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2009年8月 1日 (土)

フォーレ レクイエム  コルボ指揮

Horaibashi どこまでも続く橋。
こちらは、静岡県島田市、大井川にかかる「蓬莱橋」。

世界一長い木の橋。
全長897mあります。
ずっと先は黄泉の世界みたい。

今日は、あまりに悲しい日だった。
それも夜だけ。

20時からのミューザ・サマーフェスタ。
今宵は、金さん指揮する神奈川フィルの番だった。
それもバーンスタインばかり。しかも石田ヴァイオリンで、セレナードが聴けるという。
チケット売り出し早々に購入し、楽しみにしていた。

が、しかし、運命は無常だった。
8時始まりだから、7時過ぎに出よう、とか思っていながら仕事をダラダラとしてしまい、気がついたら7時25分。やべぇ、とばかりに駅へ向かい、京浜東北線のホームに駆け降りると1本行ったあと。
次は、蒲田止まりじゃん。その次じゃもう間に合わない・・・・・。
あちゃあーーー。でも一応行こうかと、蒲田行きに乗り、蒲田で待つことに。
しかし、川崎駅の雑踏を抜けてホールの席までにたどりつく頃には、「キャンディード」が始まっちゃう・・・・。
もう若くないし、思い切り走れないし、汗だくになっちゃうし、とかなんとか考えていたら、もうすっかり萎えちゃって、諦めちゃって、反対側の電車にそそくさと乗り換えたのであります。

チケット代2000円よさらば、なさけない自分にがっかりしつつ電車に揺られていたら、携帯が鳴った。電車だから出ないでおいたら、留守電が録音された。
車中、それを聴いたら愕然としてしまった。
従姉が亡くなってしまった。

Faure_requiem_corboz そんな悲しい時に、フォーレレクイエムほど心の襞に染み入るように、そして心の空白感をも優しくなだめてくれる音楽はない。

フォーレの音楽に、私は一時かなりのめり込み、歌曲に室内楽、ピアノ作品にと、そのほとんどを聴きつくした時期があった。
フォーレといえば、このレクイエムと「ペレアスとメリザンド」くらいしか知らなかったのに、である。
 きっかけは、フランスに実際に行ってみて、その文化に直接触れてみて、エスプリに満ちた音楽を心も耳も求めていたから。
 だから他のフランス作曲家たちもたくさん聴いた。
でも、フォーレはエスプリとかじゃなくて、音楽の一途感が真っ直ぐだったので、聴く私も陶酔にも似た酔いを覚えるようになった。
この感覚はいったいなんだろう。
日曜の夕方などに、葡萄酒をちょっとたしなみながら聴くフォーレのヴァイオリン・ソナタやピアノの重奏曲、弦楽四重奏、チェロソナタ・・・・。
ワーグナーへの陶酔は、心も体も数十年来慣れ親しんだものだが、それとはまったく違うたぐいの陶酔感。
 それは、無為の自然体がなすがままの感覚であり、それはフォーレを始めとするフランスやラテン系の作曲家たちの体に染みついたカトリック的な篤い信仰心なのであろうか。

このレクイエムが、亡き人を、そして残された人を優しくいたわるような滋味にあふれているのも、そうしたフォーレ独特の陶酔感を導き出されるが故であろうか。

人は死ぬ時に、麻薬の症状にも似た体を麻痺、そして高揚させる何かを分泌するとかいうことを読んだことがある。
不謹慎ながら、亡くなった方のお顔は、ご尊顔とでも形容したいくらいに美しく平安に満ちている。
神様がすべてを解き放つように仕向けてくれるのだろうか。

フォーレのこの音楽が、そうした作用を、送られる人、送る人々それぞれにしてくれるような気がしてしまう。
多くの方がそう思うように、私も、死出へのはなむけには、このレクイエムを欲したい。
あとは、まだたくさんあります。それはまたいずれ。

