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2009年4月 5日 (日)

NHK交響楽団定期演奏会 エド・デ・ワールト指揮

Nhkso_20094 うんざりするほどの人混みをかきわけて、NHKホールに向かう。
今日はとりわけスゴイ。
なんでこんなに人がいるの?それも、若者ばかり。 この若者たちと、そのパワーをひとつまみ。少し地方の街に振り分けてあげたい。
そんなことを思いつつ、自分が人混みにまぎれて、これから、なにしに行くんだっけ?
毎度書いてしまうが、最低のロケーションの巨大ホールは好きになれない。

でもですよ、ちょっと奮発した上がかぶらない2階R席は、極めて音がよろしかった。
シュトラウスワーグナー、好きなデ・ワールトの指揮ゆえの奮発S席であります。

  R・シュトラウス 「最後の4つの歌」

  ワーグナー   「ニーベルンクの指輪」(ヴリーガー編曲)

         S:スーザン・ブロック

     エド・デ・ワールト指揮 NHK交響楽団
                      (4.4 @NHKホール)


デ・ワールトは、フィリップス時代からよく聴いていた。オランダ管楽アンサンブル、ロッテルダム、コンセルトヘボウ、サンフランシスコなどとの録音を通じて。その後、オランダ放送フィルとRCAに入れたワーグナーやマーラーは素晴らしいものだが、いまや廃盤。エクストンへの最近の録音は高いから聴いたことなし。ミネソタ管やシドニー響、現在は香港フィルとミルウォーキー響の指揮者をつとめていて、68歳、本来ならメジャー級のオケの指揮者になっているべき実力派。読響への客演でラフマニノフ、二期会での「オランダ人」でその素晴らしさを体験すみ。
レパートリーが、モーツァルト、ワーグナー、シュトラウス、マーラー、プッチーニ、ラフマニノフと、わたくしの好きな分野としっかり被っている、うれしい指揮者なんだ。

長い前置きはここまで。

あまりにも素晴らしかった後半の「リング」の前に、コンサートが終わってみると、ちょっと影が薄くなってしまった「4つの最後の歌」。
それだけリングが良すぎたのだけれど、シュトラウスもワールトらしい、明晰で細やかな詩情にあふれたオーケストラだった。
精密なN響のアンサンブルとの相性もいいみたいだ。
そして、ドラマテックソプラノであるスーザン・ブロックの声をたくみにセーブしつつ、心をこめた歌は、とてもうれしかった。
それでも、この曲には、この巨大ホールは酷にすぎる。
オケの詳細はわかるものの、歌手の微細な歌いぶりが響いてこない。
大が小を兼ねない、という典型であろうか。
私の中では音盤以外は、シュナイト&神奈川フィルに松田嬢の演奏が、それこそ絶美の演奏だ。あまりの感激に私も涙したが、歌う松田嬢も泣いてしまった。
堀さんの今日のヴァイオリンソロは素晴らしいものだったが、神奈フィルの石田氏の透きとおるような繊細さには叶わなかった・・・・。

