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2009年11月 8日 (日)

R・シュトラウス 「カプリッチョ」 ベーム指揮

Kitanno_kazamidori 神戸の山の手、北野地区にある「見鶏の館」。

朝早くホテルを出て行ってみました。
特にどうということはないと思ったけれど、ともかくよく朝日があたること眩しい限り。

NHKの朝のドラマで一躍有名になったけれど、あれはもう1977年のこと。
歳を感じるなぁ。
そして、風見鶏のようなどっちつかずの私の人生。。。。とほほdespair

Bohm_capriccio

言葉か音楽か、詩人か作曲家か、答えが最後まで出ない。
そんなオペラの本質の命題を素材にした作品が、R・シュトラウス最後のオペラ「カプリッチョ」。

シュトラウスが到達した枯淡でありながら澄み切った透明感あふれる境地。
全1幕、2時間20分。
ほとんど同じ舞台で、合唱も入らず、登場人物たちの語りと歌の入り混じった言葉の洪水に溢れていて、手ごわい印象も受けるかもしれない。
でも何度も味わうと、そう、スルメのように噛むほどにおいしく、味わいが増してゆく。
最初は、対訳付きで聴いても、言葉を追うのに疲れてしまう。
特にCDのリブレットは細かくていかん。
その点、レコードの豪華な解説書はよかった。

私は何度も格闘して、この作品に慣れ親しんでいったが、映像で観るとまたその理解の深まりと感銘もひとしお。
フレミングのDVD映像は画期的でありましょう。

そして、かつて若杉弘さんが手がけたこのオペラを、この11月に二期会が上演する。
当然にわたくしも観劇予定であります。

作品の来歴は、過去の記事をご覧いただくとして、まずはあらすじを再褐し、このオペラの私なりの見どころ、聴きどころをご紹介したいと思います。

パリ近郊、伯爵の兄と若い未亡人の妹が住む宮殿の客間。
作曲家フラマンが作った弦楽6重奏が演奏されている。劇場支配人ラ・ローシュは、よき調べに気持ちよく眠っている。伯爵令嬢は、うっとりと聞き惚れている。
フラマンは、自分の音楽が令嬢に満足を与えたとして満足しているが、詩人オリヴィエは、自分の詩の方がお気に入りなのだとして譲らない。
言葉(詩)と音楽、どっちが勝っているか、さらにラ・ローシュも加わり、3人で激論が交わされる。今夜、邸宅でオリヴィエの書いた劇が上演されることになっていてこうした人物達が集っているのである。
 代わって令嬢と伯爵が登場し、伯爵は令嬢が作曲家に惹かれているのではないか?とからかい、自分は詩の方がすぐれているという。
令嬢は、今夜の劇でその詩を伯爵お気に入りの女優クレーロンが朗読するからね、と逆にやり返す。
 ラ・ローシュが、今夜の演目を説明する。
まず、フラマン作曲のシンフォニア、次いでオリヴィエ作の劇、自身作のスペクタル劇、という具合に。
そこへ、クレーロンがやってきて、練習が始まる。
オリヴィエの伯爵令嬢への愛を歌った朗読に刺激を受けたフラマンは、作曲に没頭する。
その出来立ての歌は、令嬢を魅惑してしまう。
でも令嬢は、「あなた方は分かちがたく、一体化しています」とどちらともいえない態度。
二人になったフラマンは、明日朝返事を自分に聞かせてくれるという約束を令嬢から取り付ける。

一同が揃う中、新しいバレエダンサーが紹介され、ガヴォットなどいくつかを踊る。
その間、伯爵はクレーロンに、今夜一緒にパリへ行くという約束をしニンマリ。
ここで、今夜のスペクタル劇を説明するラ・ローシュだが、2部形式の古めかしい活劇を説明し、全員の嘲笑を浴びる。それでもめげない彼は、「劇場の永遠の法則」を朗々と長時間に渡り大演説を行い、逆に大喝采を浴びる。
  そこで、解決策として令嬢は、「オペラ」を作ることを提案。
内容は、「今夜起こったこと」をテーマにすることでと、兄の伯爵。
すっかり意気投合した、詩人と作曲家(でも、詩が音楽が、一番だと思っている二人)は、劇場支配人とともに、準備のため去る。女優と伯爵は、パリへ向かう。

