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2009年1月18日 (日)

ブリテン 「燃える炉」 ブリテン音楽監督

12 不景気ゆえに、各地で人出の目立った初詣。

人は何故に手を合わせるのであろうか。
人間の存在のうえに神を置き、その神も世界に八百万(あおろず)あり、その信仰ゆえに争いが起き、それも悠久の昔から続いている。
まったくなんのための神様わかりゃしない。

Burninng_fiery_furnace ブリテン(1913~1976)のオペラ。
17作品あるなかで、ひと際ユニークな存在が、教会寓話三部作。
カーリュー・リヴァー」(64年)、「燃える炉」(66年)、「放蕩息子」(68年)からなる。
いずれも1時間あまりの室内的な作品で、オペラという枠を超えて、聴衆も劇の参加者のような立場で観劇する気分になる不思議な世界を持っている。

教会寓話というには、それぞれ教会で演奏されるのを念頭においたこともあるが、内容が旧約・新約それぞれの聖書から題材を得ているからである。

日本の能にインスパイアされた「カーリュー・リヴァー」が一番有名だし、内容的にも独創的で聴きごたえがある作品。
でもほかの二つはどうだろう。
正直、これまで聴いたことがなく、ブリテンのオペラを聴いて行くうえで、順番がやってきたに過ぎないような存在。
作曲者が初演直後に録音したものしかそれぞれ音盤が存在しないのも寂しいし。
それと、なんだか怪しげなジャケット。
ちょっと逡巡してしまう雰囲気なのだ。

音楽は、Salus aeterna(とこしえの救い主)という讃美歌によって始まる。
教会の奥の方から無伴奏で歌いながら徐々に近づいてくる。
この遠近感のステレオ効果は、まぎれもなく、当時のデッカの録音技術の先端。
ジョン・カルショウ、ゴードン・パリー、ケネス・ウィルキンソンの名前がクレジットされている。
この場面のあとは、フルート、ホルン、トロンボーン、数人の弦楽奏者、ハープ、オルガン、打楽器などの編成による古典風であり、エキゾテックでもあり、この世ならぬ風でもあり、といった、まさにブリテン特有の響きみ満たされてゆき、そこに朋友ピアーズをはじめとした名手たちの狂気にも似た迫真の歌唱を聴くとき、すっかり引き込まれる自分の姿があった。
上記のような特殊な編成と、歌手たちはすべて男声に少年・・・・。
またもやの世界ではありますが、こりゃもうブリテンを聴くうえでの宿命でございますな。

聖歌を歌いながら修道院長や助祭らの一団がやってきて、院長が善男善女の皆さん、これより神聖な劇をご覧にいれますと、口上を述べる。
時は、紀元前6世紀のネブガドネザルが支配するバビロニア。
イスラエルの三人の若者が、バビロンの3つの地方を納めるように選ばれたことから、ネブガドネザルのもとに連れていかれることとなったが、3人の父たちには、信仰を裏切らないように強く言い含められていた・・・・。


院長は、ネブガドネザル役となって、劇が始まる。
3人が登場し、王のもとで占星術師からバビロニア風の名前を与えられる。
そして、飲めや歌えやの祝宴が始まるが、3人は、いっさいを口にせず、飲みものも手にしない。
これに怒った占星術師とネブガドネザル。イスラエルの法により禁じられてますと3人。
怒りながら退席しつつ、占星術師は王にバビロンの危機を忠告し、偶像の崇拝による人心の一体化を勧める。
黄金の像の建立が布告され、拝まなければ「燃える炉」に投じられるとした。


皆が拝むなか、件の3人は自分たちの神を祈るのみ。
ついに王も怒り、3人は「燃える炉」送りに、しかも7倍熱くしろと命令。
ところが、炉には、3人のほかにもう一人現れる・・・・。
天使がやってきて、3人とともに祈り、そして炉の中を平然と歩んでいる。
これをみて驚愕したネブガドネザルは、心を改め、占星術師を追放し3人の神を真実として布告する・・・・・。


修道院長の姿にもどった院長は、「友よ忘れてはならない、黄金は火で試される。そして人間の勇気は屈辱の炉で試されるのだ」
劇の終わりを宣誓し、またもや賛美歌を歌いつつ退席する。

どーですか?
ちょっとアレですが、悪くはないでしょう?
ストイックさが「モーゼとアロン」を思わせるし、黄金の像を讃美する廷臣たちの歌やその伴奏が、かなりまがまがしく怪しげ・・・・・。
それが延々と続くものだから、このあたりはちょっと辟易としてしまうし、燃える炉の中での天使の声は「ア~」しか歌わなくて、しかも少年ちゃんなもんだから、これまた勘弁して欲しい・・という気分になってくる。
こんな場面と聖的な清涼感が混在する独自の作品。
そう何度も聴けないけど・・・・・、興味のある方は聴いてみてくださいまし。

 ネブガドネザル:ピーター・ピアーズ   占星術師:ブライアン・ドレイク
 アナニアス:ジョン・シャーリー=クヮーク ミサエル:ロバート・ティアー
 アザリアス:スタッフォード・ディーン   伝令:ピーター・リーミング

     イギリス・オペラ・グループ管弦楽団/合唱団
     音楽監督:ベンジャミン・ブリテン、ヴィオラ・タナード
               (1967年5月オックスフォード・パリッシュ教会)

残る「放蕩息子」も近々取り上げます。
まだオペラは、これで6作目。前作制覇まで、あと11作品。
先は長いです。

過去の三部作

「カーリュー・リヴァー マリナー指揮」

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コメント

おもしろいオペラですね~。
ちょっと「魔笛」の試練みたいですね。
ブリテンがゲイだったというのは知ってます。
美少年に院長が迫る、という演出にしたらおもしろそう。

投稿: はざくら♪ | 2009年1月21日 (水) 17時13分

はざくら♪さま、こんばんは。
ご返事が遅くなりまして申し訳ありません。

そうそう、魔笛に似てますね。
教会での上演を想定していたようですので、さすがに院長さんご乱心はマズイでしょうねぇ(笑)
でもブリテンの諸オペラは、現在の斬新な演出では、そうした解釈もしたくなる場面に溢れております。
でも、ちょいと見たくないですがね・・・・・。


投稿: yokochan | 2009年1月23日 (金) 21時58分

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