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2009年8月29日 (土)

柴田南雄 交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」 若杉 弘指揮

Mizunaigawa 神奈川県の丹沢を流れる水無川。
毎年、車でかなり上流まで登り、河原でバーベキューを楽しむ。
だが、年々、水量が減少していて、広い河原に何本か別れていた流れも1本しかなくなってしまった。

梅雨らしさがなくなって、普通の雨がなくなり、南方化しつつあるゆえか。
山ヒルの大量発生、木々枯れ、鹿の下山・・・・。
丹沢山系も変化しつつある。
Ryujin

山道の途中にある「竜神の泉」。
名水の里、秦野盆地湧水群のなかのひとつ。
実家では、近所の方々とこちらまで足をのばしこの水を汲んでいる。
この水で煎れたお茶やコーヒーは格別にございます。

Shibata_yuku_kawa_no_2  柴田南雄(1916~1996)の交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」を聴く。
日本の音楽と少し縁遠いわたしなどは、柴田さんというと、音楽評論やFMでの解説といった方が馴染みがある。
一番印象に残っているのは年末のバイロイト放送の解説。
70年代はずっと柴田さんの解説だったように記憶している。その語り口は優しく、ユーモアにもあふれていて、ドイツ語の発音も独特のものがあって、今思うととても懐かしい。

その柴田さんも亡くなって早や13年。
指揮する若杉弘さんも、先ごろお亡くなりになり、日本の音楽界もさらに若返りが進んでいるのを実感する。

この交響曲は、1975年の作品で、昭和50年にあたり類ない激動の昭和半世紀を振り返り、かつ何よりも、柴田氏の10歳から60歳の50年の自分史を重ね合わせた作品であるとしている。
このCDのご自身の解説しか頼るものがないので、以下そちらを参考に曲の概略を。

第1部 音楽史・自分史
 第1楽章 いにしえ風の音楽で今様の旋律も
 第2楽章 新古典主義風の音楽で、突然出てくるものだからギャップが大きい
 第3楽章 スケルツォ 1930年代、ファシズムが近づくが音楽は少し楽天的。
       三文オペラ、会議は踊る、宝塚ソングなどの引用
 第4楽章 後期ロマン派風のメロディアスな音楽。映画音楽のようにも聴こえる
 第5楽章 60年代。12音技法が用いられ、一番現代音楽っぽい。

第2部 「方丈記」による。シアターピース風上演を要する
 第6楽章 「ゆく河の」 今様のモティーフを旋律に、方丈記を歌詞にした無限カノン
 第7楽章 「方丈記の口説」 聴衆の間に入った合唱団がひとりひとり方丈記を
       読み上げる。天変地異の様子も口説され、オーケストラは咆哮しまくる。
 第8楽章 「終曲」 方丈記冒頭が静やかに歌われ、その後うごめくオーケストラに
       のって、ひとりひとりが再び語る。
       それもひと段落すると、無伴奏合唱が歌う方丈記の一節。
   
       淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、
       久しくとどまりたる例えなし。
       ゆく河の流れは絶えずして・・・・・

       この極めて感動的な合唱のあと、オーケストラによる曲の冒頭部分が
       再び繰り返され、静かに曲を閉じる。

方丈記に読まれる天変地異は、強風(竜巻か?)や大地震のことで、そのありさまは、今の我々には想像もつかない凄まじさであったろうが、それは淡々としていて、達観しているものだ。
何事も、ばたばたと騒ぎすぎる今の世の中。
悠久の書を読み、かつこうした音楽も聴くなどして穏やかに過ごしたいものである。
この交響曲、引用もありいろいろ詰め込みすぎとも言えようが、歌好きの私としては、オケの鳴りっぷりの良さも相まって、とても楽しく、そして興味深く聴いた。
願わくは、ホールで体感してみたいもの。

若杉さんの追悼も含んで、取り上げました。

        若杉 弘 指揮 東京都交響楽団
                  京混声合唱団
                                          (89.1 東京文化館)

※9月7日(月) 新国立劇場にて、故若杉弘さんを偲ぶ会が開かれます。
 

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コメント

柴田南雄さんはFMの「現代の音楽」の解説などで印象深く、今月初め頃図書館でCDを借りて来ました。
「ふるべゆらゆら」というタイトルの合唱曲。
標準語、方言、古文、早口など多様な日本語を素材にした作品です。
まだ一回しか聴いていなかったので、今また聴き直してみています。
今まで武満徹くらいしか聴いて来なかった日本人作曲家ですが、最近、色々な人の作品を聴いてみたいと思っています。

