札幌交響楽団定期演奏会 シュナイト指揮
「ワタシは、ハマッ子!」のシュナイト翁が、「サッポロっ子」になった。
「ミュンヘン、サッポロ、ミルウォーキー」、かつて、ビールのCMにあったけど、緯度を同じくするこの街で、シュナイトさんは、普段、横浜で見るより、なまら元気そうだったっしょ(北海道弁っ)。
気候風土が、体に合うのだろうか。
そんなわれらがシュナイト爺、終始ニコニコとご機嫌。昨年の仙台客演は、心強い相棒、石田氏を連れていったが、今回札幌には単身乗り込んだ。
シュナイト師のわかりにくい指揮とテンボに、そのすべてを理解し、オーケストラをリードしていく石田氏の不在もあってか、かなり細かい指示を出し、オケメンバーを優しく、時には厳しく見つめながらの指揮だった。
スリムで華奢だけど、キラキラした音色の神奈川フィルに南ドイツ風のあたたかな響きを持ち込んだシュナイト師。
重厚でかつクールな札響にどんな作用をもたらすか。
ブラームス ヴァイオリン協奏曲
Vn:神尾 真由子
パガニーニ カプリース第13番(アンコール)
ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」
ハンス=マルティン・シュナイト指揮 札幌交響楽団
(3.20@札幌コンサートホールKitara)
シュナイト師お得意の曲ばかり。
いずれも横浜で聴いた演目で、ことに田園は忘れがたい名演だった。
背中の大きくあいた素敵なドレスで登場の神尾嬢。
ゆったりと始まるブラームス。オーケストラとちょっと呼吸が合わない。
でも加速とともに徐々に音が落ち着きはじめ、神尾嬢登場の場を見事に築きあげてゆく。
始めて聴く神尾さん。もっとバリバリと弾くかと思ったら、意外なほどしっかり・じっくりの内省的なヴァイオリン。シュナイト師の作り出す音楽に全面的に包み込まれたヴァイオリンで、ゆったりとした中にふっくらした暖かなブラームスだった。
こんな演奏だから、2楽章が最高に美しい。
艶やかで、完璧なまでのヴァイオリンは、少しも技巧が勝っているようには感じず、若々しい清々しさがとてもうれしい。
ちょっと歌い過ぎてしまったオーボエ氏。シュナイト師にずいぶんと抑えられていて、見ていて微笑ましかった。
走ることなく、これもじっくりと盛り上げていった3楽章。
丁々発止のソロとオーケストラのやり取りを聴きたかった向きには、欲求不満だったかもしれない。シュナイト師の音楽は、協奏曲といえどもソロも含めて、大きく包み込んでしまう暖かな包容力とまろやかな優しさに満ちているのだ。
アンコールのパガニーニ、超絶技巧の曲を難なくすいすいと弾いてしまう神尾嬢。
協奏曲とはまた違う顔だった。
休憩後の「田園」
のどかな田園風景が、まさに展開され、私の思いは昨年3月の神奈川県立音楽堂の演奏会へ。
あのときより、テンポが伸びている感じ。
オケがちょっと窮屈そうだけど、キタラの美しい残響が、私を桃源郷にいざなってくれる。
ほんとうに心から和み、優しい気持ちになれる1楽章。
北海道の大自然をいやでも思い描いてしまう2楽章。春から初夏にかけてのたおやかな北の自然の機微。札響の木管と弦の美しいブレンドにいつまでも浸っていたかった。
一転、にこやかにリズミカルに指揮を始めた3楽章は、まさにおおらかな農民ダンス。
不協和音が、少しも刺激的にならない嵐の場面はじっくりとしたもの。
そして嵐のあとの感謝の音楽は、文字通り感謝と喜びに満ちたあまりにも感動的な歌に溢れていた。
日頃の殺伐とした気持ちを、おおらかに解放してくれるような自愛と慈しみ溢れる演奏に、私はシュナイト師の音楽を聴くいつものように、涙ぐんでしまった。
オーケストラも心の底から歌っているのがよくわかる。
自発性に溢れた、なんて素晴らしいオーケストラなんだろうか。
そして、最後の主題を回顧する場面。
1年前に涙したあの感動的な場面がまた再現された。
シュナイト師は、指揮棒を置き、両手を合わせ祈るように指揮をする。
最弱音で、テンポも落として、デリケートに心震わせるように歌う。
まさに祈りの音楽。
シュナイト師の音楽の根底にある「歌と祈り」。
田園も祈りの音楽なのだ。
かつて、デッカから出ていたイッセルシュテットの田園のジャケットがミレーの晩鐘だった。
今宵の田園は、どこからか教会の鐘が聴こえてくるような祈りと感謝の音楽だった。
音楽が鳴りやんで、いつものように指揮を止めたまま、楽員もまんじりともしない。
ホールに静寂が支配すること数秒・・・・・。
約50分間の奇跡の田園がまたもや聴けたことに、わたくしも感謝。
札幌の皆さんも驚かれたのではないでしょうか。
おどけた様子を見せるご満悦のシュナイト師。
隣の女性が、チャ-ミングなおじさんと評しておりました。 仕事がらみで、ありがたくも聴くことが出来た素晴らしいコンサート。
神奈川から登場の、毎度お世話になっております神奈川フィルを応援するメンバーのお一人スリーパーさんとも会場でお会いし、シュナイトマジックを語り合いました。
終演後、わたくしは、仕事先の方が待ち受ける店へ急行し、ヘロンヘロンになってしまいました。最近、寝不足と飲み過ぎがたたり、雪のなかをどう帰ったかわからない自分。
北海道中の模様は、また別稿にて・・・。
キタラは、もう数回訪問しているが、東京のホールに比べ、すべてがデッカイ。
素晴らしいホールに、素晴らしいオーケストラ、そして音楽を愛する札幌市民。
いいなぁ。
足の具合が思わしくなく、日本のじめじめした気候に合わないと言うシュナイト爺。
北海道に住んで、温泉療養しつつ、横浜と仙台に出張し、そして札幌を根城にしたらどうかしら。
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コメント
キタラ、いいホールですよね。
10年前に合唱コンクールで歌った思い出の場所です。
響きすぎず、明瞭に音楽を聴かせてくれます。
シュナイトさんの音楽、聴いてみたいです。神奈川に行ったら聴く機会があるでしょうか。
投稿: ピースうさぎ | 2009年3月22日 (日) 07時51分
ピースうさぎさん、おはようございます。
あの素晴らしいホールで歌われたのですか!
よい経験をされました!
私は聴くばかりですが、音に芯があって頼もしいホールでした。
単身赴任ご苦労さまです。
シュナイトさんは、5月16日に横浜で、シューマンのピアノ協奏曲(ご子息と共演)と第4交響曲をやります。
神奈川フィルとの最後の演奏会ですので、ぜひにもお越しください。
名演必須ですよ!
投稿: yokochan | 2009年3月22日 (日) 10時23分
またまた名演だったようですね。
残念ながらもう数回しかないシュナイトさんを聴く機会ですが、大切にしたいです。
札幌へ行くことができたことを羨ましく思います。
投稿: yurikamome122 | 2009年3月22日 (日) 13時00分
yurikamomeさん、行ってしまいました。
今回はあきらめていただきに、とても嬉しかったです。
神奈川フィルのようにはいきませんでたが、さすがにシュナイトさんの音楽です。
オケは四苦八苦してましたが、最後はもう大感動ものでした。
楽しんでしまい、申し訳ありません(笑)
コメントどうもありがとうございました。
投稿: yokochan | 2009年3月22日 (日) 16時28分