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2008年11月25日 (火)

追悼 リチャード・ヒコックス ディーリアス レクイエム

Hickox 何たることでしょう!!
訃報を見たとき、私は思わず落涙してしまった。
リチャード・ヒコックスが、11月23日、滞在中のカーディフのホテルで、心臓発作を起こし亡くなってしまった。享年60歳の若さで・・・・。
ブライデン・トムソン、ヴァーノン・ハンドリーに続き、これで英国音楽演奏の巨星がまた一人去ってしまった。あまりのことに、茫然としてしまう。
今後、英国音楽を担う指揮者はいったいどうなるのか・・・・・・。
この知らせを知った夕刻から、私は抜けがらのようになってしまった。

ヒコックスは、シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアを設立し、そのキャリアをスタートさせていて、彼が終生メインレーベルとしたシャンドスから、そのコンビの演奏はたくさん出ている。そして彼は、合唱指揮での神様的な存在でもあった。
ロンドン交響合唱団の指揮者を長くつとめ、同団をイギリス第一級に育てあげた。
プレヴィンやアバドの合唱作品のCDを見ると、ヒコックスの名前がクレジットされている。

A_mass_of_life そして忘れてならない功績は、大系的に録音した英国音楽の数々。
私には、ヒコックスの指揮で知って、その裾野を広げていった作曲家や作品がたくさんある。先にあげた物故した二人とあわせて、英国音楽好きにしてくれた大恩人なのだ!

ヒコックスを追悼して、ディーリアスレクイエムを聴こう。
このレクイエムは、異端のレクイエムである。
無神論者のディーリアスは、通常のレクイエムのラテン語の典礼文に曲を付けるはずもなく、テキストは、旧約聖書やシェイクスピアに、ニーチェである。
普通でないところが、ディーリアスたる由縁だが、このレクイエムは第一次世界大戦で散った若い芸術家たちに捧げられているところもまた、心優しいディーリアスたるところ。
 ハレルヤとアッラーが交錯する合唱でびっくりするが、対立する宗教の無意味さを表したものだろうか。肝心なのは、すべての存在を超えた汎神論的な存在というのが、ディーリアスの心の根底にあったもの。
最後は長い冬のあとに来る春を歌い、たゆまず廻りくる自然への讃美で、曲はとても美しい余韻を残しながら終わる。

宗教感とは遠く離れたディーリアスのレクイエム。
ヒコックスの死を音楽で悼むにはとても相応しい・・・・・。

ヒコックスの実演は唯一体験ができた。
過去の記事でも書いたことがあるが、忘れもしない1999年の5月のこと。
ヒコックスとプレヴィンがそれぞれ同じ演目をもって来演した。
オーチャードホールで、新日フィルを指揮して、エルガーの序奏とアレグロ、ディーリアスのブリッグの定期市、ブリテンの春の交響曲が演目。
快活で明快な指揮ぶりに、オケも合唱も独唱も、大いに反応して素晴らしい演奏会だった。CDでは、緻密さや繊細さも充分に兼ね備えているけれど、ヒコックスは思いのほかダイナミックな音楽作りをすることもわかった。
Howells_hymnus_paradisi あれから10年もせずに亡くなってしまうなんて。
ヒコックスの最愛のCDをふたつ。
まずは、ハウェルズの「楽園讃歌」。
あらゆる声楽作品のなかでも、私にとって大事な音楽。
悲しすぎるほどに美しい音楽。愛するものを悼む純粋な心を反映した音楽に涙は欠かせない・・・・・。

Alwyn_lyra_angelica あともう1枚は、アルウィンの「リラ・アンジェリカ」(天使の歌)。
この絶美の音楽は、ヒコックスの録音あってこそ広まったし、フィギアスケートでも日の目を見たものだ。
ハープと弦楽オーケストラによる協奏曲。
そのイメージ通りに、天女がエレガントに舞う様を見るような音楽。
本当に美しい音楽。言葉を尽くしても語りきれない美しさ。
そして今晩は、その美しさとはかなさに、涙を堪えることができそうにない。

私の英国音楽の師がまた一人、天に召されてしまった・・・・・・。

リチャード・ヒコックスさんの死を悼むとともに、謹んでご冥福をお祈りします。
悲しい~。

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コメント

訃報に接し、謹んで故人のご冥福をお祈り申し上げます。
イギリス音楽命のyokochanさんには本当に辛い知らせと思います。
まだまだやるべきイギリスの佳曲があったはず。残念至極であります。

投稿: IANIS | 2008年11月26日 (水) 00時29分

IANISさん、お悔やみどうもお世話さまです。
本当にショックでした。
今日は更新しないで、ヤナーチェクの余韻に浸ろうと思ったら、この訃報でした。
真っ暗闇でござんす!
レコーディング中のホテル滞在とあります。
旺盛な活動と裏腹に、体を酷使していたのでしょうか・・・。

