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2008年9月25日 (木)

R・シュトラウス 「ばらの騎士」 新日本フィルハーモニー公演

Img_0002 ばら戦争」は終わっていなかった!
昨年来の「ばらの騎士」の饗宴、今度こそ最後だろう。
2007年5月から数えて、通算5つ目の「ばらの騎士」を観劇。
一昨日の「トリスタンとイゾルデ」の響きがまだ脳裏に残るなか、迎えてしまった今日のばらの騎士。ワーグナーとシュトラウス、私のもっとも好きな作曲家達による、もっとも好きなオペラ。よりによって、こんなに集中して演ることはないじゃないの! 
好きだからこそ、そのすべてを聴きたくなるから困ったものだ。

今回は、新日本フィルの定期公演でもある、セミステージ上演。
オーケストラをステージ奥にきっちきちに押し込んで、その手前、つまり指揮者のうしろで演じ、歌われる仕組みだった。

簡単なセットは、左手の第1ヴァイオリンの前に据えられ、歌手達は、ステージ左手で歌うことが多く、右手前方の席だった私の首はいまも痛いっ

制約ある条件ながら、演出はしっかり付けられていて、飯塚励生(れお)さんによるもの。ニューヨーク生まれのこの方、以前の新日ホールオペラ「ローエングリン」の演出をはじめとするホールものの数々、またサイトウキネンの「グレの歌」なども手掛けた気鋭。
実力派の歌手たちばかりだから、果たして、どこまでが振り付けか個々の動きは不明だが、ホールオペラの利点を活かし、出演者と指揮者が掛け合いをしたり、客席からオクタヴィアンが従者を伴なって登場したり、オックスのチンピラのようななりをした手下たちが客席のあちこちで、ファーニナル家の女性たちを追いまわすなどの仕掛けが豊富であった。
アンニーナが、オックスの脱いだカツラを、こともあろうにイケメンのアルミンクにかぶせてしまい爆笑!
 さて、こうしたアイデアは楽しめたが、限られた舞台に新たな解釈を持ち込もうとしたものだから、私にはそれは「過ぎたるは及ばざるが・・・・」の印象であったことも事実。
最初から、原作にない白いドレスを着た妖精のような少女が出てきて、出演者にまとわりついたり、舞台の斜め右から一喜一憂しながら眺めたりしている。
1幕では、幼稚園児くらいの少女。2幕では、あれ成長したと思ったら、小学高学年くらいの少女。途中から二人とも登場・・・・。
ともかくその演技も、父親世代から見ると可愛くてしょうがないのだが、大人のドラマに何故?不自然であると同時に、ドラマの感興をそいでいたように思う。
モハメット君の役割は別にいるわけで、最後はぞろぞろ3人出てきて、今回はゾフィーが肩から落としたショールを拾いあげて幕となったくらい。
 可愛い彼女たち。
時の経過を司る少女たちではないかと思料。
1幕でオクタヴィアンと戯れるマルシャリンには見えなかったのに、幕の後半に、時間を意識してアンニュイになったあとから、マルシャリンには少女たちが見えるようになった。
少女に手を引かれ、オクタヴィアンの走り去った舞台を去る。
もう一人、少女たちが見えていたのは、オックス男爵。
2幕で、オクタヴィアンに決闘を挑まれるが、少女がオックスを後ろからチョンチョンとつついて、なに?と振り返った拍子にオクタヴィアンの剣でちょこっと怪我をする。
愛し合うオクタヴィアンとゾフィーと、少女たちの接点はなかった。
 云わんとするところはよくわかった。時間の経過とそれへの受入れ、同じコンセプトは、今春の横浜の「ホモキ演出」の根源だった。
ホモキは、舞台を逆さまにしたり、衣装を脱がせたりすることで、巧みにそれを表出していたが、今回の少女たちは、私としては、ちょっと過剰であったように思う。
それでも、カーテンコールで演出家へのブーイングは心無いことだ。
そんなことをしてどこが気持ちいいのだろう。素晴らしかったファーニナル役のユルゲン・リンが、あれれどうしてよ??というような面持ちだった。

 元帥夫人:ナンシー・グスタフソン オックス:ビャーニ・トール・クリスティンソン
 オクタヴィアン:藤村実穂子     ゾフィー:ヒェン・ライス
 ファーニナル:ユルゲン・リン    マリアンネ:田中三佐代
 ヴァルツァッキ:谷川佳幸      アンニーナ:増田弥生
 歌手     :佐野成宏

  クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
                     栗友会、東京少年少女合唱団
                     演出:飯塚励生
                        (9.25 @トリフォニーホール)

何と言っても、オクタヴィアン初挑戦の藤村さんがいい。
あの小柄な体で、そうしてあんなパワーある声が出せるんだろう。声が大きいというよりは、明晰で豊かな声量だから、オーケストラを圧してホールに響き渡るのだ。
その声も、暖かであり感情移入も豊かなので、聴き手の心をとらえてやまない。
バイロイトでフリッカやクンドリーを歌う藤村さんが、本場でも大きな歌手に負けずに評価されているのがよくわかる。日本人ばなれした声量と、日本的な細やかな歌唱。
 アイスランド生まれのクリスティンソンの深々としたバスにも感心。クルト・モルを思い出してしまったくらい。
ウィーンで活躍するグスタフソンのマルシャリンは、そのアメリカ人風の豊かな表情のとおり、少し大らかな歌唱だったが、若い歌手達の中にあって貫禄たっぷりの歌声。
Chen20reiss20fotoklein 予定された歌手が体調不良で降板し、代役で登場のライスは、驚くほど立派な声だった。
ゾフィーにしては声が強すぎかもしれないが、その美貌がまた素適な彼女、今後活躍しそうな歌手に思う。(画像)
他の諸役は、みんな良し。