誰もいなくなった部屋に、召使たちが現れて、やれやれ、すべてはお芝居、自分たちこそ舞台裏を知っているのに・・・・。
家令がひとりとなり、そこに居眠りしておいてきぼりを喰ったプロンクターが登場し、家令ととぼけた会話を交わす。


 (二人が去ったあと、音楽は美しすぎる「月の光の音楽」となる。)

正装した伯爵令嬢が登場、そこへ伝言を持った家令がやってきて、詩人オリヴィエが明日朝にお会いして、オペラの結末について聞きたいとのことを告げる。
期せずして、二人がかち合うことに。「これは宿命、二人は分かちがたく結びついているのだわ」決めあぐねる令嬢。
令嬢は、ハープを弾きながら、オリヴィエの詩に、さきほどフラマンが作ったソネットを歌う。鏡に映る自分に問いかける、「さあ、なんと答えるの?愛されているのに、自分を与えられないの?二つの焔の間で燃え尽きたいの?・・・・」
「あの人たちのオペラの結末を見つけるのに、月並みでない結末があるかしら?・・・」
迷う令嬢に、家令が食事に仕度を告げにきて、音楽は洒落た結末となる。

聴きどころ

①弦楽6重奏で演奏される前奏曲。
 しばしば単独でも演奏される物憂くも、美しい曲は、古典的な様相も感じる。
②引用される音楽の数々
 時代設定は18世紀フランスで、グルックとピッチーニに人気があった頃。
 彼らの作品の旋律が出てくるし、クープランやラモーも登場する。
 そして、当然に自作の旋律も~「ばらの騎士」「アリアドネ」「ダフネ」。
③女優クレーロンが、音楽なしに朗読するソネット。
 ドイツ語の美しさ(といっていいのだろうか?)が味わえるが、歌手はたいへん。
 他の人物たちもセリフが多い。
④作曲家フラマンが歌うソネット
 単純で覚えやすい旋律だが、心惹かれる。全曲に何度も登場するが、
 最後のマドレーヌのモノローグで歌われるときが素晴らしい。
⑤チェンバロを伴ったジーグやガボット
 さりげなく技巧的な音楽。
 舞台上にピアノや楽器が登場することが多いオペラだから、このあたりどのように演出
 がなされるか見もの。
⑥支配人ラ・ローシュの歌う長大なモノローグ
 自分の出した劇のアイデアを嘲笑されたラ・ローシュが、大演説をぶつ。
 ザックスの芸術賛美のロングバージョンだ。バス歌手の超聞かせどころ。
⑦月の光の音楽~マドレーヌのモノローグ
 このオペラ最大にして、シュトラウスオペラの美しい夕映えのような絶美の音楽。
 わたくしは、ここで涙にむせぶことになる。
  先日の、F・ロットとプレヴィンの名演奏がまぶたに浮かぶ。
 CDでの単独では、R・ポップとシュタインのものが最高に素晴らしい。
 演出でも、最大の見せ場となろう。
 軽い諦念と、前向きさ、そして余韻をどのように表現してみせるか。

ベーム盤の配役

 伯爵令嬢:グンドゥラ・ヤノヴィッツ  伯爵:D・フィッシャー=ディースカウ
 フラマン:ペーター・シュライアー   オリヴィエ:ヘルマン・プライ
 ラ・ローシュ:カール・リッダーーブッシュ クレーロン:タティアナ・トロヤノス
 イタリア歌手:アーリン・オジェー   イタリア歌手:アントン・デ・リッター
 トープ :デイヴィット・ソー       家令:カール・クリスティアン・コーン

   カール・ベーム指揮 バイエルン放送交響楽団
                 バイエルン放送合唱団員
                         (1971.4 @ミュンヘン)

