「黒田恭一さんを悼む」~ヴェルディ・スカラ座・アバド
今日の朝刊でお写真入りで黒田恭一さんの訃報が報じられた。
まだ71歳というではありませんか!
先だって日曜のFM放送を出張先の車で聴いたおり、まさかこの声、黒田さん??
とびっくりするくらいだった・・・・・。
まさかの早すぎるその死を悼んで今日は、氏の愛したオペラ、それもヴェルディを聴きましょう。
黒田さん、私などは「クロキョウ」さんと言ったほうが馴染みがある。
FMやAM、テレビを通じて、そのお声をお聴きの方々が非常に多いと思われる。
マイルドで優しいお声と品のある解説は、音楽のよいところを巧みにリスナーに嫌味なく伝えていて、「このような方がおっしゃるんなら、クラシックも聴いてみようか」などと思わせてくれる名調子でありました。
私のような世代だと、そのお声というよりは、数々の著書やレコ芸・FMファンなどでの執筆を通じて親しみある存在だった。
レコ芸の月評のあとに、てい談コーナーがあって、黒田さんと林光さん、粟津則雄さんの3人が、その月のレコード数枚を取り上げて語り合うコーナーだった。
辛口で厳しいけどユーモア溢れていた粟津さんがボケ役、冷静沈着でツッコミ役的な林さん。そして黒田さんは、進行役でもあり、どちらにも相槌を欠かさず、それでいながらご自身の好きなアーティストやジャンルだと、熱くなって語ってしまう。
そんな人柄で、信頼感あふれる方だった・・・。
そして氏の好きなジャンルは、オペラ。
ヴェルディにワーグナー、ベルカントを中心にまんべんなくお聴きだった。
クロキョウさんに、オペラにおいて、どれほど影響を受けたか。氏と高崎保男さんが、私のオペラの机上の師であります。
そして、氏の好きなアーティストは、カラヤン、そしてアバドだった。
若いアバドが、評論家諸氏にボロクソ言われていた中で、クロキョウさんは常にアバドの美質を見抜き擁護していた。
ずっとアバドを応援してきた私にとって、これほど嬉しい音楽評論家はいらっしゃらなかっつた。
ほんとうに久々にレコード録音復帰した「スカラ座」のオケと合唱、そしてそれを縦横に指揮するフレッシュなアバドの指揮に、黒田さんが大興奮していた1枚を今日は聴きましょう。
3年前、すでに記事にした1枚だけれど、こうして久しぶりに聴くと、耳も心も洗われるような純正ヴェルディに、日頃の鬱憤や悩み事もすっきり晴れるかのようだ。
メトやベルリン、ウィーン、ましてや新国などの一流劇場のオケや合唱が束になってかかっても到底敵わない、ヴェルディの音楽が血肉と化したかのようなアバドとスカラ座のコンビ。
来年、アバドはマーラーの8番でもって、手兵とスカラの混成部隊を指揮して復帰するが、そこでヴェルディを振る日が来るのを切に願いたい。
「十字軍のロンバルディア人」~「おお主よ、ふるさとの家々を」
「ナブッコ」~「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」
あまりに素晴らしいアバドの演奏。これらが、ほんとうに心に響く今宵。
ヴェルディには気品と熱気が大事。
そんなことを思いながら、黒田恭一さんに哀悼を捧げます。
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コメント
yokochanさま お早うございます〜
黒田恭一さん、お亡くなりになったんですね
私にとっても懐かしい方のお一人でした。
色々な演奏を熱く語っておられたのを思いだしています〜。
私たちの青春を彩ってくださった方々が次々に亡くなって行かれるのか、本当に寂しいです。
ですが、きっと、黒田さんも私たちと一緒に歩んでいてくださるのだと、信じたいと思います。
ご冥福をお祈りします。
投稿: rudolf2006 | 2009年6月 5日 (金) 05時36分
おはようございます。
カラヤン指揮するブルックナーの4番と7番が(当時の東芝)発売された時批判的な記事が多かったと記憶しています。こんなものはムード音楽でブルックナーでないと。そんな時、ステレオ誌上でそんな記事に堂々と反論した黒田恭一氏が一番思い出に残っています。
71歳とは!若きに過ぎる死です。
謹んでご冥福をお祈りしたいと思います。
投稿: 天ぬき | 2009年6月 5日 (金) 10時01分
rudolfさん、こんばんは。
こうしてまた一人、音楽の語り手がいなくなってしまいましたね。
>私たちの青春を彩ってくださった方々が次々に亡くなって行かれるのか、本当に寂しいです<
まったく同感です。
いまのように、ふんだんに音楽がきけない当時、まさに氏や同世代の評論家諸氏の言葉をいかに頼りにしたか・・・・。
ご冥福をお祈りしましょう。
投稿: yokochan | 2009年6月 5日 (金) 21時56分
天ぬきさん、こんばんは。
黒田さんのカラヤン好きは、アバド以上でしたね。
とかくアンチカラヤンが標的にしたブルックナーを、おっしゃるように強く擁護し、評価してました。
高潔で、ユーモアのある素晴らしい評論家であったと思います。
ご冥福をお祈りいたしましょう。
投稿: yokochan | 2009年6月 5日 (金) 21時58分
わかる!わかるよー。。。
黒田様で一番思い出されるのは
かのイタリア歌劇団の日本公演の解説!