それにしても、アルミンクと新日フィルの精緻でシンフォニックなシュトラウスは聴きものだった。右を向きすぎて疲れたとき、数々のワルツを優雅に指揮するアルミンクの姿を眺めたりしていたものだ。
 
 シュトラウスの巧みでニクイまでのオーケストレーション。
こうして舞台にあがったオーケストラを一望することで、普段ピットで見えないことが実によくわかった。弦楽器もソロあり、重奏ありで変幻自在な透明感をかもし出す。
何度観ても、何度聴いても、飽くこと無い「ばらの騎士」、そしてシュトラウスの音楽。
3幕の3重唱では、お約束の陶酔郷に誘われ、思わず涙が・・・・。

さて、5つめの「ばらの騎士」。
ひとつだけ、特殊な上演ではあったが、「これもあり」の「ばら騎士」。
あえて比較はいたしません。

次の「ばらの騎士」の舞台は、いつになるでしょうか?

「ばらの騎士」の過去記事

  新国立劇場        シュナイダー指揮
  チューリヒ歌劇場     ウェルザー・メスト指揮
  ドレスデン国立歌劇場  ルイージ指揮
  
神奈川県民ホール(琵琶湖) 沼尻竜典指揮
  ドホナーニ指揮のCD&4つの舞台のレビュー
  バーンスタイン指揮のCD
  ヴァルヴィーゾ指揮のCD(抜粋)
  プレヴィン指揮の組曲版CD

Dsc07552 開演前のホールの前の夕空。

そしてうれしいニュース。
カルロス・クライバーの「ばらの騎士」73年ミュンヘンの正規CDが出るとのこと。
リッダーブッシュのオックスが聴ける。  

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コメント

二日目を観てきました。オケが素晴らしく、歌手も揃って歌唱ルックスともによく見ごたえ満点でした。特に新日フィルはアルミンクの薫陶よろしきを得て、柔らかくしなやかな響きやデリケートな表現力に磨きがかかってきましたね。前回の「こうもり」から比べても一段とウィーンらしき雰囲気を醸し出していたんじゃないでしょうか。ニュアンスたっぷりのワルツなど本当に素敵だった!このコンビがは一体どんなヤナーチェクを聞かせてくれるのか、11月が待ち遠しいです。

それにしても一週間のうちに飯守さんの「トリスタン」に今回の「薔薇の騎士」ですから、日本のオペラも凄いことになってきたものですね。隔世の感に堪えません。

投稿: 白夜 | 2008年9月27日 (土) 23時33分

白夜さま、こんばんは。
土曜の公演をご覧になったのですね。
私は出遅れましたので、手配をかけたら土曜は売り切れでした。
トリスタンと一日おいての「ばらの騎士」となりましたが、心地よい甘味な疲労感に包まれました(笑)
 このコンビのコンセプト豊かなコンサートは、本当に注目ですね。私も、ヤナーチェクが歌手たちとともに、楽しみでなりません。
これだけ、素晴らしい演奏会やオペラが続出すると、ほんとうに嬉しい悲鳴ですね。新国の新シーズンも始まりますし・・・・。

投稿: yokochan | 2008年9月28日 (日) 00時18分

yokochanさま こんばんは

「バラの騎士」を5公演ですか 
羨ましい限りです。それに「トリスタン」などもありますよね〜。いつもブログで、yokochanさんの演奏会、オペラ公演の感想を読ませてもらっていると、やはり経済力の差のようなものを感じますね。

昔であれば、オペラ公演、東京と大阪で必ずと言っていいほどあったのですが、関西は公演すらないことが増えてきていますよね。それに、文化にお金を書けることが罪悪であるかように言う政治家まで;; 情けない限りです〜。無駄こそ文化だと思うのですが〜。

ともかく、いつもブログ、愉しく拝見しています。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2008年9月30日 (火) 20時51分

rudolf2006さん、こんばんは。
あまりに好きなものですから、特定の楽曲ばっかり集中して聴いてしまいます。
ワーグナーとシュトラウスなわけですが、それでも昔では考えられないくらいに上演されるようになりました。

はっきりいって、東京のコンサート事情は、完璧に飽和状態です。楽員さんたちも、それだけでは食って行けない状況でしょうし、聴衆も連日通えるものではありません。
そのあたりのバランス配置をもっと全国的に考える組織や団体が必要に思います。
やはり、国や行政がもう少し心を注いで欲しいものですね。

>無駄こそ文化だと思うのですが<
ほんと、おっしゃる通りです!
そこから生まれる人間の感情の機微こそ、日本人が育んできた歴史であり、文化ではないかと思います・・・。
コメントありがとうございました。
ご意見、とても納得して拝読しました!

投稿: yokochan | 2008年9月30日 (火) 23時34分

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» R.シュトラウス「薔薇の騎士」op.59 [オペラの夜]
<新日本フィル第436回定期演奏会> 2008年9月27日(土)15:00/すみだトリフォニーホール 指揮/クリスティアン・アルミンク 新日本フィルハーモニー交響楽団 栗友会合唱団 東京少年少女合唱隊 演出/飯塚励生 美術/大沢佐智子 照明/高沢立生 衣裳/田中晶子 マルシャリン/ナンシー・グスタフソン オクタヴィアン/藤村実穂子 ゾフィー/ヒェン・ライス オックス男爵/ビャーニ・トール・クリスティンソン ファーニナル/ユルゲン・リン 侍女マリアンネ/田中三佐代 ヴァルツァッキ/谷川佳幸 アン... [続きを読む]

受信: 2008年10月12日 (日) 22時31分

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