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2008年11月 3日 (月)

ヴェルディ 歌劇「マクベス」 アバド指揮

Desiny_hotel

本日眠いです。
朝6時前に起床、子供たちだけで冒険的に企画したディズニーランドの行きの運転手役が急遽私に回ってきたものだから。
休日ゆえ道路はスイスイ。7時20分頃、30分足らずで着いてしまう。いやはやこんな早くからTDL周辺はいるもんだねぇ、車も人も。
画像はヨーロッパのお城のようなディズニーランドホテル。
8時に帰宅して、さて何しようと悩む中高年ひとり。

Abbado_macbeth1

う~む・・・、そうだ久しぶりに純正イタリアのヴェルディでも聴こうじゃないか、と取り出したのがアバドの「マクベス」。

ミラノ生まれ、父も兄も係わりのあったヴェルディ音楽院卒業のアバドが、なるべくしてなったミラノ・スカラ座の指揮者。
68年、36歳で音楽監督となり芸術監督も経て86年までスカラ座とともにあったアバド。
リベラルなアバドは、国情ゆえ財政難だったスカラ座の地位をなげうってまで抗議したりもした。
ヴェルディの持つような高貴でかつ愛国的な熱い血のかよったアバドなのである。
 アバドの後を継いだムーティも長年スカラ座に君臨したが、その最後は後味の悪い決裂となってしまった。
ウィーンもそうだが、名門歌劇場というのはなかなか伏魔殿的な要素が多いようだ。
スカラ座を去って以来、アバドは故郷の指揮台に立つことはない。

スカラ座のオーケストラや合唱の素晴らしさはかつてより変わらないが、アバドが就任するまでは、60年代半ばのDGによる「ドン・カルロ」や「リゴレット」「トロヴァトーレ」等以降、正規の録音が久しく途絶えていた。
74年にこのコンビが録音したのが「ヴェルディ・オペラ合唱集」で、高校生の私はロンドンのオケとの雲泥の違いに驚愕し、次いで世界が待ち望んだ全曲録音がこの「マクベス」というわけ。
レコードアカデミー大賞を受賞した名盤中の名盤であります。
連続して翌年発売された「シモンボッカネグラ」の方がさらに完成度が高い弧高の名演。

26作あるヴェルディ(1913~1901)のオペラの中にあって、「マクベス」は10作目、作者33歳の作品。位置付けとしては祖国愛や激しい恋愛ロマンを描いている作品の多い初期から、人間の心理をより深く見つめ出した中期にかけてのオペラ。
後続が「リゴレット」や「トラヴィアータ」だからヴェルディが悩み多き登場人物のドラマにいかに素晴らしい音楽を書き始めた頃かがよくわかる。
シェイクスピアの原作にほぼ忠実。この原作もアバドのレコードを聴いてから読んだが、簡潔ながらシェイクスピアがマクベス夫人に与えた邪悪な野望の持主という性格は恐ろしいものであった。そしてそれに鼓舞されて人生を狂わせてしまうマクベス。
 ヴェルディもシェイクスピアの意そのままに、マクベス夫人を歌う歌手は「完璧に歌うのでなく、粗くて、しゃがれたようなうつろな響き」を持ち「悪魔的な感じ」を求めたという。
そして、マクベス夫妻の歌のスコアには、「ソットヴォーチェ」とか「叫びで」、「暗く、うつろに」「しゃべるように」・・・・、といった指示がたくさん書かれている。
 このオペラの二人の主役がいかに難しく、性格描写が求められるかがわかるというもの。
以前にテレビの劇場中継で、玉三郎のマクベス夫人、平幹次郎のマクベスを観たことがあるが、凄まじいまでの迫力とともに、権力を求める哀れさを感じた覚えがある。

