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2009年5月 5日 (火)

「ドレスデン・シュターツカペレに酔う」 ①

5 この連休中、手近ではあるけれど、実家に帰り、好天のもと、御殿場・箱根方面に車を走らせた。
御殿場富士霊園は、そこにご縁がなくとも、普通に景色や花々を楽しめる巨大な公園。
こんな素晴らしい自然に囲まれて安らかに微笑んでみたいと思ってしまう・・・・。

15 最近、清水由貴子さんのことがあったばかり。
でも何度も訪問しているこの場所。普段と変わらず、富士の頭が見え、桜が終わって、今やツツジが満開。心晴れる素晴らしい場所。
お隣のレース場の音が、現世の賑やかさとの接点。

Karajan_meistersinger 連休前に聴いた、ルイージドレスデンの素晴らしいR・シュトラウス。
ずっとその音が耳に残っている。
その残影があうちに、歴代ドレスデンを指揮した指揮者たちが、シュターツカペレからどんな音を引き出していたか、そしてレーベル各社はどんなカペレサウンドを捉えていたか。
意識して、オペラ系統を選んで手持ちの音源で聴いてみた。

戦後は東側のヴェールに一時包まれてしまったこともあって、モノ時代の録音がほとんどない。
SP時代の音源は持ってないので、60年代以降であることが、ちょいと残念。
録音年代は順不動で、シュターツカペレとの係わりあいの古い順を想定して聴き進んだ。

ベーム モーツァルト 「イドメネオ」序曲
堅固な厳しい中に、そこにはみでる柔和な表情は、ウィーンとのベームの顔そのもの。
このコンビによるモーツァルト・オペラは地味な3作が残されたが、こちらではウィーン
よりも生真面目なセリア系のオペラゆえか、剛毅さの中に微笑みがあるカペレサウンド。

スウィトナー モーツァルト 「魔笛」序曲
われわれにおなじみの指揮者の演奏。ベルリンのリンデン、N響それぞれを通じて長く親しんできた柔らかでマイルドなモーツァルト。弦楽のふくよかな響きと木管・金管の三和音が全然刺激的でない。昨今のピリオド奏法なんて、まっぴら。

ザンデルリンク ブラームス 「悲劇的序曲」
これは、渋い。音楽好きが頭に浮かべる、いぶし銀のブラームスのイメージそのもの。
重厚でいかにもドイツ的ともいえるけど、意外ともいえる明るさがあるのがザンデルリンクかも。

ケンペ R・シュトラウス 「ばらの騎士」ワルツ
ケンペは団員だったから、その付き合いでは一番長いし、音楽性も均一。
最強のカペレ指揮者かも。シュトラウス全集は、このオーケストラとシュトラウスを愛する聴き手にとって、宝物のような存在。
ダムのホルンの輝かしくもなめらかな咆哮で始まる「ばら騎士」。いやもう、このままめくるめくマルシャリンとオクタヴィアンの熱い情事に突入して、ほろ苦い別れの感傷にまで引っ張ってもらいたい・・・・。ほんまにすばらしい。
ケンペが独自に編んだ17分の抜粋は、さながら「ばら騎士」のダイジェストで、シュターツカペレの芳香あふれるサウンドが満載。
ウィーンフィルが、J・シュトラウスのワルツを自分たちの音楽として奏でるように、R・シュトラウスは、ウィーンやミュンヘンもいいけれど、ドレスデンの自家薬籠中の音楽なんだ。

カラヤン ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
70年に、カラヤンが東側に渡りレコーディングをした。東西混成のカラヤン好みの歌手たちを勢ぞろいさせての録音は、主役がカラヤンになるはずだった。
でも、それはドレスデンの歌劇場のオーケストラの素晴らしさを世界の音楽愛好家の隅々にまでわかりしめる結果となった。
テヌートぎみのカラヤン芸を聞かせはするが、どっこい音色は手兵のような華やかさはなく、渋く落ち着きあるサウンド。惜しむらくは、一部の歌手が古臭いのと、EMIの録音の薄べったさが気になる。
ケンペのものと合わせ、DGかフィリップスだったらと・・・・・・。
そして、指揮が当初予定されてバルビローリだったらと・・・・・・・。

サヴァリッシュ シューベルト 交響曲第5番第2楽章
サヴァリッシュとカペレの関係はあまり知らないが、ドイツロマン派の録音において、最高の組み合わせだった。学者の風貌で、知性の打ち勝ったようなイメージのサヴァリッシュ。
抑制の利いた響きとともに音楽やドラマの本質を見据えて指揮する姿は、今や懐かしい。
シューベルトの歌心を、くすんだオケの響きとともにさりげなく聴かせてくれちゃう。
シューマンとともに、このシューベルト全集も評価されていい一組。

Abbado_dsk アバド ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」
この組み合わせは、一期一会的なもので、第3交響曲とともに、唯一の1枚。
アバドを愛する私ゆえ、取り上げましたよ。
この組み合わせがいいのやら、悪いのやら?これだけじゃわからないけれど、アバドは全体のまとまりを大事にしつつ、かなり歌っているし、強弱のバランスも素晴らしく、弱音における歌心は40歳のこの時期ならでは。
対するオーケストラは、アバドの指揮に応えつつも、かなり堅固なアンサンブルでちょっとお堅いところを見せているところがおもしろい。
このコンビ、後年のシノーポリ、ルイージのようなイタリア組の先駆けになった可能性もあって、これだけで終ってしまったのが残念。

今日のところはここまで、明日は70年代後半以降のシュターツカペレの音を確認します。

8
さきのつつじ。
手入れが行き届き、きれいな光景がいたるところに。
上に梵鐘があって、誰しも祈りとともに鳴らすことができる。
5分は続く残響を自ら鳴らした鐘で楽しめる。
  

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コメント

今晩は、はじめまして。ドレスデンは今回の公演でも、新たなファンを獲得したようですね。ケンペの項目で、団員だった、とありますが、所属していたのはドレスデンのオケ養成校ですね。その後はゲヴァ管へ行きました。アバドのブラ3番はCDが再発されてほしいです。ザンデルリンク3番録音の2週間後に録音されたようですから、聴き比べたいのですが、未だ叶いません。

投稿: ドレドレ | 2009年5月 8日 (金) 22時22分

ドレドレさん、どうもこんばんは。コメントありがとうございます。
すっかりオーボエ奏者として認識・記憶してました・・・。

アバドのブラ3は、レコードの全集と、CD廉価盤を持ってます。録音もよく、希少な1枚かと思います。
水と油のようでありながら、とてもいいコンビに思います。
復刻を祈りたいですね。

投稿: yokochan | 2009年5月 9日 (土) 00時49分

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