台本共作者・初演者であるクレメンス・クラウスとともに、この作品を作曲者の意図を汲んで準初演からずっと指揮し続けたのが、カール・ベーム
晩年に到達したベームが、モーツァルトやワーグナーと同じように古典的な凝縮した無駄のない響きを聴かせる。
ミュンヘンの機能的だが明るいサウンドも実によく、この録音がこのオーケストラとなされて、とてもよかったと思う。
 そして、歌手の豪華絢爛ぶり。
もう何もいうことはありません。
ことに、ヤノヴィッツの明晰でガラス細工のような繊細で、かつ血の通った歌声は素晴らしい。シュヴァルツコプフが濃密に感じるとき、このヤノヴィッツを聴くとすっきりすることがある。この二人にポップももう少し存命であれば、名マドレーヌになったことであろうや。
 あと歌手では、リッダーブッシュの余裕あふれる声を聴きくと安心感に満たされる。
バスでこの美声。この人の早世もまったく惜しい。
他の歌手も最高ですよ!
 カプリッチョのCDとしては、これとサヴァリッシュ盤が一番。
シルマーとシュタインは、ウィーンフィルの魅力もあります。

Capriccio_nikikai
ここで、二期会公演の宣伝を。

シュトラウスは、この作品を「一般聴衆のためのものでもなければ、大劇場に集まった公衆のためでもない」として、小さな劇場での上演を望んだという。

そうした意味では、日生劇場でも多きすぎるのかもしれないが、とても良い選択に思う。

演目が渋すぎて、チケットが心配だけど、皆さんこうした機会を逃すとめったに体験できないオペラですよ。

私の応援する、メゾソプラノ「谷口睦美さん」が、女優クレーロン役で出演されます。
ダブルキャストで、11月21日(土)、23日(月休)の方。

チケットは、ご本人までどうぞ。まだ間に合いますnote
 Tanigucci623@yahoo.co.jp

 

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コメント

私も「カプリッチョ」行く予定なのですが、なんと新国立の「ヴォツェック」の直前の日です。なんか時代的には「ヴォツェック」のほうが古いはずなのにこの作風の差は・・・頭の切り替えが心配です。まあ順番が逆じゃなくて本当に良かったですけどね。

投稿: naoping | 2009年11月 8日 (日) 09時59分

こんにちは。 
このカプリッチョ、行きたかったのです。 
でも昨日、ヘンゼルとグレーテルへ行ってしまったし。 
平日のマチネはどうしてないのでしょうか。 

もっと主婦の見方をして欲しいな~と思います。 
愚痴を言って申し訳ありませんでした。

投稿: moli | 2009年11月 8日 (日) 11時42分

 連投失礼いたします。私は、シルマー指揮のDVDでこのオペラの全曲を初めて鑑賞しました。去年の夏のことです。ベームのCDは高校時代から欲しいと思っているのですが、いまだに入手しておらず未聴です。前奏曲と月光の音楽はプレヴィン&ウィーンフィルの演奏が好きです。月光の音楽は何度聴いても涙が出ますよね。親父ヤルヴィ&スコティッシュナショナル管弦楽団のカプリッチョ抜粋もいい演奏です。前奏曲と月光の音楽と最後のモノローグが入っています。親父ヤルヴィはこの抜粋版をカプリッチョ組曲と呼んでいますが、なかなかの聴きものだと思います。

投稿: 越後のオックス | 2009年11月 8日 (日) 11時56分

こんばんは。「カプリッチョ」は話を聞いたことはありますが、上演機会は希なようですね。
そんな中、プレヴィン、ウィーン・フィルによる劇音楽である「月の光の音楽」が収録されたCDが再発売されましたね。嬉しい限りです。プレヴィン80歳記念でユニバーサル系の1980年~1990年代に録音されたものです。この頃の録音はまさにプレヴィンが波に乗った時期でもありますね。その曲はカラヤン、ベルリン・フィルも取り上げてます。目的はトモワ=シントウによる「4つの最後の歌」でした。この曲はカラヤンがヤノヴィッツの歌唱でも取り上げてました。いずれもカラヤンにとって良きパートナーです。そして、R.シュトラウス晩年の作品ですね。

投稿: eyes_1975 | 2009年11月 8日 (日) 20時44分

あ、二期会の公演、行きますよ♪
(バリトンじゃありませんが)望月さん目当てです。

この演目はあまり聴き込んでいないので、今から予習が大変です。
一応、アレンが伯爵歌っているヤツがあるので(笑)
そうか、スルメなんですね。
頑張ります!!

