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2009年1月22日 (木)

バックス 2台のピアノのためのソナタ ブラウン&タニェール

13 冬の空。
月も浮かんでます。

私の住む関東の太平洋側は、冬はずっと晴天が続く。
この晴れと乾燥が当たり前になってしまうから、雨がとても新鮮だったりする。

毎日、曇天だったり雪が降ったりする地域の方々には申し訳ないくらいの青空。
駅に降り立ったりしたとき、空を眺めて、その青さに感激したりする。
そんな気持ちのゆとりも大事だなぁ。

Bax_piano_duos 生粋のロンドンっ子でありながら、ケルトを愛し、アイルランドや北部イングランドをこよなく好んだアーノルド・バックス(1883~1953)。
英国音楽でも、その独特のファンタジーに富んだ作風は、一聴、とらえどころがないけれど、何度も繰り返し聴き、いったん妖精が飛び交うような幻想ムードにはまってしまうと、もうバックス・ワールドから離れられなくなってしまう。

ディーリアスに始まった、私の英国音楽の旅は、バックスを知ることによって、ケルトに魅せられた他の作曲家たちもすぐさま視野に入ってきて、とても幅が広がった。
具体的な描写音楽ではないけれど、その音楽はほとんどが、四季の移り変わりや、アイルランドやスコットランド、北欧の大自然を元にして得た心象風景を元にしている。
ディーリアスを好きな方なら、きっと気にいっていただけるバックス・ワールド。

それと大事なことは、私にとってなくてはならないツールとして、アイリッシュやアイラ系のモルトウィスキーとの相性。
燻したピートを含有したウィスキーのシャープでほろ苦く、かつ甘みのある味。
それが、バックスの音楽にぴったりなんだ。

シンフォニストとしてのバックスを聴くのもいいが、ピアノの名手であったバックス。
ソロ作品に加え、学生時代からピアノデュオも組んだりして、オペラの伴奏や編曲などをかなり行っていたという。
 そして、作曲家として自立後は、ロバートソン&バートレット夫妻のピアノチームのためにいくつかの作品を残し、それらがまた、なかなかの桂曲なのである。

 1.2台のピアノのためのソナタ
 2.「Red Autumn」
  3.「ハルダンゲル」
 4.「毒を入れられた噴水」
 5.「聖アンソニーを誘った悪魔」
 6.「Moy Mell~アイリッシュ・トーン・ポエム~幸せな平野」

    ピアノ:ジェリー・ブラウン&セータ・タニェール


3楽章形式、22分あまりのソナタは、1929年の作品。
第3交響曲や、荒涼としたロマンあふれる「ウィンター・レジェンド」と同じころ。
後者は、ピアニストのハリエット・コーエンのために書かれた曲で、不倫ながらも二人の仲は公然の事項だったという。そんな時期だから、このソナタは何か春の息吹を感じさせる芳香に溢れているよう。
春の物憂いくらいの日の中、もやもやとした雰囲気と爆発的にはじける自然。
ケルト的な妖精ムードに綾どられた静的な様相も、夢想的でとてもいい雰囲気。
実に、いい曲である。

そのまま訳すと「赤い秋」。それよりも、red autumnの方が詩的だな。
オーケストレーションも施そうとしたらしく自然の機微を感じとった、極めて詩的な音楽。
これぞ、バックスなのかもしれない。
このそこはかとない、何を主張するでもない感覚的な音楽は、ディーリアスにも相通じるもので、聴き手はただ音楽に身を委ねて、ぼぅ~っと聴いていればいいと思う。
日本の枯淡の秋の紅葉と違って、鮮やかな赤が静物画のようにとどまっている雰囲気。

一番、耳に馴染みやすく楽しいのが「ハルダンゲル」。
ノルウェーの風光明媚な一地方の名前であると同時に、そのノルウェーの伝統楽器のヴァイオリンの一種。弾むリズムがとても楽しい。
そう、グリーグに思いを馳せて書いた作品なのである。舞曲のような一品。

次の3つの作品は、まるで表題付きの交響詩のよう。
しかし、あまり曲の云われやデータがない。
とても静かで神秘的な「毒入りの噴水」、画家マティスの描いた場面「聖アンソニーを誘惑する悪魔」は、スクリャービン的であるともされる。
この二つは、わたしにはちょっと、インスピレーション不足に思われたが。
 最後のMoy Mellは、かなりいい。
これは1916年頃、アイルランドの印象を取り込んだ初期の作品で、それが極めて素直に表れていて、明るくも美しい。そしてとても旋律的で、2台のピアノの使い分けが効果的で、このCDで初めて、あらピアノ2台なのね、と感じ入る曲であった。

以上、いずれも、オーケストレーションがなされれば、立派にバックスの交響詩として通用する、まさにバックスワールド大展開の素敵な音楽。
英国男女のペアによるこの演奏、とてもいいのではないでしょうかnote
そして、燃えるような紅葉のジャケット、とてもいいです。

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