後半の「リング」抜粋は、心揺さぶられる名演奏だった。
1月に「シュナイダー&東京フィル」のワーグナーの真髄ともとれる、これも名演に接したばかり。そして読響でも、この「リング」を演奏したが、私は聴くことができなかったデ・ワールト。
Edo  若々しく、指揮台に飛び乗り、その指揮姿は後ろから見ていて、とても美しい。
美しいというか、音楽に即している動きなんだ。
無駄がまったくなく、その指揮棒と指先から音符が奔流となって溢れ出ているような感じなんだ。これは、オーケストラも身を任せやすいし、巧まずして指揮者の思いがメンバーに伝わっているんじゃないかと思って観ていた。
ヴリーガー編曲によるこのコンパクト「リング」。
パンフをまったく見ずに挑んだものだから、出だしが「ワルキューレの騎行」だったもんだから驚き、そしてがっかりした。
やはり「ラインの黄金」のあの原始を思わせる前奏から始まってほしかった。
だから、ラインゴールドの前奏とニーベルハイムのじゃんがら効果音の場面もなし。
さらにワルキューレの2幕の決闘のあたりから「ワルキューレの騎行」になだれ込む場面もなし。
 でもこのカットは、最後に理由が判明。
「ブリュンヒルデの自己犠牲」をそっくりそのまま演奏し、スーザン・ブロックがブリュンヒルデとして登場して歌ってみせたのである。
この場面だけで20分以上かかるから、全体が1時間半になってしまうため、オーケストラ・コンサートとしてのバランスを考えてのこと。
途中から、ラインゴールドの不在はまったく気にならなくなって、デ・ワールトのワーグナーにどんどん引き込まれていった。
「ジークフリート」の「森のささやき」でのホルンの長いソロは、首席の松崎氏が席を立ち、舞台裏から吹いた。そしてファフナーとの戦いになだれこむわけだが、ライブでのホルンの難しさを今日も痛感。いつもヒヤヒヤしてしまうわけだが、ちょろっちょろと外してます。
こりゃもうしょうがない。そのかわり、とってもブリリアントな音色が嬉しい。
ブリュンヒルデの目覚め、「神々の黄昏」の夜明けときて、「ラインの旅」。
このあたりから、デ・ワールトの作り出すワーグナーの呼吸が、私のワーグナー演奏の理想とピタリピタリと符号して心地よい。
本日の白眉は、「葬送行進曲」とそして「自己犠牲」。
おおよそワーグナーを指揮する指揮者が、そのワーグナーへの適正があるやなしかが判ってしまう曲が「葬送行進曲」だと思っていて、今日のデ・ワールトの演奏は、ほぼ完璧なまで崇高さと輝き、そして気品と悲壮感に充ち溢れていた。
久々に、この曲を聴いて手を握りしめてしまったし、涙を流してしまった・・・。
ブルンヒルデの歌が入っての「自己犠牲」はもう感動のしっぱなし。
馬力もあるが、それ以上に温もりと優しさ溢れるブロックのブリュンヒルデ。
新国のトーキョーリングで、かつて「ジークフリート」と「たそがれ」でのブリュンヒルデを聴いている。その時の若々しい娘のようなブリュンヒルデが、今日は思慮深い大人のブリュンヒルデに聴こえた。
こうした曲になると、声がビンビン響くNHKホールである。
デ・ワールトの作り出すワーグナー。自己犠牲のモティーフが弦にあらわれ、ラインの娘たちが喜んでいるさまも目に浮かぶ感動的な場面。
ラスト、一旦休止して、自己犠牲の旋律が澄み切ったように奏でられる。
この場面、私の理想はベームにブーレーズの演奏なのだが、今日のデ・ワールトの演奏もそれに匹敵する神々しさ。
いやぁ、もうダメ。涙ちょちょぎれ。おりからの花粉症末期の鼻炎も手伝い鼻水たらーりのぐちょぐちょ状態(きたなくてすんませんねぇ)。
もうちょっと余韻に浸りたかったけれど、満場の大拍手が、じわじわ盛り上がり、ブラボーが駆け巡った。

それにしてもN響の底力はすごい。
トーキョーリングで、東フィルからN響にオケが変わったときに、そのあまりの違いに唖然とした。安定感では、やはりN響。でもオペラテックな息使いと、舞台を読む呼吸は東フィル。
そして、デ・ワールトのワーグナーは、ほんまに素晴らしい。
78年にG・フリードリヒ演出の「ローエングリン」で、バイロイトデビューをした。
その時の演奏は、私家盤CDRとして手元にあるが、1年で降りてしまいネルソンと交替した。シドニーでの「ワルキューレ」も持っている。
いずれも、緻密でありながら、つかみは大きく、明確なフレージングに基づき曖昧さが一切ない。

香港とミルウォーキーじゃもったいない。
N響さん、しっかり掴まえてくださいよ、エドを!

香港での様子はこちらの香港フィルのサイトで。
なんだか、とっても羨ましいし、やたら上手いぞ。
マーラーもシュトラウスも、アバも中国の作曲家もやってるし。すげぇぜ。

Ring_de_waart デ・ワールトのワーグナー

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コメント

yokochanさま お早うございます

デ・ワールトさん、懐かしいですね
オランダ管楽アンサンブルのLPを昔何枚か持っていました〜。それ以降は、あまり聴くことがなかったのですが〜。

記事からは、素晴らしい演奏をしたようですね〜
NHK響はサントリーホールで聴いた方が良いのかもしれませんね〜。私はNHKホールは、ヴィーンのシュターツオーパーの公演で「パルジファル」を一度聴いただけです。

東京が羨ましいです、オペラはあるし、演奏会も多いし、芝居も多いし〜。関西はアカンかもしれません、爆〜。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2009年4月 5日 (日) 10時12分

rudolfさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
デ・ワールトはずっと注目の指揮者でした。
万博の年にオランダ管楽アンサンブルと来日してテレビで見たような記憶があります。
こんな素晴らしいワーグナー指揮者になっていたんです。

あのパルシファルは、私も同席してました(笑)
東京の異常ぶりに、最近は辟易としてます。
多すぎて選択できないのです・・・。
音楽も人も金も、もっとほかのエリアの振り分けるべきですよ~

投稿: yokochan | 2009年4月 5日 (日) 13時01分

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