投稿: golf130 | 2009年8月30日 (日) 13時56分

すみません、一つ訂正です。
「早口」が出てくるのは、併録の「パイドロス―はばたくエロス」という作品でした。超早口の超絶技巧的語りが入ります。
まずい、このCDとっくに貸出期限過ぎちゃっています。早く返さなきゃ。

投稿: golf130 | 2009年8月30日 (日) 16時53分

golf130さん、こんばんは。
そうそう、現代の音楽も柴田さんでしたねぇ。

>標準語、方言、古文、早口など多様な日本語を素材にした作品<
早口の併録作品、いずれも触手が動きますな。

私も最近、武満のみから脱却すべく、いろいろチャレンジを試みようとしておりますが、CDが国内盤なので高いし、中古屋さんにはないしで困ってます。
でも図書館作戦がありましたか。
今度、国会まで攻めてみましょう!
最近、わたしはボケぎみなので、期限注意であります。

投稿: yokochan | 2009年8月30日 (日) 21時51分

こんばんは。
若杉先生の音楽を当方も聴いていました。松村の沈黙です。先週の班女で大変インパクトを受け、また日本人作曲のオペラを色々聞いています。このCDは日生劇場ライブと出ていますが、ここへは一度も入ったことはありません。録音は大変鮮明です。キリスト弾圧が主題ですが、三善の遠い帆を思い出させます。遠い帆は当時、全く理解できませんでしたが、再演して欲しい物です。そろそろ、オテロも聴いておかなくては。

投稿: Mie | 2009年8月30日 (日) 22時39分

Mieさま、こんばんは。
「沈黙」は遠藤周作の原作ですね。
若杉さんのCDがあるのですね。
このオペラ、舞台にかかったとき、行こうか行くまいか悩んだ記憶があります。ぜひとも聞いてみたいものです。
日生劇場は数回行ってますが、昭和の雰囲気漂う味のあるホールです。売店もあって、おばちゃんが売り子さんです。
肝心の音は少しデッドですが、舞台がどこで見ても近く、親密感あります。
今年は二期会のカプリッチョが日生です。

私も、オペラをはじめ日本人作品をこれから聴いていきたいと思ってます。

投稿: yokochan | 2009年8月31日 (月) 23時48分

今日は。このCD、私も持っています。高校時代に買いました。この交響曲は、はっきり言って苦手です。楽しんで聴けるのは、第1部の第4楽章とシェーンベルク風の第5楽章ぐらいしかありません。でもマーラー的にもコルンゴルト的にも聴こえる第4楽章は本当に何度聴いても素敵だと思います。自分が指揮者だったら真っ先に取り上げたい曲の一つです(笑)。でもフィルアップされている三つの歌曲に至っては歌詞も音楽もチンプンカンプンです。
 音楽学者・評論家としての柴田先生には本当にお世話になりました。中学時代に読んだ岩波新書「グスタフ・マーラー」や高校時代に読んだ「おしゃべり交響曲」「おしゃべり音楽界」の面白くて勉強になったこと!中村真一郎先生の文芸評論や、岸田秀さんの文明評論なみの面白さでした。
 柴田先生のお師匠さんの諸井三郎先生の交響曲のCDがナクソスから今のところ第3番だけ出ておりますが、日本化されたブルックナーとでも言いたくなるようなユニークで面白い音楽です。指揮は湯浅さんです。諸井先生の息子さんの誠さんも作曲家ですが、彼の曲は全く聴いたことがありません。源氏物語をオペラ化しているというので音源があったら聴いてみたいのですが・・・
 源氏は大好きです。無学なので現代日本語訳でしか読めませんが、誰の訳で何度読んでも面白いです。嫌いな人はマザコン小説とか不道徳小説とか言いますが、マザコンでも不道徳でも面白ければいいじゃないのと私などは思っています。久石譲さんあたりに再オペラ化して欲しいです!

投稿: 越後のオックス | 2010年12月27日 (月) 13時02分

越後のオックスさん、こんばんは。
正直言って、この曲はこの時が初聴きでしたので、いまとなってはまったく覚えておりません(笑)
いけませんね。日々、追われて、どんどん忘れてしまいます。
わたしにとって、日本人作曲家は常に気になりつつも、なかなかに親しいものとならないのは、一度っきりしか聴かないからなのでしょうね。
諸井誠さんは、私には作曲家であると同時に、文筆家&FM放送の解説者というイメージでして、これは柴田南雄さんとまったくダブリます。
源氏物語のオペラも初に耳にしますが、それは是非見て、聴いてみたいですね。

投稿: yokochan | 2010年12月27日 (月) 21時49分

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