モーツァルト 歌劇「魔笛」 ハイティンク指揮
ディズニーランドは、今年開業25年。
もう四半世紀になるのか・・・・。
造られたものとはいえ、人々を夢の世界へと誘ってくれる別世界。
ディズニーランド開設を控えた2年前、その運営企業のオリエンタルランドが、新卒採用を大幅に募集した。
まさに、私の卒業年度で、就職先に選ぶ知り合いも何人かいたが、みんなちょっと変わり者だったりした。
自分はまったくそんな思いはなく、手堅い先を選んだつもりが・・・・・・。
人生は、わからないものである。
そんな夢破れたオヤジにも、束の間の時間、お伽の世界を開いてくれる。
息子が友達同士で行ってきた。そのお土産の袋だけでも、ウレシイ。
休日はオペラ。
こちらもお伽話でまいりましょうか。
モーツァルトの「魔笛」。
セリア、ブッファ、ジングシュピールと体系化されるモーツァルトのオペラは、それぞれに神がかりなまでの世界に達しているが、やはりブッフォのダ・ポンテ3作が群を抜いている。
その次が、ジングシュピールの「魔笛」とセリアの「ティトゥス」「イドメネオ」といったところか・・。
晩年のこのオペラは、「ティトゥス」、最後のピアノ協奏曲や弦楽五重奏、そしてレクイエムと同時期のものながら、それらの澄み切った透徹した世界から比べると、ちょっと違うように感じる。
ジングシュピールという性格もさりながら、劇場興行主シカネーダーの何でもあり的な台本のせいでもあるようだ。
善と悪との対立、生真面目な恋愛、喜劇的な恋愛、親子の問題、そして忘れてならないのは、フリーメイソンが目的とした倫理的な概念をも導入していること。
だから、いろんなものを盛り込みすぎて、その多様性ゆえに、ダ・ポンテ三部作のような人間の心に踏み込んだ求心力が薄れているように思う。
善・悪を明確にしすぎたためか、夜の女王は、パミーナの母親でありながら、復讐にこだわったがゆえに葬りさられてしまう。(もちろん、ザラストロは、敵を許すということを諭したのだが)物語的には、恋愛が成就したのに、母親がいなくなってしまって可哀そうなパミーナなのである。
ついでに言えば、若い二人の火と水の試練は、フリーメイソンの儀式であろうか。
今でも存在するこの結社は、秘密結社でも怪しげな存在でもなく、ダ・ヴィンチやゲーテ、ハイドンも、歴代アメリカ大統領も、日本の経営者も、ともかくいろんな方々がそのメンバーであった。日本にもしっかりと存在していて、芝公園のほうにあるらしい。
興味ある方はこちら。徳川時代から続くその歴史は読んでおもしろい。
ザラストロ:ロラント・ブラハト タミーノ:ジークフリート・イェルサレム
パミーナ :ルチア・ポップ 夜の女王:エディタ・グルベローヴァ
パパゲーノ:ウォルフガンク・ブレンデル パパゲーナ:ブリギッテ・リントナー
モノスタトス:ハインツ・ツェドニク 弁者 :ノーマン・ベイリー
第1の僧侶:ヴァルデマール・クメント 第2の僧侶:エーリヒ・クンツ
第3の僧侶:アンドレ・フォン・マットーニ 第1の武士:ペーター・ホフマン
第2の武士:オーゲ・ハウクラント 第1の待女:マリリン・リチャードソン
第2の待女:ドリス・ゾッフェル 第3の待女:オルトルン・ウェンケル
3人の童子:テルツ少年合唱団員
ベルナルト・ハイティンク指揮 バイエルン放送交響楽団
バイエルン放送合唱団
フルート:アンドラース・アドリヤン
(81年ミュンヘン)
フリーメイソンのトライアングルを意識してか、3人セットが多い。
そして、どうでしょう、この素晴らしい配役。
味わい深いキャストの妙に、ため息が出てしまう。
EMIやデッカは、こんな布陣をレコード録音に平気で行っていた。
ギャラの問題なんて頭になく、後世に残す録音のため(と思いたい)。
同じEMIのケンペの「アリアドネ」を思い起こすような素晴らしいメンバーだ。
贅沢にも、武士の一人が、ペーター・ホフマンですよ。
81年といえば、バイロイトでローエングリンを歌っていた第一線級の歌手なのだから。
ショルティの1回目の魔笛でも、こうしたマジックがあった。
69年の録音だが、二人の武士は、ルネ・コロとハンス・ゾーティンなのだから!
