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2009年10月24日 (土)

NHK交響楽団定期演奏会 プレヴィン指揮

Nhk_hall_2 今日は寒く感じるような曇り空。喧騒の渋谷もちょっと寂しく感じた。
公園通りのパルコでは、マイケル・ジャクソン似の人が踊ってましたよ。

アンドレ・プレヴィン指揮のNHK交響楽団演奏会。
今回の演目は、自作の本邦初演に、協奏曲、本格シンフォニーという王道プログラム。

 プレヴィン      「オウルズ」(日本初演)

 モーツァルト     ピアノ協奏曲第23番イ長調
    
               Pf:池場 文美

 ショスタコーヴィチ  交響曲第5番

       アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団
                  (2009.10.22@NHKホール)


自作の「オウル」は2008年初演のボストン響の委嘱作で、オウルとは「ふくろう」のこと。
イングランドの自宅近くの森で見つけた2羽の衰弱したふくろうを愛護団体に届け出たプレヴィン。やがて元気になり森に帰ったという。
こうした出来事に触発され音楽にした心優しいプレヴィン。
森のつがいの動物たちを表すかのように、管楽器が常にペアを組んでさえずっている。ときに同じ楽器同士、ときにフルートとピッコロ、クラリネットとバスクラリネットといった案配で。そして音楽は旋律にあふれ、クリーンで柔和な、とても聴きやすいもので、聴いていて優しい気分に満たされていく。
プレヴィンの人となりがそのまま音になったかのような素敵な作品でありました。
その和やかなムードはイ長調のモーツァルトの協奏曲にそのまま引き継がれた。

池場さんは、正直名前も知らなかったピアニストだが、プログラムによれば、プレヴィンの前妻ムターのプローベやコレペティトールをつとめているという。
こうした関係から、本日のソリストになったのかもしれないが、これがまた素晴らしいピアノだった。
まず、プルトを3ないしは4に刈り込んだ室内オーケストラサイズのN響をプレヴィンが指揮しはじめると、それはもう柔らかく温もりに富んだほほ笑むモーツァルトの響きだった。
モーツァルトのイ長調作品は、その明るく伸びやかなところがどれも好きだが、その代表格のピアノ協奏曲をプレヴィンの指揮でこうして聴けるなんて、本当に贅沢なものだ。
N響は、プレヴィンのこのモーツァルトに惚れ込んだのではないかしら。
スウィトナー以来、こんな素敵なモーツァルトをN響で聴かせる人はいなかったから。
2楽章のオペラのアリアのような悲しみの表現、3楽章のブッファ的ともいえるピチカートの弾け具合。
こんな素晴らしい背景を得て、池場さんはさすが合わせものの達人と思わせるくらいに、プレヴィンと同質化している。巨大なホールにクリアに響き渡る美しい音。
2楽章は、一転、短調の悲しみの旋律をピアノがあまりにも繊細に弾くものだから、こちらも思わず涙ぐんでしまったし、終楽章のオケとお互い聴きあうような演奏ぶりがとても好ましかった。
普通に美しく優しいモーツァルト。
とても気持ちがよかった。
休憩中のロビーも、みなさんお顔がほころんでいたし、メロディを口ずさんでる方もいらっしゃったくらいだもの。

さて、メインのショスタコーヴィチ第5交響曲
楽しみだったけど、そうでもない。
一番有名なこの曲で、ショスタコに入ったのに、今は苦手、というか心に響かなくなってしまった曲。
今日もなぜかぼんやり聴いてしまった。
プレヴィンの演奏、手持ちのシカゴとのCDとほぼ同じに思った。
表情は若々しくフレッシュで、オケも含めてほぼ完璧な出来栄え。
抒情的な部分の美しさが、オケのソロの技量も含めて際立っていたが、唯一気に入ってる3楽章の長大なラルゴが、近くに座ったご婦人のビニール袋カサカサ攻撃に会い、まったく精彩なくなってしまった。怒る気もしない・・・。

Previn_2 今日のプレヴィンは、初日聴いたシュトラウスよりは元気そう。
前回は長旅の疲れもあったのかもしれない。
サントリー定期は聴けないので、2回のコンサートを総括すると、R・シュトラウスとモーツァルトに尽きる。
賞味期限切れだとか、もう少し早ければ、などという声も聞かれるし、見た目老いの目立つプレヴィンだけれども、まだまだ全然大丈夫との認識。
ただし、選曲は、大物でなく、モーツァルトやメンデルスゾーン、シュトラウスの後期作品、英国ものなど、瀟洒なプログラムがよいのではないかと。

これだけ日本を愛してくれてる巨匠。ファンとしては大いに歓迎。
そしてまだ80歳。日本でさらなる名演の数々を築きあげていって欲しいと強く願っている。

最後の拍手に応えて、舞台袖に下がってゆくマエストロの後姿をずっと見つめていた私であります。

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コメント

 こんばんは。
 このN響定期、昨日(もう”一昨日”ですね…)夜の「ベストオブクラシック」で生放送していて、私も手持ちのラジMDでエアチェックを済ませています《ちゃんとMDに落とし込まれていると思うけれど…》。
 生憎まだ耳にはしていませんが、今回の本文を拝見しているうちに、何だか楽しみになってきました。

