「カリーネ・ババジャニアン プッチーニ・アリア集」
一気にほころんだ桜も、ここ数日、寒さが戻って開花は足踏み状態。
この方が、長くもって楽しめるというもの。
こちらは、芝増上寺の桜。
結構咲いてます。
青空だともっと映えてきれいだけど・・・。
桜を落ち着いて、心から楽しんだことが、ここ数年ない。いつも、公私ともに切迫していて、桜を愛でる心のゆとりがないんだ。今年こそは。。。なんて思ってると散ってしまうんだな・・・。
今日は愛するプッチーニを聴きます。
歌うは、アルメニア出身のカリーネ・ババジャニアン。
名前がなかなかにインパクトあるものだから、そのエキゾチックな美しい容姿とともに、一度その舞台に接しただけで、忘れ得ない存在となったソプラノなんだ。
1月の新国立劇場での「蝶々夫人」で味わった、素敵な彼女の歌と演技。
声はどちらかというと大人しく、内省的な歌を心がけていたが、その演技の細やかでかつ、日本人的な所作の堂にいったさま。
その彼女が、演技の伴わないCDを出した。それも得意のプッチーニのアリア集で。
しかもメジャーEMIからデビューなのだ。
ただし、録音は2007年9月だから、正確には現在の彼女の姿(声)を反映したものではないけれど。
でも、私はこのCDを聴いて、誠実でまじりけのないピュアな歌唱が、とっても気に入ってしまった。
「蝶々夫人」~「ある晴れた日」「愛の二重唱」「愛しい坊や」
「ラ・ボエーム」~「私の名はミミ」「あなたの愛の呼ぶ声に」
「トスカ」~「歌に生き愛に生き」
「マノン・レスコー」~「この柔らかなレースの中で」「二重唱」「ひとり寂しく」
「修道女アンジェリカ」~「母もなく」
「トゥーランドット」~「お聴きください」「氷のような姫君の心も」「誰も寝てはならぬ」
S:カリーネ・ババジャニアン
T:ジュゼッペ・ジャコミーニ
ピエール・ジョルジョ・モランディ指揮 ブタペスト交響楽団
アリアだけでなく、二重唱までも含んだなかなかの企画。
こうしてまとめて聴いてみると、先に書いた誠実さは、知的な考え抜かれた歌唱の上に成り立っているものと痛感。その分、情熱や熱き思いのほとばしりは少ないけれど、たたでさえよく書かれたプッチーニの音楽が今ここに生れたばかりのような新鮮さでもって聴こえてくる。言葉のディクションも完璧。
有名・大ソプラノたちによって歌われた歌唱を、いやというほど聴いてきた私の耳に、ババジャニアンの真摯な歌唱は、じわじわと抑えた感情でもって迫ってきて、アンジェリカのアリアでもって、完全に虜とされてしまった。
そのあとのリューの涙さそうアリアもそう。これはいけない、曲の配列が素晴らしすぎる。
蝶々夫人は、一番歌が身についている感じだが、意外なほど淡泊であっさりしている。
次ぐミミも同じ印象で、いずれも楚々とした清冽な歌という印象が勝る。
トスカは、心の底からじっくりと歌いあげた充実感があって素晴らしいし、マノンも同様。
一曲、一曲、誠意とともに血が通ったあたたかさを思う。
でも、この素敵なババジャニアンのアリア集に、どうしたものか盛期を過ぎたジャコミーニが登場しなくてはならなかったのだろうか。
しかも、最後のトリに「誰も寝てはならぬ」が配置されていて、清々しく聴いてきたババジャニアンの歌声が少しかすんでしまう。
実は、ここでのジャコミーニはすんばらしいんだ。歳を忘れさせる往年の輝かしさがある。
が、しかし、ピンカートンとデ・グリューはまっくもっていただけない。
鈍重で疲労困憊。ピチピチしたババジャニアンに比べ、疲れきったタンホイザーのようだ。
普段明るく、爆発的なブタペストのオーケストラまで、そんな風に聞こえてしまう。
これが唯一の不満だが、ババジャニアン、大いに気にいりましたぞ。
モーツァルトやヴェルディを聴いてみたい。そしてシュトラウスもいいかも。
新国も、こうした人をしっかりレギュラー陣として押さえればいいのに。
※新国といえば、若杉さんは依然体調不良で、「ムツェンスク・・」の指揮を降板してしまいました。来シーズンの「ヴォツェック」「影のない女」もどうなるだろうか・・・。
若杉さん、心配でならない。
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コメント
先日のリベンジもつもりでわたくしもこれを買いました。
蝶々さんが目に浮かびます。。。
おじ様の歌声はボーナストラックなのでしょうか!?
投稿: moli | 2009年3月28日 (土) 07時48分
moliさま、おはようございます。
moliさまも、お買上げですね。
東洋風なお顔だちゆえに、蝶々さんが似合うババジャニアンさんです。
おじ様には、二重唱ではびっくり。
最後のトラックでは、二度びっくり(笑)でございました・・・。
投稿: yokochan | 2009年3月28日 (土) 09時52分