そしてホフマンは期待に違わず、目の覚めるような声を聴かせてくれちゃう。
この頃はまだすこしもっさり気味のイェルサレムの声とは大違い。
かつて、ハンブルク・オペラの来日公演では、この役は同じヘルデンのロベルト・シェンクだっが、シュンクの太い声が耳にビンビンと響いて痛いほどだった。
僧侶に往年の名歌手、クメントやクンツ。弁者は、オランダ人やウォータンを歌うワーグナー歌手の英国歌手ベイリー、待女たちも第一級の彼女たち。
婆さんがパパゲーノに歳を聞かれて答える17歳、それと同じ年のリントナーを起用したが、アイデア以上に素敵なパパゲーナでにんまり。
主役級たちの個々の歌は、当然に素晴らしいもので、ポップの人を惹きつけてやまない素敵な声によるパミーナは、同役で最高のものではないかと思うが、ちょっと大人の声になりすぎているのが気になるは贅沢か。
グルベローヴァの完璧でありながら、冷徹にならない夜の女王も文句なし。
ブラハト、イェルサレム、ブレンデルの3人は、良いけれど、競合のほかの諸盤の同役たちには敵わない・・・・。
男性陣の私の理想の配役は、モル、コロ、プライの3人であります。
カラヤンがザルツブルクで74年だけ上演した魔笛の配役が良かった。
コロ、プライ、マティス、グリスト、グルベローヴァ、ファン・ダム・・・すごいでしょ!
さて、ハイティンクの指揮はふっくらとしたマイルドな響きのモーツァルトを聴かせていて、堂々たるテンポを取り趣きに溢れている。ただし、それがドラマを語るまでは至っておらず、個々には極めて立派な音楽が鳴り渡っているのだが、シンフォニックな耳のご馳走で終わってしまうもどかしさがある。
でも当時は、これがハイティンクの個性で、その後コヴェントガーデンでの音楽監督経験を充分に積んで、オペラにおいても巨匠ぶりを発揮するようになる。
ここでは、バイエルンのオケの素晴らしさが、指揮をしっかりと支えている。
いつも書くけれど、バイエルンのオペラと放送のオケは、南ドイツ風の温かさと機能性を併せ持った素晴らしい存在なのだ。
私のライブラリーにある「魔笛」は、ベーム、スゥイトナー、サヴァリッシュ、ハイティンク、アバドで、永く狙ってきたショルティの旧盤が安くなったから、ぼちぼち聴いてみたいと思っております。名盤揃いの魔笛、皆さんの愛聴盤は?
いつも謎に思っていること。
ディズニーランドの照明はいつ、どれくらいで交換しているのだろうか?
着ぐるみは、臭くないのだろうか?
ミッキーに入っているのは、男か女か?
ミッキーは何人いるのか?
