサートが聴けました。

7時にはじまり、ホールを出たら、もう9時20分。
美味しい酒と肴をもとめて、国分町へ向かったワタクシであった。

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コメント

いや、レポートを期待しておりました。
まずはシュナイト監督の健康状態も何とかいいようでよかったです。
そしてお約束の超名演、うらやましい限りであります。
シュナイトさんのグレートですか、聞き逃したのは残念でした。

投稿: yurikamome122 | 2008年9月28日 (日) 21時43分

お帰りなさい!(笑)
いや~、ヤッパリ羨ましい!
状況が状況で無ければ私も御供したのですが。

やはり、グレイトは"Great!!"だったのですね。
シュナイト節はまさに全国共通なのでしょう!
石田さんも一緒でしたしね。
仙台の聴衆も色々な意味でビックリしたでしょうね。
>毎度おなじみとなったいでたちの石田氏登場。
>一瞬、おやっ、というムードがホールに流れた(気がする)。
このあたりとか(笑)きっと「何者?!」だったのでは。

結局、私の方は法要準備の用事は発生しなくて・・・。
尤も、周囲の雰囲気が暫くは旅行を許しそうに無いですが。

投稿: スリーパー | 2008年9月28日 (日) 22時03分

yurikamomeさん、聴いてまいりました。
ところ変われど、毎度お馴染みの大名演。
わかってはいても、すっかりやられてしまうのも毎度のこと。
エンディングには驚きましたし、仙台っ子も唖然としたはずです。
シュナイトさん、おどけて聴衆相手に何かやったのですが、誰もわからず不評でした(笑)
仙フィルは定期がCDになってますから、この演奏もCD化されるのではないでしょうか。

投稿: yokochan | 2008年9月28日 (日) 23時04分

スリーパーさん、聴いてきました。
そして、まさにグレートでした!
もしかしたら、石田氏の風貌や動き、シュナイト師の指揮振りやジョーク、これらに初めて接した仙台の聴衆には、??だったかもしれません。
あらためて、神奈川フィルで日頃聴ける音楽がとても大切に思えるようになりました。
来年の札幌は、さすがに遠いです・・・・(笑)

投稿: yokochan | 2008年9月28日 (日) 23時10分

 初めてまして。MIURAと申します。こちらへは検索でたどり着きました。
 私も同じ金曜のコンサートで「マジック」を味わいましたが、本当に素晴らしいものでしたね。以前からCDにてこのコンビはお気に入りでしたが、実演のあの鮮やかな音には驚きました。
できることなら神奈川へ通いたいくらいです・・・笑

投稿: MIURA | 2008年9月30日 (火) 23時38分

MIURAさま、こんばんは。
そしてコメントありがとうございます。
金曜のあの雨混じりの涼しい晩に同じホールでご一緒だったんですね!
私の、神奈フィル経験もまだまだ浅いものですし、ご紹介いただいた諸氏からすると「ひよっこ」ですが、仙台でのコンサートを聴いて、地元楽団を愛する聴衆と、外来ながらシュナイト&石田の音楽への愛情が、見事なコラボレーショを生んだかの印象を受けました。
とてもよかったです!
P・ヴェロさんが神奈川フィルに互恵で来演されますし、今後、仙台=横浜そして=札幌のつながりがいい具合に出来ると願っております。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2008年10月 1日 (水) 00時12分

ごぶさたです
シュナイトさんのザ・グレイトだなんて!んもう!
しかも仙台!んもう!

近頃貧乏すぎてコンサトにも足を運べませんが
フトコロに余裕がでてきたらまたぜひご一緒しましょうー

投稿: petite-tomo | 2008年10月 3日 (金) 10時47分

ぷちともさん、こんばんは。
んもう! ご無沙汰してますねぇ~。
無理して行った甲斐、おおありでした。
仙台で、シュナイト&石田コンビが誇らしく思えちゃったりしました。まさにグレイトコンビでしたよ!

仙台で寿司食べて、酒飲んでいい気分でへろへろでしたぁ(笑)
バイクは置いて、電車で神奈フィルに行きましょう。

投稿: yokochan | 2008年10月 3日 (金) 22時59分

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さまよえる歌人日記さんの演奏会レポートより。 とっても素晴らしい演奏会だったようです。神奈川フィル音楽監督ハンス=マルティン・シュナイト(→Wikipedia)が神奈川フィルのコンサートマスター石田泰尚さん(公式サイト)とともに、仙台フィル...... [続きを読む]

受信: 2008年9月28日 (日) 13時04分

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