ミシェル・コルボの演奏は、フォーレのこのレクイエムの演奏に優しさと自然さとを持込み、当時はその言葉さえなかった「癒し」と音楽を結びつけてしまった記念碑的な1枚なのだ。
ボーイ・ソプラノが今聴くとあざとく感じられるかもしれないが、まったく無垢で自然体のこの演奏にはまったくもって相応しい選択であったことは、依存がないと思う。

もうこれ以上、言葉は要りませんね。この作品と演奏には。。。。

私の従姉は、私とひとつ違い。
このところ伯母が亡くなったり、親族じゃないけど、若杉さんが亡くなったりと、私にとって悲しい別離が相次いでいて、死と不遇が私の周りで渦巻いているよう・・・。
それでもこうして、ブログを起こしてしまう。
ブログの効能は、いい意味で自分に対して冷静でいられること。
こんな独り言も、どこかで読んでいただけているという不思議な満足と連帯感。
こんな私的な記事をどうぞお許しください。

諸所あり、数日更新はお休みいたします。

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コメント

散々な日であったこと、まずはご同情申し上げます。
合わせて、亡き方に深い哀悼の意を捧げます。
フォレのレクイエム、本当に鎮魂の響きがする名作ですね。僕も、この音楽の初体験はコルボでした。でも今はヘレヴェッヘ指揮の演奏が最高ではないかと思ってますけれど。

投稿: IANIS | 2009年8月 1日 (土) 01時34分

こんにちは。

従姉さま、お若かったのでしょう
謹んでご冥福をお祈りいたします。

静謐で美しい、このレクイエム好きです
ボーイ・ソプラノもこの演奏に合っていて
とても美しいと思います。

投稿: 天ぬき | 2009年8月 1日 (土) 17時02分

IANISさん、あたたかいお言葉とお悔やみ、いたみいります。
この曲、コルボ以前にフルネ&ロッテルダムを永く聴いてました。
そして、今回、コルボとともに、ヘルヴェッヘも聴いてまして、最後はコルボ盤をエントリーしました。
いずれの演奏も、「演奏しすぎない」演奏といいまょうか、さりげなく楚々としたところがいいのですねぇ。

投稿: yokochan | 2009年8月 1日 (土) 21時33分

天ぬきさま、こんばんは。
ご丁重にありがとうございます。
故人は、私が若いといえれば、とても若かったです。
子供のころの思い出しかありませんが、ゆえに悲しいものですね。

ボーイソプラノのレクイエムは、いやでも天上の響きがします。素晴らしい音楽に素晴らしい演奏です。

投稿: yokochan | 2009年8月 1日 (土) 21時44分

悲しいことや、苦しいことは続いたりしますよね。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

コルボ盤はいくつかありますが、この演奏が1番静謐で美しい演奏だと思います。

投稿: ナンナン | 2009年8月 2日 (日) 02時25分

従姉さまはyokochanさんとお年が一つ違いということですが・・・それではまだまだお若かったのですね。
コンサート間に合わなかったのは本当に残念ですが、何か虫の知らせだったのかも?と思いました。
(蛇足ですが、私はN響のに行きました・・・)

謹んでご冥福をお祈りいたします。
暑いのでyokochanさんも体にお気を付けて。

投稿: naoping | 2009年8月 2日 (日) 08時25分

従姉さまのご冥福をお祈りします。

そうなんですよね。。。悪いことって続きますよね。
さっきまで晴れてたのに
私が外に出た瞬間に、雨が降り始めますよね。
渋滞で待ってて、やっと右折できると思ったら
前の車のところで赤信号になるとか
映画館の入場が自分の前の人のところで
売り切れて次の回まで待たなきゃとか。。。
数えきれません^^;
今回のさまよえる様のお気の毒な出来事も
人ごととは思えません。
そういう時ってありますよね。。。。