夢が壊れちゃうから、誰も答えられない問題なのだ。
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コメント
「魔笛」エエですね。大好きなんです。とくにこのハイティンク盤は女声2人が最高でありまして、ルチア・ポップのパミーナ、エディタ・グルベローヴァの夜の女王が聴けるだけでも、素晴らしいと思います。イェルサレムもまずまずですし、ブラハトもよろしいんじゃないかと思います。ただ、ブレンデルのパパゲーノが真面目すぎて、イマイチでした。
さて、愛聴盤ですが、ベーム、スゥイトナー、サヴァリッシュ、ハイティンクはyokochanさんと全く同感、あとはショルティ(キャスト最高!特にプライのパパゲーノ)、クレンペラー(僕の大好きなポップ様の夜の女王が聴けます)、C・デイヴィス(録音がエエです。メルヴィエのパパゲーノも味わい深いです)、マリナー(これも録音がイイです。テ・カナワのパミーナはちと・・・・(^^ゞ)、カラヤン(DG)といったところでしょうか。
あ、スミマセン。キリがありませんね。
投稿: mozart1889 | 2008年11月30日 (日) 22時37分
Mozart1889さん、こんばんは。
魔笛がかなりお好きですね。
台本は弱いですが、さすがはモーツァルト、音楽は素晴らしいものがありますね。
ハイティンク盤は、おっしゃるように、女声ふたりが最高。
本文で書きもらしましたが、私の好きなミーメ、ツェドニクのモノスタトスも最高であります。
ブレンデルのまじめさは、プライを知ってしまうと味気ないですね。
ショルティ旧盤に、そしてポップの聴けるクレンペラー盤は欲しいです。
あと、キャスト的にも、ノリントン盤の明るい演奏も聴いて
みたいものです。このオペラは、いろいろと欲しくなる名盤揃いですね。
投稿: yokochan | 2008年11月30日 (日) 23時42分
おはようございます。
このCDは初出の時に購入しました。
これが欲しいという訳ではなくて「魔笛」をCDで聴きたいという気持ちからでした。
でも大当たりでした。
確かに女声陣に比べると男声陣が劣る感じは否めませんが、こんなにも肌触りが良くて魔笛の世界に浸れる演奏はそんなにないと思います。録音も素晴らしい!
投稿: 天ぬき | 2008年12月 2日 (火) 10時16分
天ぬきさま、こんばんは。
このCD、実は店の値付け間違い(と思われます)で、格安の購入したものですから、妙に愛着があります。
10年以上前、こともあろうに、某タワーでして、今ならこんなことはありえないでしょう。
「肌ざわりのよい、魔笛の世界」、そうですね!
まさにご指摘のとおり。
録音も含めて、上質な魔笛が聴けますし、女声陣の素晴らしさと味のある配役に私もまいってます。
投稿: yokochan | 2008年12月 2日 (火) 23時06分
グルベローヴァ、ハイティンクの相次いでの訃報。グルベローヴァのこの魔笛、レコード発売時の中のブックレットを見れば誰をフィーチャーしたものかわかりますよね。(表紙がグルベローヴァ、狂乱の場と同じポートレート)
このレコードはよく聞きました。ミュンヘンでの録音でしたのでサヴァリッシュの映像もありましたから失念していましたが、ハイティンクの指揮でしたね。パルジファルを聞いたことのあるイェルザレム、ルチア・ポップ(永遠のゾフィー)そしてかつては夜の女王も録音している。私がミュンヘンを訪れた年には州立劇場に彼女の訃報が。
この当時、1980年ごろは夜の女王といえばグルベローヴァでしたね。
CD、LDも持ってました。この当時、ロンバールがやはりグルベローヴァの夜の女王で録音した盤があり、キリやホフマン、その他けっこう豪華なキャストでしたが日本では発売になりませんでした。海外や中古のレコードを扱う店ではいつもこのレコードを探していましたが見つからず、最近(2021年)になりやっとCD化されたようです、そちらを今は聞いています。
ハイティンク盤は実家でレコードを探したのですが、ついに見つからず。
私がオペラを聴き始めた頃のレコード、懐かしさ以上に聴きたい。
投稿: DrMiracle2010 | 2021年10月31日 (日) 08時36分
DrMiracle2010さん、こんにちは、コメントありがとうございます。
ハイティンクの魔笛は細かいところまで豪華な配役の布陣ですね。
そして、ご指摘のロンバール盤もついにCD化されました。
私の秘蔵の魔笛は、74年のザルツブルクでのカラヤンの演奏です。
FMをエアチェックしたものですが、ここでもグルベローヴァです。そしてルネ・コロ、マティス、プライというこれまた豪華版。
いずれ正規盤となることを望みます。
投稿: yokochan | 2021年11月11日 (木) 08時58分