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2009年5月12日 (火)

パーセル 「ダイドーとイーニアス」 ディヴィス指揮

Nihonbashi 日本橋の橋そのものから見た「日本橋川」。

無粋な首都高速がその上をしっかり蓋してしまっている。
この川のほぼ全域にわたって上には首都高。
東京が狙う次のオリンピックも川であって川でないようなこの光景は、このままなのだろうなぁ。

Purcell_didoaeneas_davis

パーセル(1658~1695)の歌劇「ダイドーとイーニアス」を取り出した。
 どういう訳か、最近は「ダイドーとイーニアス」と呼ぶ(読む)ことも多くなってきた。
どうしても「ディドーとエネアス」とした方が馴染みあるし、音楽の教科書なんかにもそう書いてあったはず。
今年、横須賀で初めて観たこのオペラ、そちらでは「ダイドーとイーニアス」になっていたものだから、今回の表記もそうします。

36歳で早世してしまった、パーセルの劇作品としてオペラ形式をもった唯一の作品は、1時間足らずのコンパクトな作品。
1689年頃頃の作品とされ、高貴なる気品と崇高なまでの悲しみ、そしてカラッとしたユーモアにもことかかない素晴らしい音楽は、320年経った今でも決して色あせることがない。

先の横須賀公演では、カルタゴの舞台をバリ・ヒンドゥーの世界に置き換え、痛快かつ笑いも呼ぶ誰しも飽きることない演出を作り上げていて、本当に面白かった。
そこには始めてオペラを観る人も多々いたが、皆さんすっかり引き込まれていた。
みっちゃん、こと林美智子さん演じるダイドーが、最後、嘆きの歌の末に、倒れ、無人の舞台に運ばれ、そこにはらはらと、バラの花びらが舞い落ちてきて彼女の亡骸を覆い尽くした・・・・・。本当に美しい舞台だった。

その記事と、超概略あらすじは、こちらで

ダイドー:ジョセフィーン・ヴィージー イーニアス:ジョン・シャーリー=クワーク
ベリンダ:ヘレン・ドナート       魔女   :エリザベス・ベインブリッジ
待女・第1の魔女:デラ・ウォリス   第2の魔女:ジリアン・ナイト
霊の声 :トーマス・アレン       船乗り  :フランク・パターソン

サー・コリン・デイヴィス指揮 アカデミー・セントマーテイン・イン・ザ・フィールズ
                  ジョンオールディス合唱団
                        (1970年録音)

80年代から、こうした楽曲は古楽優勢になってしまって、こうした現代楽器による録音などは、もう行われなくなってしまったし、へたすりゃ前時代のレッテルを貼られてしまう。
 このサー・コリンの方のディヴィスが、めずらしくもアカデミーを指揮したこの録音、すっかり忘れ去られてしまったものかもしれない。
そして、ディヴィスがヘンデル以前の音楽を指揮しているのも珍しい。
久しぶりに聴いてみて、昨今のすっきり系の古楽が喜びも悲しみも、感情の襞を見事に編みだすことができるようになっただけに、少し鈍重すぎないか、そしてロマンテックに過ぎないか、と正直感じた。
でも短いものだから、2度聞き返すうちに、すっかり昔の耳にさかのぼって聴くことができて、かわいいベリンダの軽やかな伴奏や、魔女たちの「わはは」ソングの洒脱さ、そして何よりも、あらゆるオペラの中でも、もっとも深淵で高貴なる悲しみに満ちた、ダイドーの最後の絶唱「When I am laid in earth・・・・」の慟哭にも似た伴奏とそのあとの、レクイエムのような静粛かつ悲しみに溢れた合唱とその後奏。
現在のリアルな楽器によって克明に演奏されたこのデイヴィス盤は、古き響きを新鮮に演奏したのに、今や古きカテゴリーの演奏形態となってしまった。
でもその感情移入の度合は、古楽では導き得ないオペラティックなものであって、いまやそれも耳に新鮮に聴こえるのであった・・・・。

カラヤンのリングをはじめ、ドイツ系の指揮者に可愛がられたヴィージーは、ブルー系のクールなリリシズム溢れる声で、最後のアリアは、マジで泣かせてくれます。
我々の世代におなじみのドナートのベリンダの可愛い歌に、英国音楽ファンなら泣く子も黙るクヮークの気品あふれるイーニアス、ちょい役でもったいないアレン、達者な魔女たちと、当時の英国系適材適所が配置されていて嬉しい。

この演奏を何度も聴いたあとに、パロットやヤーコプスなどを聴くと、これまた新鮮で別の音楽のように聴こえちゃうから面白い。
どちらも、音楽の正しいあり方ではないかと思ったりもしてます。

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