プッチーニ 「ラ・ロンディーヌ」~つばめ~ METライブビューイング
METライブビューイング、プッチーニの「つばめ」、ラ・ロンディーヌを観劇。
木曜から名古屋へ一泊出張。
そういえば、ラ・ロンディーヌ上映してるんだった!
朝思い出して調べたら、金曜が最終日。
これはいけない!激しく仕事を片付けて、東銀座の東劇へ間に合いましたよ。
ちなみに、名古屋でよく行くお寿司屋さんで高○純○さんに遭遇
テレビで見る通りのナイスなお方でございました。
さて、プッチーニの「ラ・ロンディーヌ」(私はつばめと呼ぶより、この方が好きなのであります)は、名作揃いのプッチーニのオペラの中にあって、あまり聴かれない作品。
でも、わたくしは、この愛すべき素敵なオペラが大好き。
アンナ・モッフォの歌った一組をずっと愛聴していて、いつかその舞台を見てみたいと思っていた。
先頃、待望のDVDも出たが、まだそちらには手が回らないうちに、メット上映がやってきたわけであります。
マグダ:アンジェラ・ゲオルギュー ルッジェーロ:ローベルト・アラーニャ
リゼッタ:リゼッタ・オローペサ プルニエ:マリウス・ブレンチュー
ロンバルド:サミュエル・ラミー
マルコ・アルミリアート指揮 メトロポリタン・オペラ・オーケストラ
(2009.1.10 @メット)
メットらしい写実的でゴージャスな舞台。そして、このオペラにうってつけの、美男美女のおしどりコンビのゲオルギューとアラーニャ。いや、この二人のためにプッチーニが書いたのではないかと思えるくらいになりきっていた恋人たち。そして、あまりに美しく、洒落たセンスに満ちたプッチーニの音楽。
以上3つが、この上演のすべて
1幕は、世紀末パリの豪勢なお屋敷。金持ちパトロンの別宅といった風情で、ゲオルギューのぴったりフィツトのドレスがなかなかにセクシー・・・・。髪もクレオパトラのよう。
2幕は、社交の場、要は男女の出会いの場のホール。アールデコ調な造りで、壁も柱も細部にいあたるまで、ほんとうによく出来ている。
マグダは、若い頃のお針子時代に逆戻りした純情そうな花のドレス。
一方、お小姓のリゼッタは、ご主人のモード風のドレスに身を包んでいる。
3幕は、陽光降り注ぐリゾート地にある別荘のテラス。大きな窓のステンドグラスは葡萄の柄だし、壁や柱には、地中海風の装飾が。
ここでのマグダ、またもピッタリドレスで素敵すぎ。相方ルッジェーロは、生成りのベストに白いシャツ、首元にはスカーフと、すっかりリゾートルック。
おおまかな筋は過去記事をご参照いただきたい。
田舎出の青年と恋に落ちた、金持ちの囲われ者で愛に憧れる女性とが恋に落ち一緒になるが、女性は自分の出自を恥じ入り、自ら身を引き青年と別れる。
「椿姫」と「ボエーム」、「ばらの騎士」、「微笑みの国」と同じように本心とは裏腹に、身を引く悲しさと愛するがゆえの優しさ・・・・・。
ここに付けられたプッチーニの音楽は極めて美しい。
こんな素敵なオペラが何故不遇なのか?
映像ながら、始めて舞台を観て思ったことは、3幕=2時間の中のドラマの配分のバランス感の悪さ。1幕では、マグダとその仲間の生活ぶりと、狂言回し的なプルニエによるマグダのつばめのような人生(飛び立ち、また帰ってくる)の示唆。
2幕は、マグダとルッジェーロの出会い(ボエームの2幕との類似)。
そして3幕は、二人の愛の巣とその切ない別れ。
そう、3幕でいきなりリゾート地に暮らす二人のベタベタぶりが描かれたと思ったら、いきなりお別れとなってしまう。このあたりにもう少し起伏が欲しかったところ・・・・。
思えば、人が死なないプッチーニのオペラは、こちらと「西部の娘」「ジャンニスキッキ」くらいなもの。ドラマティックな出来事に背を向けたプッチーニだった。
それと、優秀な歌手たちを揃える難しさ。
ずっと出ずっぱりのマグダは、華やかさと若さ、そして陰りをも歌いださなくてはならない。
相方のルッジェーロは、甘口テノールでは頼りなく、最後には行かないでくれとせがむばかりでなく、自立を覚悟する男も歌いこまなくては面白くない。
あと、プルニエとリゼッタのブッフォ・コンビにも存在感が必要。
今回のメット上演では、豪奢な舞台と優れた歌手、歌心溢れる若々しい指揮者とによって、弱点を感じさせない素晴らしい上演になっていたように思える。
まさに夫婦でしか醸し出すことのできない心の通いあった二人の演技は、極めて説得力があった。3幕で、ルッジェーロの母からの手紙を読むゲオルギューの顔色が変わらんとするのを押さえこむ演技の素晴らしさ。そして、心を決して過去を話し、潔く別れを言う場面には参った。覚悟はしていたが、またもやワタクシの頬を涙が・・・。
そして、必至に取りすがるアラーニャのルッジェーロは、ほんとに泣いてるんだ。
いやはやプロの凄さと、映像が入ることによる歌手たちの力の入れ具合に感心。
幕開き前に、総支配人からゲオルギューが風邪で不調ながら、今宵のために全力を尽くす旨、アナウンスがあった。
たしかに、1幕のアリアでは少し苦しかったし、高音はきつそうだったけれど、演技力でカヴァーしつつも、彼女のほの暗い声が逆に素敵な効果をあげていて、彼女はプッチーニが一番素晴らしいと確信できるものだった。
でもさすがの彼女もアップ画面はそろそろ・・・・・。
アラーニャは相変わらず好調だし、若いブッフォ二人組に、贅沢にもラミーの爺さんもビジュアル感も申し分なし。
今回の案内役は、ルネ・フレミングで、出演者たちへのインタビューがユーモアあふれる楽しいものだった。
いずれDVD化されるし、NHKでの放映もあることであろう。
多くの方に観て、聴いていただきたい愛すべき「ラ・ロンディーヌ」であります。
熱くなった頬を冷たい夜の空気で覚ましながら、築地から有楽町駅まで銀座を抜けて歩いて帰った。頭の中ではセンチメンタルなプッチーニの音楽が響きつつ・・・・。
ライブビューイングの今後。
「オルフェオとエウリディーチェ」
「ランメルモールのルチア」 ネトレプコ&ベッチャーラ
「蝶々夫人」 ドマス
「夢遊病の女」 デセイ&フローレス
「チェネレントラ」 ガランチャ!
過去記事
「モッフォのラ・ロンディーヌ」
「ゲオルギュー&アラーニャ ヴェルディ」
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コメント
こんにちは。コメントはコンセルトヘボウ以来になります。
つばめよかったですか~。
今年はライブヴューイングに行ってみようかなと思っています。これは映画みたいな要領で、当日入場券を買って見れるものなのでしょうか。
投稿: steph | 2009年2月15日 (日) 11時34分
stephさま、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。
「つばめ」は好きなオペラでしたので、映像で観ることができてとても感激でした。
そうです、映画を観るのと同じ要領で行けちゃいます。
ネットで先行して買うこともできますが、当日で全然大丈夫だと思います。
ポッポコーンはさすがに食べてる人はいませんが、飲み物(アルコール含む)もOKですので、気楽にいけます(笑)
投稿: yokochan | 2009年2月15日 (日) 16時01分