投稿: yokochan | 2008年11月26日 (水) 00時50分

 マエストロのご冥福を心からお祈りいたします。

 壮大な歴史小説で読者を魅了した辻邦生先生が99年に突然亡くなられたとき、今のyokochan様とそっくりな半身を失ったようなショックを受けましたが、先生が亡くなられても作品は不滅なんだと己に言い聞かせたら以外に早く立ち直れました。

 でも60歳はあまりにも早すぎますよね。マエストロご本人もブログ主様もさぞかし無念でしたろうと思います。月並みですが、早く立ち直られてまた楽しい文章を書いてくださいね。

投稿: 越後のオックス | 2008年11月26日 (水) 09時30分

なんてことだ・・・。
訃報を知ったとき心底そう思いました。
まだまだ若く、ライブでも聴くチャンスがある、そう信じていました。
本当に悲しすぎます・・・。


投稿: ナンナン | 2008年11月26日 (水) 11時12分

越後のオックスさま、毎度ありがとうございます。
傷心はかなり深いです。
神は無情であります。まだまだヒコックスには活躍してもらいたかったです。
V・ウィリアムズの交響曲や声楽作品も中途で残されましたし、愛するブリテンのオペラも全部を残せなかった・・・。
でもそれは、遠い極東で英国音楽をむさぼる私のエゴかもしれません。
ご本人は無念でもあったでしょうが、その功績は燦然たるものがあります。
ヒコックスがいなければ、日の目に当たらない作曲家がたくさんいたのですから!

ご安心ください、しばしの感傷に浸り、のちは通常営業といたしますから。

投稿: yokochan | 2008年11月26日 (水) 22時00分

ナンナンさま、悲しいですね・・・。
私もショックはかなりでかいです。
「なんでやねん!!」っていう気分で、心が満たされません。
実演で、もっと聴きたかったです。
その分、日本では、尾高さんと大友さんに、ますます頑張ってもらいたいです。
今は、ヒコックスの残した音源をひたすら聴くのみであります。

投稿: yokochan | 2008年11月26日 (水) 22時04分

まったくびっくりです。NKPさん経由で知りました。

ヒコックスはこれからたくさんのイギリス音楽の録音をしてくれるはずでした。うちには(そんなに他のマニアの方ほどCDは持ってないのですが)ヒコックスのシャンドス盤がたくさんあります。ブリッジ集とか気に入ってるんですが・・・ホント残念です。

投稿: naoping | 2008年11月26日 (水) 22時18分

naopingさん、こんばんは。
あちゃ~!
私にとっては、バーンスタインやカルロスの死と同等の重みとインパクトがあります。
大昔なら、ヴィーラント・ワーグナーです。
なんで、こんなに生き急いだのでしょう。
精力的な人だったから、仕事のしすぎだったのでしょうか。
私もブリッジをはじめ、シャンドスやEMIのものをかなり持ってます。
ハウェルズ、ラッブラ、アルウィン、ティペット、ファーガソン・・・・。
残念ですね。

投稿: yokochan | 2008年11月27日 (木) 00時33分

こんばんは。
先日の尾高さんと札響の演奏会を思い出し、ディーリアスの「楽園への道」を聴こうと思いました。
そして唯一持っているヒコックス盤を聴きながらインターネットをしていたとき、訃報を目にしました。
ヴォーン・ウィリアムズの交響曲等、未完になってしまったシリーズは色々とあると多いますが
ヒコックス氏は数々の素晴らしい演奏のCDを残してくれました。
それらをいつまでも聴いていきたいと思います。
ヒコックス氏に哀悼の意と感謝の意を捧げます。

投稿: バートレット | 2008年11月27日 (木) 01時19分

バートレットさま、コメントありがとうございます。
札響が懐かしいくらいに、いろいろあったこの1週間です。
まさか、ヒコックスに死が訪れるとは・・・・。

バートレットさんも、さぞや驚かれたことでしょう。
いまは、残された豊富な音源に感謝をし、虚心に耳を傾けるのみであります。

投稿: yokochan | 2008年11月28日 (金) 01時27分

こんにちは!この記事でヒコックスの死を知りました。彼で知った、あるいは親しんだ作曲家が多いので、大変残念です。またフンメルの宗教音楽なんていうのも、彼で知りました。ブリテンのオペラも彼のおかげでもう一度聴いてみようかななどと思っていたところでした。残念至極、ちょっと昨日から力が抜けてしまいました。
今、封印をといてブラームスのドイツ・レクイエムを聞いています。

投稿: Schweizer_Musik | 2008年11月28日 (金) 07時17分

Schweizer Music先生、こんばんは。
私も、大いにショックを受けまして、彼のCDを聴きまくりました。レパートリーは広大で、CDもかなり出ているヒコックスですが、やはり合唱作品が素晴らしいですね。
ご紹介のフンメルのミサなんて、ヒコックスならではの選曲ですね。ハイドンのミサも全曲あるし、録音の積極さとその心くすぐられる選曲は、マリナーや親父ヤルヴィらと双璧です。
さびしいものですね。

投稿: yokochan | 2008年11月29日 (土) 00時52分

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