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2009年6月17日 (水)

ロッシーニ 「チェネレントラ」 新国立劇場公演

Cenerentola200906



















新国立劇場公演、ロッシーニの「チェネレントラ」を観劇。
オペラはやっぱりイイ!
楽しかった、面白かった、ホロリときた、快感だった・・・、そんなあらゆる人間感情を呼び起こしてくれる。
それがオペラの醍醐味🎵

新国立劇場の出し物も、このところ巧妙を極めている。
トーキョーリングに、ショスタコ・マクベス夫人ときて、ロッシーニのブッフォときた。

今回の上演も、一流歌手が揃ったこともあり、平日なのに、かなりの観客動員だった。

わたしは久々のイタリアもの、しかもベルカントものに、まるでおいしいイタリアンをいただくかのように、次々と興ぜられる、めくるめく料理の数々をワクワクしながら楽しんだものだ

  ロッシーニ 歌劇「ラ・チェネレントラ」

   チェネレントラ:ヴェッセリーナ・カサロヴァ 
   ドン・ラミーロ:アントニーオ・シラグーザ
   ダンディーニ:ロベルト・カンディア    
   ドン・マニフィコ:ブルーノ・デ・シモーネ
   アリドーロ:ギュンター・クロイスベック   
   クロリンダ:幸田 浩子
   ティースベ:清水 華澄

  ディヴィット・サイラス指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
                新国立劇場合唱団
  演出:ジャン・ピエール・ポネル   再演演出:グリシア・アサガロフ

                 (2009.6.17 @新国立劇場)


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 まずは、ご馳走を惜し気もなく振る舞ってくれた歌い手たちのことから。
これまでご覧になられた方々が大絶賛のシラグーザ、この人がまったくもって素晴らしい。
ストレートで伸びやかな声は明るく不純物がまったく見当たらない天然もので、その抜群の技巧も嫌味なくナチュラルかつスポーティな快感を呼び起こすもの。
ロッシーニのためにあるような美声が劇場にサンサンと降り注いだのだ
フレッシュなレモン果汁のようなスッキリ声。
2幕のアリアでは高音を次々と見事に決め、大喝采を浴び、後半をアンコールしてさらにハイCを大伸ばしして我々を大いに楽しませてくれた。

それと期待のカサロヴァ。大柄でスカート役が似合わない、なーんて言ったら怒られちゃうけど、そんな見た目のおっかなさは度外視して、その完璧極まる歌唱力と他を圧する声量にはただただ呆れ返るばかり。オクタヴィアンもいいけれど、ロッシーニもやはりいい。
Ki_20002091_12 ただカルメンなどドラマティックな役を歌うようになり、声が重たくなってきた気がする。
でも濃いめの赤葡萄酒の味わいのチェネレントラもいいものだ。
トリを決める最後の大シェーナは、ただでさえ大好きなアリアなのに、カサロヴァの実演で聴いてるものだから、胸が締め付けられるような感動と興奮につつまれドキドキしちゃった

 

















日本のスター、幸田浩子さんがイジワル姉さんのクロリンダ役。このオペラ唯一のソプラノで、ちょこっとしたソロはあるものの勿体ないくらいの配役。
でもですよ、さすが彼女、いくつかの重唱の場面で、耳をくすぐる美声が際立って通って聴こえる。これもまた耳のご馳走。彼女は、甘いドルチェ。
もう一人のイジワル姉さん、清水さん。かつて観たワルキューレやマクロプロス、外套などで、舞台に懐深さを提供している彼女、今回は見せ場たっぷりで、その素敵な声がカサロヴァとかぶっちゃうと気の毒だったけど、しっかりと下から支える歌声は味があった。
そして彼女は、イタリア料理には欠かせないオリーブかな。

Ki_20002091_7 彼女たち、ポネルの演出では、いじわるよりは、ユーモラスで滑稽な存在として描かれていて、その楽しい演技は主役二人より光っていたかもしれない。
でも、妹灰かぶり姫にいいとこを持ってかれちゃうと、その存在が一転、陰りあるものに変貌していまう。そのあたりの機微もこの二人実に見事だったと思う。

あと低音男声3人組。これまた芸達者な3人。
ブッフォの典型ともいえるドン・マニーフィコ役のデ・シモーネは、そのオッサン風の風貌からしてピッタリの役柄で、おもしろおかしさが見るからににじみ出てるようだし、明るい歌声に言葉の洪水、そしてクレッシェンドするロッシーニ特有の歌唱。
板についた、というのはこういうことをいうのだろうか。
このおじさんは、ちょっとしたリゾットかな。ほんのちょっと皿に盛って、濃い味を楽しんで、でもまだメインのパスタを待つっていう感じ。でもとても存在感あるし憎めないのよね。

まったく同じことが、ダンディーニのカンディアにいえる。
フィガロのような狂言回し的な素直な歌声と、憎めない存在。その動きに軽快さも欲しいが、誰しも微笑んでしまう、ナイスな従者役だった。
彼は、アンティパスト(前菜)のようでいて、しっかり主菜にもなっていて、それをつまみながら何杯もワインが飲めちゃうイイ味出してるタイプ。