フォーレのレクイエム、大好きな曲です。
最初に聞いたのは、ジャン・フルネ指揮の
ロッテルダムpoのレコード、
ソロがクリュイセンとアメリングです。
このレコードを買った理由はただひとつ、
廉価盤だったのです。
その後、こちらのコルボの演奏を聴いて
「おお!なんて素晴らしい!」とは思いましたが
今でもフシギにロッテルダム盤を愛聴しています。
ヘタなんだけど、味があるんです。
コルボのような洗練された純粋さやセンスの良さ
フォーレらしさは、フルネ盤にはありません。
でも、この演奏、いいんですよ^^
おっしゃるように「演奏しすぎ」てませんよね。
SPレコードでもこの曲を手に入れました。
蓄音器で聴くと
また泣けます。
夏の夜に、ひとり寂しく聴くには
SPで聴くのもいいですよ^^。。。。。。

投稿: モナコ命 | 2009年8月 2日 (日) 15時02分

ナンナンさま、ご丁寧にありがとうございました。
悲しみの連鎖は辛いですが、自分勝手な世界ながら、音楽によって癒されます。

フォーレはその点、最右翼の作品です。
コルボは、この演奏しか知らないのですが、優しさに包まれる思いがします。

投稿: yokochan | 2009年8月 3日 (月) 21時37分

naopingさん、ご丁重にもありがとうございました。

かなりショックでした。この悲しみはかなり大きいのですが、でも日々の現実がすぐにやってきて悲しんでばかりもいれれない環境になるわけです。
不健全自由生活をしている私、要注意だと親族から徹底的に言われました。なにせ、検査嫌いなものですから・・・。

現田&N響のチケットもそのままになってしまいました。
これもまた悲しいですわ。

投稿: yokochan | 2009年8月 3日 (月) 21時47分

モナコ命さん、ご丁寧なるお言葉、ありがとうございました。
ほんと、こまかな不幸を数え上げたらきりがありません。
問題は、人の死は別にして、それを不幸と感じるかどうかですね。
私は、生来の呑気ものですので、自分では気づかずに流れてしまうこともかなりあります・・・・。
まぁ、人生いろいろありますね!

さて、フォーレ。
私のこの曲、初レコードもフルネとロッテルダムのものです。その理由は、そう、廉価盤だったから、ですよ。
アメリンクの歌が素晴らしかった。
コルボは同時期にFMからエアチェックしてしまい、それを飽くことなく聴き、CDを買い直しました。
いまも、この曲を聴いてます。
沁みます。泣けます。いまは、ヘルヴェッヘ盤です。
SPで聴くとさらに泣けそうですねぇ~。

投稿: yokochan | 2009年8月 3日 (月) 21時59分

こんばんは。
お疲れ様でした。お若くてもこのようなことになるとは。当方から何も申し上げることはありません。多分、同年齢ぐらいと思います。
ご自愛下さい。

投稿: Mie | 2009年8月 6日 (木) 22時44分

Mieさま、こんばんは。コメントありがとうございます。
正直、かなりのショックです。
親戚中からも言われ、気をつけなくてはと自戒してますが、ついつい暑さに負けて、プシューっとやってしまいます・・・。

投稿: yokochan | 2009年8月 7日 (金) 00時59分

こんばんは。
日々、プシューしてます。
レクイエムはあまり好きではありません。フォレは夜想曲・舟歌が好きで、今聴いています。三重奏も素敵です。去年ゴーティエの三重奏を目の前で聴いてから、はまっています。先週、ヘンゼルとグレーテル聴いてきました。カミラ・ティリングが透明で良い声でした。キルヒシュラーガーのズボン役は、まるで宝塚のように、きまっていました。オケは???。でもやる気まんまんで好感もてました。

投稿: Mie | 2009年8月 7日 (金) 22時03分

mieさま、こんばんは。
今宵、わたしもプューでございましたよ(笑)
やめられません・・・・。
三重奏曲、私も一時はまりました。いい曲ですね。
あと、夜想曲も。ハイドシェックで聴きました。
このところ、重い曲ばかりですので、フォーレもいいかもしれません。

「ヘンゼル」は舞台を一回も見たことがないのです。
御大が指揮すると名歌手が揃いますね。
もう少し安くしてくれるといいのですが。。。

投稿: yokochan | 2009年8月 8日 (土) 00時39分

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