投稿: しま | 2009年11月 8日 (日) 21時20分

naopingさん、こんばんは。
ヴォツェックとカプリッチョが同時期に上演されているといのも東京ならではの凄いところですね。
確かに、どっちが先かわからない作風の違いは大きいです。
私も、先にカプリッチョ、数日おいてのヴォツェックです。

投稿: yokochan | 2009年11月 8日 (日) 23時33分

moliさん、こんばんは。
今回の二期会は、連休を利用しての公演ですので、確かに家庭のある主婦の皆さまには時間が取りにくいですね。

新国は、平日マチネがあるのに、二期会や藤原オペラには、採算面からしても勇気のいることなのでしょうね。
家庭で存在の薄い、私のようなオヤジには、いつでもOKなところが、まことに申し訳なく存じます・・・・。

投稿: yokochan | 2009年11月 8日 (日) 23時38分

越後のオックスさん、こんばんは。
シルマー&フレミングの映像はなかなか秀逸な演出コンセプトだと思います。いいです。
 私もプレヴィンを愛聴してますが、ヤルヴィもよさそうですね。晩年のカラヤン盤も聴いてみたいと思ってます。
ともかく素晴らしい音楽でありますね。

投稿: yokochan | 2009年11月 8日 (日) 23時42分

eyes_1975さん、こんばんは。
そうですね、あのプレヴィン盤は、ばらの騎士といい、インテルメツォといい、こちらのカプリッチョといい、絶品の演奏ですね!
プレヴィンの音源の中でも、一番好きな1枚でございます。
でも、カラヤン盤は未聴でして、是非聴いてみたい1枚です。トモワ・シントウもいい歌手ですし、彼女は、シュタインとカプリッチョ全曲をライブ録音しておりますから、ヤノヴィッツとともに、名シュトラウス歌手の一人といってもいいですね。

投稿: yokochan | 2009年11月 8日 (日) 23時49分

しまさん、こんばんは。
そうかぁ、行かれるのですね。
望月さんだったら、私と違うサイクルですね。
佐々木さんのタイトルロールも聴きたいから、悩んだのですが、日程や、ファンの谷口さんの番もあって、選んだのです。
アレンが出てるのは、プレートル盤ですね。
是非、スルメのように、あじわいつくしてみて下さいねぇ!

投稿: yokochan | 2009年11月 8日 (日) 23時54分

yokochanさま お早うございます〜

「カプリッチョ」
私も大好きなオペラです。
色々な演奏を集めていますが、歌手の豪華さではこのベーム盤が一番かもしれませんね〜。
ヤノヴィッツさんの最後のモノローグの美しさは絶品と言っても過言ではないですね〜。

私がこの曲を知ったのは、フレミングさんのCDで「月光の音楽」からの録音からでした。エッシェンバッハ指揮のヴィーナー・フィルハーモニカーの演奏でしたが、ここでの「月光の音楽」の美しさはちょっとないようなものだと思います。

ルチア・ポップさんの全曲盤がないのが残念ですね〜。プレートル盤ではイタリア人歌手でヴンダーリッヒさんと一緒に歌っておられますが〜。マドレーヌを聴きたかったですね〜。

東京では公演があるようです、良いですね
こちらは、何にもありません、爆〜。

ミ(`w´彡)

投稿: rudolf2006 | 2009年11月 9日 (月) 08時47分

rudlfさん、こんばんは。
カプリッチョ、何度聴いても味わい深い音楽ですね。そういえば、フレミング&エッシェンバッハのCD、持っていることも忘れてしまってました。
ばらの騎士も入ってる1枚ですね。いつか聴こうと楽しみにしてまして、結局忘れてしまっているわけです。ヤバいです(笑)
プレートル盤にポップも出ているのですか。
これまた聴いてみたいですし、同じプレートルの新しい全曲盤はロットさまが歌ってまして、こちらも気になってます!
大阪のオペラは厳しいですが、今年はびわ湖に遠征してしまいました!
東京まで是非お越しくださいませ!お待ちしてます!

投稿: yokochan | 2009年11月 9日 (月) 20時28分

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受信: 2009年11月 8日 (日) 09時49分

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