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2008年11月26日 (水)

エルガー 「ミュージック・メイカーズ」 ヒコックス指揮

Kanazawa_sea 日本海に沈む夕日。
眩しい朝日の前の朝焼けよりは、沈みゆく太陽と夕日が好き。

そして空の青と赤のコントラスト。
それが刻々と変わってゆき、徐々に藍色から濃い夕闇にとって変わってゆく様がとても好きである。

私の人生も、どのあたりの色合いにあるのだろうか?
誕生月である11月は、いつもいろんなことが起きる。
それもよくないことばかり。仕事の不調、体長不良、家族の問題・・・・。
今年も例外でなく、仕事運は世相をしっかりと、いやそれそれ以上に反映して最悪。
それに追い打ちをかけるかのように、敬愛する英国指揮者ヒコックスの死。
つい先日、ヤナーチェクの奥深いオペラ「マクロプロス家の事」を観たばかり。
そのオペラの題材は、300年以上若いまま死ぬことがない美しいプリマドンナの物語。
生と若さへの欲望と、長く存在することの無常観。ヤナーチェクの深みのある音楽が、そうしたテーマに奥行を与えていて、見ごたえのあるオペラだった。
 その翌日に、精力的な活動の真っただ中にいたヒコックスの死があった。

私も、無用に歳を重ねてきた。いつでも、総決算を問われてもいい体制を敷いておきたいものだ。でもどこまでが悔いのないポイントなのか、忙しい日々の中にあってはすべてが心残りだ。まぁ、中間決算的な気分で日々を振り返り、明日を生きるのもいいのかもしれない。
誰もが迎えざるを得ない老い、そして死。だからそれをしっかり受け止める気持ちをもって、日々を過ごそうかとも思ったり。
音楽を聴けることをいとおしむ気分が、なおのこと高まっているのである。

Music_makers_hickox

エルガー(1857~1934)の「ミュージック・メイカーズ」は、1912年の作品。
メゾソプラノ独唱と合唱とオーケストラのための連作歌曲で、画家ゲイブリエル・ロセッティの友人でもあり動物学者でもあったオショーネシーの詩に付けたオード。
全部で10曲からなるが、まさに59歳にして、その時点での自己の中間決算的な音楽を成し遂げたような作品なのである。

壮麗さとともに、それまでの生きざまを振り返ったような潔さと神妙な観念に満たされた音楽。
それにより評価を不動にした「エニグマ変奏曲」のニムロッドと、直前に完成し大英帝国の交響曲となった1番の旋律が随所に現れる。
おなじみの旋律が独唱や合唱を伴い、感動的に歌われ、なぜか開放的な気持ちとある達成感に満たされる。

私たちは音楽の作り手。そして、私たちは夢を抱いてそれを追う。
荒涼たる流れにひとり舟をこぎ出すさすらい人。
淡い月の光のなか、私たちは、世界の心を動かし、そしてふるわせることができると思う。

ヒコックス追悼。
ロンドン交響楽団と手兵の合唱団を求心力強く導いた名演。
フェリシティ・パーマーのソロが、ニュートラルでありながら輝くばかりの低音を聴かせる。
彼女、メトの「ピーター・グライムズ」で詮索好きのいじわるなオバさんを演じていて、とても印象深かった。
英国音楽の作り手が頼りとしたヒコックスの遺品のひとつ。
カップリングの「海の絵」がまた最高、涙が出てしまった。

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コメント

誰でも色々抱えているのは同じですな。私はしばしば悩み無さそうとか言われますが、そんなことは無いのであって。不明熱が一番の問題ですが、それを筆頭に解決すべきことや、決断を迷うことはたくさんあります。
海の絵は大好きな作品です。あまり歌曲に詳しいわけではありませんが、海の絵だけはレコード屋で見つけると即買いしますよ。

投稿: リベラ33 | 2008年11月27日 (木) 05時29分

リベラさん、人はいろんな顔を持ち、悩みもそれ相応にあるのですね。私はほんの少々と思いつつも、人様からする想像に絶する問題だったり、その逆もあったり・・・・。
リベラさんもいろいろお持ちと!
生きているからこそ、みんな問題を抱えているのですね。
そして、だからこそ、音楽を享受する気持も大切に思います。さりげなく頑張りましょうよ!

海の絵、今回は泣けました。
すげぇ、いい音楽ですね。バルビローリやバレンボイムなんぞ最高ですよ。

投稿: yokochan | 2008年11月28日 (金) 01時35分

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受信: 2008年11月27日 (木) 23時36分

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受信: 2009年2月11日 (水) 20時06分

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