それとクロイスベックのアリドーロ。一人超越的な存在の役柄だが、この人唯一のゲルマン系。深々としたバスは、なかなかに素敵。彼は、チューリヒオペラの映像に数々出てるし、バイロイトでローエングリンのハインリヒを歌うことも決まっていて、ドイツ・バス界の期待の星なんだ。
付け合わせのコントルノにはもったいない立派な声。

いやはや、これだけでお腹一杯。

Ki_20002091_5







 



でも本日の一方のおいしいメインデッシュは、故ポネルの残した名演出。
ポネルといえば、バイロイトのトリスタンの映像が脳裏に刻みこまれている私だが、それともうひとつが、「セビリアの理髪師」。
スカラ座の来日公演のテレビ放送は、いまでも覚えている。
キレのある鮮やかな登場人物たちの動きに、合唱も含めた、音楽の一音一音、強弱への巧みな反応。
クレシェンドに合わせ揺れ動く人物たちは、ロッシーニの音楽を理解し、表現し尽くしていた。
 それとまったく同じことが、今宵のチェネレントラにも言えた。
踊るような軽やかさと、弾けるような身のこなし、合唱の時に集団、時に個、そんな観ていて面白い動きに、ロッシーニの音楽が際立つ。
主役ふたりは、細かいところは自在にふるまっていたように思うが、カサロヴァさまは、動作がコワすぎか(笑)

演出の按配の詳細は、アバドのDVDで再度確認。
舞台転換は、新国の奥行ある舞台装置を駆使できたこともあってお見事。

今回はここまでで、目一杯。
舞台の詳細はここに記す能力を持ちませんです。

英国の指揮者サイラスは、オペラ練達の人。全体を巧みにまとめあげる才はたいしたもの。でも生真面目にすぎるかも。
日本のオケだからよけいにそう。
完璧な仕上がりだけど、昨今の機敏な演奏や、長く親しんだアバドの小股の切れ上がったような爽快さもない。
序曲から乗ってこなくて、そんな不満にとらわれたが、歌が入ってくると、サイラスの付けの巧みさがその不満を補ってあまりあるようになって気にならなくなった。
なかなか難しいものである。確かにオケは立派だったのだけど、弾けるような歌手たちの舞台には、もう少し違うオケピットがあっても・・・、と思った次第。

Opera_palace
そして最後に、メインのパスタは、わたしも含めた観客。
舞台に歌に、敏感に反応し、ブラボーの嵐を連呼。
久々に長いカーテンコールに、スタンディング。
最後の最後まで、大いに楽しめました

 

 

 

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コメント

ロッシーニで感動(?!)するなんて・・です。ほんとに心が高揚、興奮しました。

成り行きでこの公演は2度行きました。一回目は何とか避けようと頑張ったのですが、結局行くことになってしまったといういきさつでしたが、2度行く価値十分で得をした気分です。

記事、思い出しながら、楽しく読みました、全く同感です!

簡単な記事、TBします。

投稿: edc | 2009年6月18日 (木) 10時00分

いつも大変楽しく拝見させていただいています。土曜日上京する予定です。楽しみです。ロッシーニで豪華な配役を聴くのはアバドのランスいらいです。ゼッダの音楽なら痺れるところでしょうが。贅沢は禁物。修善寺は予習のしようがなくどうなることやら。

投稿: Mie | 2009年6月18日 (木) 21時06分

ベルカントは苦手って以前・・・いらっしゃっていないかと思ってました。10日の公演に参りました。すばらしかったですね!
舞台は遠かったですが、シモーネのドン・マニフィコは、歌ってるだけで面白かったですよ。カサロヴァは、CDより怖くなかったですよ。

投稿: steph | 2009年6月18日 (木) 21時18分

またまた同じ日でしたね。まったく作品を知らないままに予習もせずに観ましたが、歌手が皆さん揃って素晴らしくとても楽しめました。
ロッシーニが描き出したものは、ペローの童話のか弱く優しい女の子の元に魔法使いの力で幸せが降ってくるという話ではなく、チェネレントラが強い意思の力と行動力で幸せを掴みとる話だったので些かびっくりしました。かぼちゃの馬車も12時を告げる鐘もガラスの靴もない。チェネレントラは王子に自分からブレスレットを渡して自分を探しだすようにと言うのですから、したたかな強さを備えた女性です。お伽話の「シンデレラ」のイメージで見てはいけないものなのでしょう。だからロッシニもあえてソプラノにしていないのか。カサロヴァの役作りは的を射たものと思いました。それにしても激しい身振りに強靭な声でしたが(笑)

投稿: 白夜 | 2009年6月19日 (金) 00時13分

euridiceさん、こんにちは。私も正直、甘く見てました。歌手だけは素晴らしいから、と。
CDで音だけ聴いてもこんな楽しさは味わえないものでしたし。
ほんと、私も大いに感動しました!

