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2008年11月13日 (木)

グレツキ 交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」 シモノフ指揮

Cosmos 黄花(きばな)コスモスであります。

コスモスは強く、やたらに群生するけど、集まるととてもきれいだ。

でも一本一本は、とても華奢な茎で、今にも折れそう。
そして花はとても可憐で愛らしい。
(オヤジのいう台詞じゃないけれど)
でも、根っこは結構しっかりしてます。

人間も一人一人かくありたいもの。

Gorecki_sym3_simonov

歌入り交響曲シリーズ、終章は、ポーランドの作曲家ヘンリク・グレツキ(1933~)の交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」。
その第2楽章が、BBC放送(?)で繰返し放送されたこともあって、ジンマンとアップショーによるCDがヒットチャート入りしたという話も、最近のことながら、何故か懐かしい。
 あくまで、癒し系の音楽として大いに評価されたから。
今の世の中、さぁといえば、「癒し」を売り物にすることばかりだけれど、その「癒し」の概念も変転しつつあるように思う。
92年頃からブレイクした「悲歌のシンフォニー」は、音楽による癒しというブームを巻き起こした。その前から「アダージョ・カラヤン」とかなんとかで、コンピレーション・アルバムが作り出されていたから「癒し」の下地は出来ていた。
私のようなヘヴィー・クラヲタ・リスナーからすると、ミュージック・セラピーなんて鼻もひっかけないジャンルだけれど、「悲歌のシンフォニー」は癒しなんぞとは全然違う、メッセージ発進力の強い音楽に思う。
 
 クラシック音楽界の癒しは、あいもかわらず、耳ざわりのいい音楽の羅列ばかりだけれど、ドラマや日本の歌々は、リアルに人に涙に訴え、五感を刺激することがトレンドになりつつあるように思える。「篤姫」などはその典型ではないかと。
ともかく、男も女も泣く。あたり構わず泣く。
そして、私も音楽で泣くことにかけては誰にも負けていない。

ペンデレツキと同い年のグレツキは、初期の頃こそ前衛的な作風であったらしいが、アウシュヴィッツ(オシュウェンツィム)生まれだけあって、悲惨を重ねた光景が染み付いているであろう。
調性へ回帰し、中世の典礼音楽やルネサンス期のポリフォニーなども考慮して、独自の響きを希求し、構成も単純化・明晰化するようになった。
明るさと祈りのような音楽、そして単純な音形の繰返し(ミニマム音楽)などがグレツキの音楽の特徴となったようだ。
暗い過去や環境からの脱却を音楽に込めたのかもしれない。

この曲は、1976年の作品。3つの楽章からなり、ソプラノ独唱を伴なう。
第1楽章、コントラバスでうめくように、ささやくように開始される、24小節の定旋律の繰返し。重々しく悲しみに満ちた音楽は、徐々にこちらの胸を締め付けてゆくようだ。
ソプラノが、ポーランドの祈りの聖歌を歌う。聖母マリアの嘆きであろうか。
 私の愛しい、選ばれた息子よ、その傷を母と分かちあい給え・・・・
 私の愛しい恵みよ、あなたはもう私のもとを離れようとしているのだから・・


第2楽章、美しいけれども、あまりにも切なく重い雰囲気が支配する。
ナチスの独房の壁に刻みこまれた祈りの言葉。18歳の女性によるもので、独唱によって切実なムードを伴なって歌われるが、不思議と心休まる音楽・・・。
 お母様、どうか泣かないで下さい。
 天にまします清らかな王女さま、どうか私をお救いください・・・・

第3楽章、この楽章はこれまでの音楽と雰囲気を異にするものだから、違う曲になってしまったのかと錯覚してしまうくらい。普通にオーケストラ伴奏で、独唱が素朴で寂しげな歌を歌いはじめるものだから、「カントルーヴのオーヴェルニュの歌」を思い起してしまった。
ポーランドの民謡だそうな。
これがなかなかに胸を打つ。同じ音形をこれまた繰りかえすオケにのって、クリアなソプラノの歌声が単純な歌を楚々と歌う。歌好きの私も満足のこの楽章。
 亡くなった息子を思い歌う母。
 私の愛する息子はどこへ、きっと蜂起の時に殺されてしまったのでしょう・・・ 

ジンマンのCD以来、本場ポーランドのものを中心にいくつも録音されている。
今日はちょっとひねって、名匠ユーリ・シモノフ指揮のロイヤル・フィルハーモニーの演奏。
爆演系シモノフは、もともと劇場の人だけに、音楽の起伏をしっかり捉えてドラマをしっかり見据えた演奏をする人だ。淡々とした中に、おやっと思わせる聞かせ方があったりして、とても充実した「悲歌のシンフォニー」となっている。
とおり一片のムード音楽などでは決してなく、クラシカルの分野の交響曲のひとつとしての演奏といっていいかもしれない。
シモノフは手兵モスクワ・フィルと度々来日しているけれど、毎度毎度辟易とするソリスト連の冠コンサートで、まったく聴く気もおきない。
単独での来日プログラムを切に切に望みたい!
ソプラノのスーザン・グリットンが同情を込めた歌唱で、私のお気に入りの歌手アップショーの域に達しているかも。

これにて、歌入り交響曲シリーズは完結。
何度も書くけれど、音源が入手できない作品は多数あります。
ロパルツ、アイスラー、伊福部、團伊球磨、柴田南雄、クニッペル、メラルティン、ニストレム、ハンソン、ホヴァネス、シュニトケ、グラス・・・などなど。

でも、今回とりあげなかった心残りがあります・・・・。
時代は、さかのぼりますが次週3作ほど取上げておしまいとしたいと存じます。
乞うご期待・・・??

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