ダンディ 「フランス山人の歌による交響曲」 ティボーデ&デュトワ
このところ遠くにいってないので、過去ネタから。
サミットを控えた洞爺湖。
こうした水と山の風景を見ると、グリーグやシベリウスといった北欧系の音楽を思い起こしてしまう。
でも、今日は山の音楽を聴きましょう。
フランスのヴァンサン・ダンディ(1851~1931)の「フランス山人の歌による交響曲」。
ピアノソロを伴った交響曲はユニークで、協奏曲のようにピアノ主体でもなく、ピアノもオーケストラの一員でるかのような、ピアノ付きオーケストラのための交響曲といった感じだ。
ダンディもこの時代のフランス系の作曲家の例にもれず、フランク一派に属し、この交響曲も3楽章形式で、循環主題をもとにした構成となっている。
ダンディは、番号付きも含めて、全部で5つの交響曲を残しているが、この「フランス山人」が一番有名。
あとは、CDでたぶんもっているけれど、あんまり印象がない。
ダンディといえば、だいたいこんな印象で地味なことこのうえない。
ダンディで検索すると「ダンディ板野」の方が先に出ちゃうんだ・・・。
というか、まったく出てこない。
でも、クラシックファンとしては、この作品だけでもダンディは脳裏に刻まれる存在なのである。
この曲だけがこんなに有名になったのは、もしかしたら、ミュンシュの録音があったからではないだろうか?
ミュンシュとボストン響、シュヴァイツァーのピアノによる名演奏は何度も再発されて、われわれを癒し続けている。カップリングが、ショーソンの交響曲であることも魅力。
私がクラシックを聴き始めた頃、RCAレーベルから、雪を頂いた山に日本RCAお得意の金字の習字文字でこの曲のタイトルが書かれた豪華見開きジャケットが出ていて、ケンペのアルプス交響曲、プレヴィンの海の交響曲などとともに、夏の清涼剤のようにして販売されていたものだ。
いまでもそのCDは、ショーソンとともに私の大切な1枚だが、デュトワがモントリオール響とともに、蜜月時代、あまりにも素晴らしい録音を残してくれた。(89年)
録音の素晴らしさが、その清涼感にまた拍車をかけている。
ダンディは子供時代から慣れ親しんできた、セヴェンヌの山々を思い、その麓のペリエに滞在しつつ、この作品を書いた。そこで知った牧歌がこの曲のイメージとなっており、この曲は「セヴェンヌ交響曲」とも呼ばれている。
ピレネー山脈の一角、ギザギザした高原のような高い山々が続く場所みたい。
音楽もまた、このような風景を見事に描きだしてやまず、まさにこれはリゾート音楽のようで、「アルプス交響曲」と双壁の存在といっていい。
冒頭、イングリュシュ・ホルンの懐かしい旋律が、弦楽のたおやかな背景の上に奏でられると、部屋の温度はもうマイナス3度はクールダウンする。
ともかくさわやかな第1楽章。山々の描写的な音楽であるとともに、とても感覚的な音楽でもある。
柔らかで牧歌的な第2楽章は、木陰でのんびり昼寝をきめ込むのにうってつけの音楽。
そして、リズミカルな終楽章を聴いているとグリーグの協奏曲かと思うくらいに爽快な気分に満たされる。この楽章は、全曲の総括のようにあらゆる旋律が繰り出され完結感もばっちりだし、軽く炭酸の利いた清涼飲料水を飲んだかのような心地よさに満たされてしまう。
決してビールではないのですよ。これが。
このような爽やかな音楽にアルコールはいけません。
こんなイメージにぴったり寄り添ったデュトワの指揮と、ティヴォーデのピアノ。
言うことありませぬ。
さて、こんな気分のまま、わたくし、明日から休みに入ります。
普通に実家に帰らせていただくだけですが、更新はしばし休憩いたします。
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コメント
こんばんは。このところ、蒸し暑い日となりましたが、それを吹き飛ばすような旋律。
あのCMは笑えますね。一発だけ。言うなればダンディは一発で終わってしまうのでしょうか。
かつて、ダンディ板野のゲッツは某アニメのゲットをもじった・・・。
ダンディのCDもデュトワ、ティボーデによる「フランス山人による交響曲」1曲のみ。
ダンディは辛いよ。
投稿: eyes_1975 | 2010年6月10日 (木) 18時43分
eyes_1975さん、こんばんは。
暑かったですね、今日は。
これからの季節の、清涼剤のような名曲ですね。
でもダンディなところが、一般には、あの板野を思い起こされるのがなんですが・・・・。
一発屋じゃないところを、ほかの曲なども聴いて証明してみたいところです。
でも、難しいだろうな~、辛いっすね。
投稿: yokochan | 2010年6月11日 (金) 00時53分