札幌交響楽団 東京公演 尾高忠明指揮
毎年11月恒例の、札幌交響楽団の東京公演を聴く。この公演はホクレンの冠コンサートでもあり、今年で22回目。
毎回、てんさい糖を帰り際にいただけるのも恒例のお楽しみ!
尾高&札響コンビならではのオール・エルガー・プログラムの今宵、絶品のエニグマが聴けて、寒さも雨の鬱陶しさも吹き飛んでしまった。
そして、オペラシティは、これも恒例のすんばらしいイルミネーションに彩どられております。
エルガー 序曲「フロワッサール」
チェロ協奏曲
チェロ:ガイ・ジョンストン
エニグマ変奏曲
組曲「子供の魔法の杖」
~ワイルド・ベア
尾高忠明 指揮 札幌交響楽団
(2009.11.17@オペラシティ)
エルガー初期の作品「フロワッサール」は、ブラームス的な響きと、明るく親しみ溢れるエルガーらしさのある快活な序曲。
コンサートの冒頭にまことに相応しいこの曲を鮮やかに演奏して、のっけからブラボーが飛んでいた!
これには、まぁまぁ、落ち着いていきましょうよ、という気分だったけど(笑)
次のチェロ協奏曲は、81年生まれの若い英国チェリスト、ガイ・ジョンストンがソリスト。
この人のチェロがまた驚くほどに繊細で、冒頭からその微細ともいえる表現に、耳をそばだて集中することとなった。
こんなにきれいに、細やかに演奏されるチェロ協奏曲は初めてだった。
尾高さんも、奏者を理解し巧みな付け方で、ガイ君もオーケストラに指揮者にと、なんども視線を送りつつよく聴きあっての協調ぶり。ソロとオケとの協奏というよりは、まさに協調。
ジョンストン氏の尾高さんへの尊敬の念あふれる、慎ましくもナイーブな演奏で、私にはとても好ましく感じられました。
少なくとも、浮ついたところのない、この渋~いチェロ協奏曲の一面をしっかり捉えていたのでは。
お聴きになった方はどうお感じになられたでしょうか?
20分の長めの休憩のあとは、30数分のエニグマ変奏曲。私の大好きな曲のひとつだ。
時間的には軽めだけど、どうしてどうして、冒頭に書いたとおり、ほんとに素晴らしい演奏だったから、アンコールを入れての40分間は、充実の極みであった。
出だしのアリスをあらわすテーマこそ、慎重な運びだったが、変奏が始まるとすぐにリズムの刻みが鮮やかでノリのよさが際立ちエンジン始動、そして全開という感じだ。
第4の地主さまのダイナミズムも見事で、札響の分厚いが威圧的でない低音群炸裂。
次ぐ気難しさと愛らしさの交錯する学者をあらわす変奏への切り替わりも鮮やか。
概して変奏と変奏のあいだの間が息もつかさず、かといって唐突にならず、呼吸が実によかったのもベテラン尾高さんならでは。
ヴィオラを学ぶ友人の変奏の洒落た雰囲気と、次ぐ打楽器群・金管、エルガーらしく賑やかに上下する弦、それぞれ錯綜する7変奏の対比の妙。
そして、ニムロットであります
この日の白眉たる変奏曲は、この素敵なニムロットの曲だった。
じんわりと音楽が熱を帯びてゆくさま。
尾高さんの熱い指揮に、夢中になって演奏して応える札響の面々。
聴いていて胸と、そして目頭が熱くなってしまった。
そのあとの愛らしいドラベラ。木管の刻みに、ピチカート、そしてチェロの優しい歌に陶然としてしまう。
このあとは、感動の最終フィナーレまで、急緩緩と素晴らしい音楽がつづくが、「なぞ」のロマンツァはそれこそ息を飲むほどに美しく、そして緊張を強いられた。
トリをつとめる、エルガー自身の音楽は、全体を俯瞰するかのような大きなムードに溢れているが、尾高さんはここで大爆発。
わずかにテンポを揺らし、そして速めながらオルガンも加わり、壮大極まりない感動のエンディングを築き上げた。
私は、もう感激しちゃって、ドキドキ・うるうる状態。
そして、ブラボーを軽く一声、今日も献上
この曲で、会場がこんなに沸いたのって初めて。
みんな札幌の街が好きだし憧れがあるから、札響のことも応援したくなる。
クールでブルー系の弦と木管、分厚い金管に低音。
しっかりと色をもったオーケストラではないかと思う。
尾高さんのしなやかで、上品な音楽造りと見事にマッチしているし、尾高さんのここ数年のコンサートでの熱血ぶりには、実は大いに注目していたところ。
私のフェイバリット指揮者に共通の、「物静かさと熱気の共存」という点で、大好きな尾高さん。今後オペラを振る機会も増えて、ますますスゴイ指揮者になっていくのではないかと思う。
アンコールの「子供の魔法の杖」組曲の最終曲「ワイルド・ベア」は、普段CDで聴くのとまったく違う、アンコールピースとして、オケの名人芸を引き立たせるような目にも耳にも驚きの演奏だった
やったぁ、という感じ。
来年はオール・シベリウスです。
そして、またまた恒例、来シーズンのラインナップが配られました。
4月 エリュシュカ
シンフォニエッタ、
ドヴォルザーク5番
5月 高関 &庄司紗矢香
トルコ風
ライン
6月 尾高 &イッサーリス
サンサーンス2曲
デュリュフレ レクイエム!