劇場内のだれもが同じ感情にとらわれたんじゃないかと思います。
いゃあ、わたしもあと1回観たいです!
その価値おおありですよね。
TBありがとうございます。

投稿: yokochan | 2009年6月19日 (金) 09時22分

Mieさま、こんにちは。
お先に観劇してまいりました。
その素晴らしさを先に明かしてしまって申し訳ありません。
だれもが、楽しくいい気分になること請け合いの舞台でした。
ある意味、耳と目の贅沢ですよ(笑)

土曜日、大いに楽しんでくださいね!

投稿: yokochan | 2009年6月19日 (金) 09時37分

stephさん、こんにちは。
新国はセット券で挑んでますが、主役二人と幸田さんの名前を見て即手配決定でした。
アバド好きゆえ、彼の録音しているオペラに関しては例外なく聞き込んでいるのです。
こんな事情で、とても楽しく観劇できました。
シモーネは面白かったです。レシタティーヴォで、「まさか、お父さんと結婚?」の一言には吹き出してしまいました。
来シーズン、愛の妙薬にも登場しますね!

カサロヴァのCDは未聴ですが、さらに怖いのですか?(笑)

投稿: yokochan | 2009年6月19日 (金) 13時13分

白夜さん、こんにちは。
私はロッシーニはあまり得意ではありませんが、アバド好きゆえ、アバドが好んだチェネレントラは聞き込んでおりました。

かつてはシンデレラと呼ばれてましたが、チェネレントラが定着しました。
その方がおっしゃるような意思をしっかり持ったメゾのロールという感じが強くします。

カサロヴァは強烈な歌唱力と歌い姿でしたね!
右斜め前方を指差してましたねー(笑)

投稿: yokochan | 2009年6月19日 (金) 18時59分

こんばんは。ご無沙汰しております。
私も、先だっての日曜日に行って参りました。17日も素晴らしかったようですね。実は17日は会社が休みだったので観ようと思えば観られたのですが、ちと病院に行ってしまったもので……。日曜日でもやっぱりシラグーザさんに圧倒されました。私は、劇中のアンコールが初体験でした。ハイCは卒倒しそうでした。

投稿: Shushi | 2009年6月19日 (金) 20時13分

ご同慶の至りです。オペラって、最後は詰まるところ歌手なんだなあというのが実感される上演でした。オーケストラが重くって、リズムの弾みがないのがロッシーニっぽくないのが辛かったですが。
シラグーザ、シモーネなどの声の素晴らしさ、そして観客の熱狂・・・。ドイツ・オペラでは不可能な身体を通しての熱狂。良かったです。

投稿: IANIS | 2009年6月19日 (金) 22時52分

Shushiさん、こんにちは。今回のプロダクション、毎回安定していて、ご覧になった日や、他の日も、皆さん絶賛されてますね。
特にシラクーザは手放しでの大好評!
他のオペラも聴いてみたいです。アリアのコンサートでは何度か経験ありますが、ドイツものばかりの私ですゆえ、同じく劇中でのアンコールは初めてで興奮しました!
カサロヴァさまは、人によっては好悪が分かれるようですが、あの呆れるほどの技巧と声量には痺れましたぁ!
このプロダクションは、レパートリー化して欲しいものですよね。

投稿: yokochan | 2009年6月20日 (土) 09時15分

IANISさん、毎度どうもです。
先にご感想や前評判を聞いていたこともあって、うきうき気分でいどみ、見事全身で受け止め、メロメロにされちまいました。
そう、やっぱりオペラは歌手ですねえ!
ワーグナーはオケがフヌケるとダメですが・・・
でも、悪くない指揮に東フィルではありましたが。
ブリテンなんか振ったらいいのかも。

投稿: yokochan | 2009年6月20日 (土) 09時42分

今日きいてきました。はじけないブッファ。レベルは高いです。でも心に響きませんでした。シラグーザは余裕たっぷりで文句つけようありません。アリア・アンコールもどうだという感じで恐れ入りましたというしかなく。カサロヴァも素敵でしたが、この音楽にあっていないような。そんな贅沢を言っても。このような保守的演出では音楽が左右するのがよくわかりました。幸田 浩子のオペラ出演初めて聴きましたが、演技かわいらしく、予想外に素敵でした。応援したいとおもいます。

投稿: Mie | 2009年6月20日 (土) 23時47分

MIeさま、早速の観劇のコメントありがとうございます。
レベルの高さはお認めになりつつ、その完璧さゆえに醒めてしまわれたのかもしれません。
演出は、たしかにいまとなっては古いもので、亡くなったポネルの天才性がどこまで保たれているかは不明です。
アバドのDVDと同じものですが、当時は人の動かし方などは斬新だったものです。
演出の受け止め方は、なかなか難しいものであります。

幸田さんは、ラジオで聴く天然系のキャラクターそのもので、こういう役はもっとも合っているかもしれませんね。
私も応援してます!

投稿: yokochan | 2009年6月21日 (日) 09時39分

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