第1幕
 3組の魔女たちが歌うところに、マクベスとバンクォーが登場。
魔女は、マクベスがコーダーの殿となり、やがて王ともなる。バンクォーは王の父となると予言する。そこへ、マクベスがコーダー領主となったとの使者が現れ、二人は驚く。
 マクベスの居城では、夫の手紙を読み野望にメラメラと燃える夫人がいる。
おりから、王ダンカンが今宵やってくるとの報に、帰館した夫に王暗殺をしむける。
ついに刺殺してしまうマクベスは、おお殺っちまったとおののくが、夫人は凶器の短剣を夫から取上げ、王の部屋へ置きにゆく。やがて大騒ぎとなる・・・・。

第2幕
 国王となったマクベス。魔女の言葉を一緒に聞いたバンクォー親子の存在が気になってしょうがない。
ならいっそのこと、と夫婦で次の殺害をたくらみ、刺客を雇ってバンクォーを殺してしまうが息子マクダフは逃げおおせる。
城の広間に客人をもてなすマクベス夫妻。しらじらしげに、バンクォーはいかがした?とか言いながら、バンクォーの席に座ろうかなどと言うと、血にまみれたバンクォーの亡霊が座っているのが見え動揺しまくるマクベス。
夫人はその場をとりなし、夫を励ます。

第3幕
 マクベスは魔女たちに気になる未来を見てもらおうとする。
魔女たちは、幻影を呼び出し、その幻影が語る。「マクダフに用心、女から生まれた者でマクベスに勝つ者はいない、バーナムの森が動かない限り戦いに負けない」と。
有り得ないことばかりに意を強くしたマクベスだが、王たちやバンクォーの亡霊が現れ、バンクォーの子孫たちが生き返ると聞かされ気絶してしまう。
 帰って夫人に報告し、二人でマクダフの城を攻めてしまえと毒づく。

第4幕
 マクベスの暴政に悲しむ人々の合唱。復讐に燃えるマクダフに亡き王の息子マルコムは、バーナムの森の木々を切ってそれを手に持って姿を隠そうと作戦を練り励ます。
城ではマクベス夫人が狂乱の死の境に立っている。
手についた血のしみや匂いに囚われてしまっている・・・・。
 マクベスは今しもイギリスと組んで攻めこようとするマクダフ軍に毒づき、最後の時が近づくのを悟り、自分の墓には悪口しか残されることはないと歌う。
そこへ、バーナムの森動くとの報。くそっとばかりに武器を持って戦場へ出るマクベス。
マクダフと出会い、母の腹をやぶって取り出された生い立ちを聞かされ、マクベスは「地獄の予言を信じたゆえ罰を受ける。卑劣な王冠のために・・」と歌い破れ死ぬ。
 勝利に沸く民衆とマクダフとマルコム。 
幕。


  マクベス:ピエロ・カプッチッリ   マクベス夫人:シャーリー・ヴァーレット
  バンクォー:ニコライ・ギャウロウ マクダフ:プラシド・ドミンゴ
  マルコム:アントニオ・サヴァスターノ 待女:ステファニア・マラグ
  医師  :カルロ・サルド         従者:ジョヴァンニ・フォイアーニ

 

   クラウディオ・アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
                    ミラノ・スカラ座合唱団
               合唱指揮:ロマーノ・ガンドルフィ
                         (76.1 ミラノ)


前奏曲からピシっと一本筋が通ったように張りつめたオーケストラの音。
すべてに意味があり、血が通っているように聴こえる。それがあまりにも雄弁であるがゆえに、この演奏を聴くにはかなりの緊張と集中力を要する。
アバドの指揮するヴェルディの素晴らしさは、緻密な表現の中にも持って生まれた歌心と劇場的な開放感もあることで、ドラマテックな場面でのたたみ込むような表現には興奮してしまう。よく優等生などと言われるアバドであるが、これらヴェルディをはじめとするオペラの数々を耳をかっぽじって聴くがよいだろう。