9月 尾高
マーラー 3番
10月 D・イノウエ
ラロ&フランク
11月 尾高 &竹澤
シベリウス 4つの伝説曲
12月 ゲルゴフ
チャイコフスキー4番
1月 E・リーパー&河村尚子
ブラームス ピアノ1番
プロコフィエフ 5番
2月 尾高 &ペレーニ
ショスタコーヴィチ チェロ協、5番
3月 高関
マーラー 7番
こんな感じです。
英国ものがまったくないのが、極めて残念。
しかし、尾高さんのマーラー3番と美しいデュリュフレは必聴。
神奈川フィルのように、金さんマーラーづくしになっていないところがいい。
その神奈フィルにも来る、若いゲルコフとはどんな指揮者なのだろ。
今シーズンも、C・デイヴィスの息子のシベ2とか、尾高さんのラフ2、高関のショスタコ8など、魅力的なプログラムが残ってます。
でも、札幌は遠い
| 固定リンク
コメント
おはようございます。
ブログの拝見はしておりましたが、書き込みは1年ぶりとなってしまいました。
昨日の札響の演奏会は素晴らしいものであったとのことで、会場で聴かれた皆様が羨ましい限りです。
私は、昨年の演奏会の最後に、尾高さんが「オール・エルガープログラムです」とおっしゃった時から楽しみにしていました。
チケットも発売開始日に前から2番目の席を取り、当日を心待ちにしていたのですが、直前になって予定が入り、行くことが出来ませんでした。
放送用の収録が行われていればいいなと願っております。
投稿: バートレット | 2009年11月18日 (水) 05時29分
バートレットさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。
昨年の素晴らしかった3番の交響曲から、もう1年も経ってしまったのですね。
そして、チケット手配されながらいらっしゃれなかった由、とても残念ですね。
当方のみ楽しんでしまい、申し訳なく思います。
95%の入りで盛況でしたが、冠コンサートゆえの不慣れな方々もいらっしゃったのも事実で、チェロ協奏曲で、着メロが鳴りました(怒)
カメラは入ってませんでしたが、マイクが数本吊るされておりましたので、FM放送があるかもしれません。
是非お聴きください。
そして来年は、札幌の出し物からすると、オール・シベリウスです。こちらも楽しみですね。
投稿: yokochan | 2009年11月18日 (水) 23時40分
こんばんは。
久々の書き込みです。
去年、このコンビの東京公演を聴き、今年も是非と思っていましたが残念ながらいけませんでした。
エニグマ変奏曲、絶品だったようですね。名曲なわりに、ライブで演奏されることが少ない曲です。高貴で熱い響きがホールを満たしたんでしょうね。
来年は、オール・シベリウスですか。交響曲第六番なんか演奏してくれたら嬉しいですが、難しいでしょうね。
投稿: ナンナン | 2009年11月20日 (金) 01時01分
yokochanさま
こんばんは。
お返事をありがとうございます。
あるチケット販売サイトでは、S席チケットがペアで6000円で販売していましたので
お客さんの入りがとても気になっていたのですが、ほぼ満席だったのですね。
当日は演奏会に行って聴くことはできませんでしたが
当日の夜は尾高さん指揮のエニグマ変奏曲の入ったCDを聴きました。
尾高さんのCDを聴いた後に、マッケラス氏指揮のエニグマ変奏曲が入ったのCD(2枚組)を聴きました。
当日のプログラムと全く同じ順番で収録の1枚目を聴き、2枚目の当日のアンコール曲を聴きました。
この2つで雰囲気だけは味わうことが出来ました。
来年はオール・シベリウスなのですね。
シベリウスも好きなので、今から楽しみにしています。
投稿: バートレット | 2009年11月20日 (金) 02時55分
ナンナンさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
エニグマは尾高さんは、暗譜で振ってました。
尾高さんは、同じエルガーの交響曲、ラフマニノフの2番など、好きな曲は、イキイキとノリノリの指揮ぶりなのですが、今回もまさにそうでした。
本当に素晴らしいコンビになったものです!
シベリウスは、協奏曲と4つの伝説曲と予測されます。6番も是非聴きたいですね!
投稿: yokochan | 2009年11月20日 (金) 19時54分
バーネットさん、こんばんは。
尾高さんのエニグマは、BBCの非売CDですか?
私は残念ながら持ってませんが、札響との録音に期待したいと思います。
来年のシベリウスが誠に楽しみですね。
待ちきれず札幌に行ったしまいたいです。
とうか、定期会員になってしまいたいです(笑)
投稿: yokochan | 2009年11月20日 (金) 20時58分
yokochanさま
こんばんは。
尾高さんのエニグマ変奏曲のCDですが、お察しの通り
BBCミュージックマガジン2005年(Vol.13No.6)の付録CDです。
尾高さん指揮の収録曲ははエニグマ変奏曲だけですが
他にもヴォーン・ウィリアムズの「富める人とラザロ」5つの異版
ティペットの「真夏の結婚」の典礼舞曲が収録されています。
いずれもオーケストラはBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団です。
こちらのCDですが、アメリカAMAZONのマーケットプレイスから入手することが出来ます。
私はこのCD以外のBBCミュージックのCDもマーケットプレイスで入手していますが
非売品にもかかわらず、いずれも比較的安価で出品されていますので非常に助かっています。
投稿: バートレット | 2009年11月21日 (土) 00時22分
バートレットさん、こんばんは。
これはまた素晴らしい情報ありがとうございます。
確かに、BBCミュージックCDは、廉価だし音もいいですね。漁ってみます(笑)
投稿: yokochan | 2009年11月21日 (土) 01時26分