 それにしてもプレヴィン、生き物をとても大切にしているんですね・・・今まで知らなかったです。

投稿: 南八尾電車区 | 2009年10月25日 (日) 01時22分

金曜日に聴きまして、ショスタコーヴィチの5番はわりと好きな曲なので大いに感銘を受けました。静謐な部分にみなぎる緊張感、研ぎ澄まされた音色、木管のソロの美しさ、練り上げられたアンサンブル、そしてクライマックスの圧倒的なパワーとボリューム。まずは申し分のない出来で、目を閉じているとどこの一流オケかと思うほどの完成度の高さでした(おおげさ?)プレヴィンのキュー出しの手際がよいせいか、これほどの精度や美感を保ちながら、流れが自然で心なしかアンサンブルにも余裕があったような気がします。
前半の二曲は優しく柔和なプレヴィンらしい音楽で、音楽を聴く幸せを存分に味わいました。サントリーのモーツァルト・プログラムも聴きた~い!(笑)
初めて聴いた池場さんというピアニスト、趣味がいいですね。また聴いてみたいと思いました。

投稿: | 2009年10月25日 (日) 01時47分

申し訳ありません。
名無しの慌てんぼうはわたしです^^;

投稿: 白夜 | 2009年10月25日 (日) 01時49分

南八尾電車区さん、おはようございます。
今回と前回、FMの録音をしわすれてしまいましたが、BS放送を楽しみにしてます。

プレヴィンは、なんども奥さんを換えてしまう殿方ですが、動物好き、子供好きのようです。
自作のオウルはとてもきれいな作品でしたし、モーツァルトは最高でした。
28日はオール・モーツァルト・プロです。
私もしっかり留守録です!
今年欧米の一流オケで演奏してきた練り上げられたプログラムのようです。こちらも楽しみですね!

投稿: yokochan | 2009年10月25日 (日) 09時46分

白夜さん、こんばんは。
ご丁寧にお名乗り(笑)ありがとうございます。

金曜日にお聴きになったのですね。
私のほうは、5番が最近不得手なことと、環境(?)、そして目の疲れなどから、ちょっと乗り切れないこととなってしまいました。
せっかくのプレヴィンなのにもったいないことです・・・。
ですが、ご指摘のとおり、流れのよいすばらしく整った演奏でした。両者ともに力のぬけた自在な演奏に感じました。
前半を思い切り楽しみすぎてしまいました(笑)
サントリーはほんと涎がでちゃいますね!

投稿: yokochan | 2009年10月25日 (日) 09時58分

FMの生中継を聴いておりました。素敵な演奏です。オウルも良かった。確かに、ショスタコ、イマイチでしたが。BSの放送、エアチェックします。
追記
私のウィーン嫌いは、某雑誌のオーケストラ団員の(複数)裏話で、自分たちを振った有名指揮者に対する寸評での傲岸な評価からです。あれを面白くとるのか、なるほどととるのか・・・。まぁ、アルバイトでフィルハーモニーをやっているので、自由な立場といえばそれまでですが。しかし、振ってもらいたくても振ってもらえないオーケストラだってあるわけだし、巨匠たちの指揮をこんな風に思っているというオーケストラ団員の、慎みのなさが、そのまま今のウィーンの低迷になっているわけであります。無論、過去のウィーンの演奏は高く評価しているわけですが。それに、個々の奏者の技量だって、上には上がいるわけですしね。自分たちが世界のナンバーワンだと自負しているようではいかん。だから、今のウィーン・フィルは大嫌いなのでありました。

投稿: IANIS | 2009年10月25日 (日) 10時00分

IANISさん、毎度です。
あのクソばかでかいNHKホールに、モーツァルトがきれいに響きました。
すごく嬉しいモーツァルトでしたよ。

ウィーンの追記は、そのまま載せますね。
私もそうした記事は面白おかしく読んだ覚えがあります。
どんなオケでも自分たちが感じたまんまを、口にしちゃうところがありますよね。
神奈フィルの方々と飲んだりすると、ほんとにおもしろい。
でも天下のウィーンフィルが活字に残る発言をするところが賛否あるところでしょうか。
ベルリンフィルの某コンマスも、現職のアバドのことをこきおろしたりしてましたが、名門だからこそメディアも活字化には気をつけなくちゃいけませんし、やはりファンを考えた発言に気をつけてほしいものであります。
お口も、じゃじゃ馬のようなウィーンフィルは、今の客演主体でなく、強烈な指揮者にしっかりと押さえつけられていた方がいいのかもしれませんねぇ。

投稿: yokochan | 2009年10月25日 (日) 12時14分

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