それも、我がモナコ先生の解説をするときの
黒田氏の解説ですよねー。
黒田氏もデルモナコには別段の思いがあったらしく
解説にも情熱を感じました。
ひとり。。またひとりと
デルモナコを愛する人が逝ってしまいます。。。。
時代は平成か。。。。
投稿: モナコ命 | 2009年6月 5日 (金) 22時51分
モナコ命さま、こんばんは。
そうそう、イタリアオペラ来日には、黒田さんや福原さん、高崎さんがつきものでしたね。
そしてみんな興奮しまくり。
そしてたしかに、黒田さんはモナコ大好きでした。
ほんと、寂しいですよね。
評論家の良心みたいな方でした・・・・。
投稿: yokochan | 2009年6月 5日 (金) 23時53分
3月のBSのコンセルトヘボウの生中継のときも、お元気そうに見えたので、びっくりしました。昨年のNHK音楽祭や、カラヤン特集にも出演され、『ばらの騎士』を「ただ、好きなの。」と言っていたのも印象的でした。71歳、惜しい人をなくしました。
投稿: steph | 2009年6月 6日 (土) 10時36分
stephさん、こんばんは。
NHKのクラシック放送ではテレビ、FM、AMと大活躍で人気も高かった黒田さんですね。
昨日、車を運転しながら、AMの追悼放送を聴きました。
1時間の枠でした。
最後に、「どうぞ、心すこやかにお過ごしください」との言葉が放送されました。。。
寂しいですね。
投稿: yokochan | 2009年6月 6日 (土) 19時43分
あまり感情剥き出しに演奏家を貶すお方では、ありませんでしたが、サザーランドの旦那様のリチャード・ボニングには、手厳しかったですね。自己主張の乏しい説得力を欠く演奏、細君の名に乗っかって現れた便利屋‥等と、書いておられましたから。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年1月13日 (水) 11時10分
そうでした、あの優しい声、まだよく覚えてます。
まだ評価の定まらなかったアバドを、堂々と押してましたので、ほんと心強かったです!
投稿: yokochan | 2021年1月16日 (土) 08時21分
愚生が『レコード芸術』を読み始めた頃、フランス文学者の粟津則雄さんと、どなたかもうお一人に黒田さんとの三人会談で、新譜談義をするコーナーが、ございました。これがしかつめらしい月評より楽しく、月評でまずまずの評価でも、このコーナーで『これ、本当に成功してないねぇ。』『面白く無かったな、この人。』と、忌憚なく語られていたら、こっちの方が本当かも‥と、一人納得しておりました覚え、ございます!今、ふとメンバー、作曲家の林光さんでしたか‥と、思い浮かびました。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年1月24日 (日) 09時57分
レコ芸の鼎談コーナーは、ご指摘の通り、粟津・黒田・林の3氏で、粟津さん以外は皆さん鬼籍に入られました。
その粟津さんの、べらんめえ的なコメントがいつもおもしろかったです。
その後のメンバーは、三浦さんや、村上さんなど、多彩な皆様が登場され、月評とはまた違った意見を読めて、ほんとに参考になりましたね!
投稿: yokochan | 2021年1月29日 (金) 06時55分
粟津則雄さんが、マルチノンにシカゴ交響楽団じゃ合わないよ、京都の御曹司と上州女が一緒になったみたいなもんで‥と例えて居られてたのには、笑えました。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年1月29日 (金) 13時10分