Abbado_macbeth2

名バリトン、カプッチッリのマクベスには邪悪さはあまりないかもしれないが、夫人と運命の綾に翻弄される矛盾した存在を美しく輝く声で表現している。
輝かしいバリトンだからこそ、強烈な性格表現にも嫌味がなく迫真の歌に息を飲む思い。
ギャウロウの深みある声も同様。
ただ、ドミンゴの声は立派すぎるというか、テカテカしすぎかとも思うのは贅沢か?
アバドがマクベス夫人として指名したヴァーレットは、同時期のムーティ盤のコソットの強烈さこそないが、緻密な頭脳的歌唱で、多彩な声の使い分けも見事。
ヴェルディが望んだほどの「悪魔的な感じ」というには遠いが、女性的なマクベス夫人でもあった。
合唱・オケともに超強力。
録音も超優秀。
なんだか誉めすぎのアバドのヴェルディでありました。

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コメント

こんばんは。
アバドの「マクベス」をLP時代に聴いていました。
当時はオペラをあまり聴きなれなくて(今でもですが…)、ひたすらオーケストラの部分ばかりに注目していました。
でも、このスカラ座のキレのある、生き生きとしたオーケストラがなんと魅力的だったことか。
今度はじっくり歌手も聴いてみたいと思います。

投稿: 吉田 | 2008年11月 5日 (水) 20時43分

吉田さま、コメントありがとうございます。
マクベスとシモン、クライバーのトラヴィアータ、この3つのヴェルディのレコードに何度お世話になったかわかりません。
おっしゃるように、スカラ座のオケのイキイキとした音色はウィーンでもベルリンでも出せないものですね。
当時最高のキャストも味わい深いです!

投稿: yokochan | 2008年11月 6日 (木) 23時40分

こんばんは。1年前の記事のレスとなってしまいます。アバド、ミラノ、スカラ座によるヴェルディの劇版「マクベス」「シモン」とたいていは持ってます。「ドン・カルロ」はフランス語復元版とカレーラス、フレーニなど。カラヤン、ベルリン・フィルと同じキャストによるイタリア語版。他もあります。バージンしてますね。
「マクベス」はヴェルディの初期作品にもかかわらず、劇版は出ていて、世界各地で舞台上演も行われているようです。「前奏曲」単独で取り上げているので心当たりあるのはカラヤンでしょうが、シャープな金管の響き方がマクベスを表す旋律となりますね。
なお、アバドはパリ版である「バレエ音楽」を劇版やベルリン・フィルで単独で取り上げているし、スカラ座別テイクによるスコットランド亡命者の合唱「しいたげられた祖国」と独断の場だそうですね。これを日本で上演する際「バレエ音楽」を入れるのは夢のまた夢。
凶悪事件が多発しているが、マクベスは現実でなく、物語であって欲しいですね。

投稿: eyes_1975 | 2009年12月12日 (土) 22時27分

eyes_1975さん、おはようございます。
コメントどうもありがとうございます。
カラヤンの前奏曲を取り上げてらっしゃいますね。
TBもありがとうございました。

マクベスは、初期から中期にかけての作品としては、もっとも録音が多いですね。
その中で、アバド盤は最高位に素晴らしいと確信してます。
同時期のムーティ盤もたぎるような音色が素晴らしいです。
バレエ付きの完全上演は、予算も絞られるなか、今後も難しいでしょうね。

人間の心に宿る闇に踏み込んだシェイクスピアと、それを音楽にしたヴェルディ、すばらしいですね。
現実に起こりうることがまた悲しいことであります・・・。

投稿: yokochan | 2009年12月13日 (日) 10時05分

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 オーボエからスタートし、トランペットのファンファーレとなり、ピッコロやピチカートが掛け合う。シンバルと同時に重圧感が出てきた。トロンボーンにキレのあるオーケストラ。さらに小刻みなシンバルも加わった。流麗なオーケストラにはアクセントとしてハープをあしらっている。ティンパニーと同時にキレのあるオーケストラに金管の迫力や小太鼓。静かな弦楽器にフルート、オーボエと掛け合い、シンバルと同時に重圧感ある金管と共に終曲。  11世紀スコットランドを舞台とした物語。将軍・マクベスとダンカン王の総督であるバンクォ... [続きを読む]

受信: 2009年12月12日 (土) 23時11分

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